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序章
この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などとは一切関係ありません
――理想の彼氏、お貸しいたします。相談は無料。お気軽にどうぞ
そこは都内でも一二を争うにぎわいをみせる繁華街の中にある。
昼と夜ではまるで違う顔を見せる街の片隅。
飲食店がつまったビルとビルの間にある古ぼけた四階建てのビルの三階。薄暗い廊下の突き当たりにそれはある。
どこにでもあるような灰色の扉をあけると、まず目に飛び込んでくるのは外観とはまるで違う白と黒で統一された、無機質なインテリアだ。
華美な装飾品などなにもない。
まるでどこかのインテリアショップのワンコーナーのようだが、その印象は現れた男によってすぐに覆されるだろう。
色は黒。だが、ざっくりとかきあげ、額に一筋たらした髪型。
ラメがちりばめられた細身のブラックスーツに、サテンのシャツ。
焼けた肌に青いカラーコンタクト。
形良い唇に笑みを浮かべ、男はシルバーのリングがはまった手をゆっくりと差し出す。
「……モルペウスへようこそ。さあ、あなたの理想の彼氏、私に聞かせていただけますか?」