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魔法の壺  作者: 鏑木恵梨
Upon The Star
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03.それって告白ですか

 三日目。

 朝食後、ついに念願(大げさ)の磯釣りにとくり出した。

 今日のおかずをとおとぅに大漁祈願されての出陣である!

 で、実際はというと。

 伊江島の磯は入れ食い状態!

 最初は経験浅い素人やし、隣人の久瀬生徒副会長と並継ロッドでガンガン飛距離飛ばすぜという方面で熱くなってた。が、私はグルクマーって魚を三匹たてつづけ。なんか久瀬くんは沖縄らしい青いイラブチャーやらタカサゴ(沖縄だとグルクンっていう)やら何種類か十尾くらい釣りあげてた。

 結論。帰り時間まで真面目にやったらクーラーボックスがヤバイ。

 ゆえに竿を置いたまま会話をはじめた。


「昨日言ってた、サータアンダギーもってきた」

「サンキュ」

「おなかこわしても知らんよ」


 昨晩の星空観察後、プチお茶会をした。

 その際、揚げ菓子備蓄を聞きつけた久瀬くん、持参をリクエストしてきたのだった。


「んまい」


 成長期の久瀬副会長。よく食べる。

 しかし私もタダで食べさせやしない。

 ズバリ質問をぶつけた。あのネタだ。


「絶対断るって、鹿嶋くんが断言してたけど。実際どうなん」

「あぁ、浅賀さんが来た件」


 察しがいい。久瀬くんの頭のいいとこだ。

 だが、回答に感情がないか感情的すぎか、ブレ幅がかなり大きいのがよくないとこだ。


「そりゃ断るよ。天宮さん以外の子は」

「え」


 なんて言った?

 私以外の子は?


 思考放棄はせず懸命に考える。

 私が告る分にはOKてこと?

 それってまさか、告白ですか。逆説的表現してるみたいな。まさか修旅で告るってやつ。それに自分が遭遇してるとか。まさか。

 胸痛い。動悸が。息切れが。やばい、救心くれ!

 といったぐあいに動転中の私の横で、彼はふたたび口を開いた。


「諸々の懸念がいろいろ面倒やし」

「……は?」

「藤生君がらみの懸案事項。世間的に堂々と話せる内容やないし」

「そうか確かに」


 魔法とか魔王さまとか。

 やばい人扱いやわ。間違いなく。


「話せへんのに面倒に巻き込む可能性なくはないし」

「それもしかり」

「というわけで僕は世捨て人となりました。天宮さんそんな寂しい僕を救ってください」

「ほかの人、藤生氏ワールドに巻き込むとマズい、ってこと?」


 後半のセリフはスルーして再確認。


「そんなとこ」


 久瀬くんは変わらず淡々と答えた。

 最初の衝撃のセリフは、私をからかうものではないようだ。純粋に、そういう人様に話せないことを相談できる友だちは私って、そんな話。

 なーんだ。

 ……期待したわけじゃないからねっ。

 恥ずかしいけど。

 こうなりゃもはや勢いで切りこんでやれ。


「じゃあ、久瀬くんって、好きな子はおらへんの?」

「いる」

「いるんだ!」

「今はだれとは明かしません。秘して忍ぶも恋の道なり」


 誰かと追及する前に釘をさされてしまった。


「されど天宮さんにはいずれご紹介さしあげてもよい」

「私の知らん子?」

「微妙。しかしそもそも紹介できるんやろか」


 久瀬くんはほおづえついて思案する。

 そして私も思案。どういう意味やろ。紹介したいけど『できるんやろか』疑問で。知らん子かといえば『微妙』。名前だけは知ってるかも?

 しかも、藤生氏のことを話して大丈夫な人物。

 ぜんぜん見当がつかない。

 さらにはいずれ紹介。なぜか私に。

 私が告られてるでもないのだが、少々ドキドキしてしまった。


「相互扶助てとこ。天宮さんを応援するのも。よけいなお世話やろけど」


 私、藤生氏ラヴです! って思われてるのかな。

 否定するほど大きく間違ってないとは思うけど。

 ともあれ、礼だ。


「いえ助かってますので」

「で、藤生君へのおみやげ、なんか決めてる? まさか無いとかないやんな」


 考えてませんでしたすいません。

 でもおみやげ用意して、どう渡すよ。久瀬くんが当たり前に話してる以上、渡すつてがあるのかね。聞いてみよう。


「藤生氏へのおみやげ預けてええ? あとなにが喜ぶかね」

「簡単やで」

「かんたん?」

「わからんかなー」


 久瀬くんは笑いかける。一見、優しげでいて詐欺師の笑顔だ。


「わからん!」

「お菓子もっと食べてよい?」


 まだ二つほど残っているビニル袋を差し出すと。


「あーん」

「どういうことすか」

「練習台にどうぞ。ぜひ藤生君にやってあげてください」


 慣れない沖縄の温かさに頭やられたんかいな。

 詐欺師の笑顔、継続営業中やけど。

 私はため息とともに久瀬くんの口に押し込めた。強引に。気恥ずかしいし。


「ごちそうさま。ちょっと耳貸して」


 久瀬くんが接近する。

 やたら耳がくすぐったい。もう半ばどうにでもなれだな。


 久瀬くんいわく――もう一度コレ彼のために作ったげたら。そこらで買うよりオンリー・ワンな修旅土産でいいと思うよ。


 確かに。藤生氏が喜びそうな品物は思いつかない。

 藤生氏って物欲なさげだし、服も小物もシンプルな趣味してたし。なによりモノもらって『わぁ、ありがとう!』って喜ぶ図が絵にならない。

 それに魔のもののエラいお方・上主さまなら、その気になりゃなんでも手に入るんやないのかね。

 意見は妥当だろうと判断。

 結局、久瀬くんは藤生氏の理解者であり、頼りになるなと再認識するのであった。


 そんなこんなで私が土産選定に関する一考察中のこと。

 この鮮やかで美しい海に、新たな危機が発生していた。

 『藤生氏へのおみやげ』に頭をめぐらせる私と、勝手に人の菓子を消費する久瀬少年。この二名に今まさに危機が迫っていようとは……このとき知る由もなかったのである。

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