国男と太郎
国男の旅と太郎の旅
「しかし太郎、お前さんは一体どこに行くつもりなんだい?」
国男は言った。
「どこだって国男のおっさんには関係ないね。俺ツチノコを探すだけさ?あんたにできんのかい?ツチノコ探しをさ。」
太郎は言った。
「おい太郎、ツチノコなんて、いやしねえぞ。ええ?この俺さんを舐めてんのか?これから俺さん、会社に貢献しに行くんだぜ?この幹線道路の先には俺さんの未来が待ってんのさ。いいか太郎!俺さんは今から車に乗るんだ!どうだ!太郎も一緒に乗るといい!」
「嫌だね。俺生まれてこの方そんな古びた幹線道路に乗ったことは一度たりともねえ!俺これからこの草むらの中で
、ツチノコ見つけんのさ!どうだ!国男のおっさんも一緒に来ねえか?」
「バカ言うんじゃねえよ。俺さん家族がいんだぜ。それにこれからそっちに行ったって俺さんの体がもっちゃくれねえよ。」
「けっ!そんなら俺もう行かなきゃな、国男のおっさん、先に行きなよ。俺これから支度があんのさ。」
「なんだ、小僧!お前やっぱり一人で行く勇気がねえだぁ?いいからよ、俺さんまだ会社行くまでに時間あんのさ。」
国男は幹線道路の脇にある自動販売機でいつもの缶コーヒーを買い、ぐいぐいと飲み始めた。彼のワイシャツにコーヒーのシミが一滴ついていた。
「っかあぁ、すっきり目覚めるわい。どうだ太郎、コーヒー買ってやるからよ、こっちに来いよ?」
「嫌なこった!俺コーラを飲んだことあるがよ、あれは日本人が飲むもんじゃねえやい。コーヒーだって俺飲みたくないね。」
太郎は立ち上がって、国男に向かって何かを放り投げた。
「やい!国男のおっさんよ、その黒曜石をやるからよ、俺のこと誰にも言わないでくれよ!どこに行ったかって聞かれたら、知らねえっ答えてくれよ。」
「なんだと?お前やっぱり俺さんの事バカにしてやんだな?そんな石ころでよ、俺さんがお前さんの言うことを聞くはずねえだろが。俺さんは全くお前の事なんて興味ねえから、、お前さんの事は誰にも言わんよ。さあ、俺さんは行くぞ?もう会社の時間さ!」
国男はとぼとぼと歩きながら車の方へと向かっていった。彼の背中は何かさみしげでやるせない感じがした。
国男が車で去った後、太郎は草むらの中を歩きだした。草むらの草は背が高く、太郎の背丈をはるかに超えていた。
太郎は休むこともなくぐんぐん進んでいった。