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魔法の壺  作者: 鏑木恵梨
Spiral Stairway
53/168

Interlude 01.

 ゆっくり丘を降りる。

 ただ無言で、ひたすら歩く。

 そのまましばし時が流れた。

 しびれを切らしたのは少女のほうだった。口をむずむずさせ腕を振り回したかと思うと、やにわ切り出した。


「カイ。あなたはなに人? なにしてる人?」


 少女は上半身を傾けて、少年をのぞき込んだ。

 藤生氏は氷の表情のまま、さらりと答える。


「日本人の留学生」

「大学生? そうは見えないわ」


 クスクスと少女は笑った。

 そして、自分と同じ『家出少年』と思ってた、と付け加える。

 藤生氏は前を向いたまま言う。


「家出少年と大差ないよ」

「どうしてこの港町に?」

「調べたい事があって」


 いぶかしげに少女は藤生氏を見返した。


「駅で会って丘に登って海を眺めて……あなたは今日、何を調べていたというの?」

「下調べ名目の観光かな。宿は用意してるし、ゆっくりと」


 少女は無言で目を伏せた。

 藤生氏はその反応の理由を知っている。


「行くところ無いなら泊まる?」


 少女は耳を紅に染めた。

 もともと純朴さをあらわすように頬は赤みを帯びていたが、そのときは全身にまで熱が回ったように見えた。

 同年代の異性、しかも今日初めて会った男に『泊まるか』と言われて、平然としているほど擦れてもいない。だが、相手が少し年上とわかったら、背伸びをしてでも大人に見られたい。


「いいわね。泊めてもらえる?」


 少女、渾身の虚勢を張る。

 その機微を知るや知らざるや。

 藤生氏は『いいよ』と軽く答えたまま、鉄面皮を崩さない。

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