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魔法の壺  作者: 鏑木恵梨
Upon The Star
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02.星に願いどころでは

 二日目。

 バスに乗り込んで美ら海水族館に行って、イルカとかジンベイザメとか見た。そのあと、本部(もとぶ)港に向かい、フェリーに乗りかえ。

 港には白に青と水色の船体がドックに接岸されていた。

 私、フェリーってはじめて。白と青の船体が今から南の海を渡るぞという気分になる。

 フェリーが到着したのは伊江島というところ。

 島の港には島の人がたくさん迎えにきていた。

 船から降りると近くの大きな集会所に集まり『入村式』をやった。式典というからには、観光協会の会長さんがあいさつ、続いて先生方のあいさつをへて、ようやく民宿のホストファミリーの人たち――『おじぃ(おじいさん)』『おばぁ(おばあさん)』たちとご対面である。


「よろしくおねがいしまーす」


 と私があいさつした相手こそ、一夜の宿と各種体験でお世話になる民宿の方。仲井さんという五十代くらいのご夫婦だ。

 仲井さんの民宿は若干、大きいかもねって感じの家だった。

 リビングに共同キッチンもある。集まって持込みのお茶で楽しめそうな感じ。

 沖縄オリジナルなお茶あるかな。あとで仲井さんに聞こう。

 荷物を置くと、隣の平良さんちへ。体験その一『おかぁ』のお料理教室がスタートだ。

 トライしたのが『ゆし豆腐』メニュー。


「みんなで作ったの、夕飯に出しましょうね〜」


 と仲井さん。

 夕飯ってすごいプレッシャーだ。

 私は手つきがいいとほめられた。自分と弟とのお弁当担当だ、手早くおかずを仕上げるのは慣れている。といっても、ランチョンミートってぶたの缶詰とゴーヤー炒めるだけだから、腕前を誇るほどでもないけど。

 それとお菓子。山盛りのサータアンダギーができた。出来はまあまあだと思う。けど、他の子の失敗作の消費を手伝っていて、私のぶんは手付かずでそっくり残ってしまった。どうしようこの山。

 夕食は同宿のみんなと庭でバーベキューをした。

 テーブルに例のゆし豆腐やそうめんチャンプルーを並べてみたところ、おおむね好評だった。

 作ったのが我々だと後でばらしたところ、


「レシピが完璧すぎ」

「仲井さんどこまで手伝ったん」


 と失礼なリアクションが返ってきた。

 ちゃんと女の子らをほめんかい、と仲井さんがつっこんで、みんなで大笑いした。マイウェイ集団らしいけど、いい感じで和気あいあいした夕食だった。

 仲井さんからだったか、


「今日は天気がいいから星空がよく見えるよ」

「星」

「見てみたい!」


 かのんが強く希望を主張。

 食べたあとの片付け後、海岸に星空観察会とあいなった。


 夜空は銀粉をまいたよう。

 星の数は苅野で見るのとは桁違いだ。

 苅野は山の中のベッドタウンで、自然豊かなまち。それでも、マンションや幾何学的曲線を幾重に重ねたような市街の照明は、星あかりの存在をかき消してしまうらしい。


「すごいね」

「数えきれんわ」

「あれ、北極星やろ」

「あれもしかして、南十字星ですか」


 同じクラスの吉本くんが興奮気味に質問する。

 仲井さんがそうだと答えると、何人かが盛り上がった。かのんも「ほんまや、すごい」とうなずいた。

 かのんは星や天気に興味があって、いつも天気を聞いたら即答って子だ。家のパソコンで気象庁と複数の天気予報会社を見比べてるらしい。ウェザーなんとかっていう、似たような長いカタカナ名をスラスラ話すくらい。

 そんな彼女になにがすごいかたずねてみる。


「日本では見えへんて思っててんけど、沖縄本島近辺でも見えるんやって」


 つまりレアもの!

 かのんと吉本くん中心に、星空観察のしあいっこになった。


「冬だとココでも完全に十字見えますか」


 かのんの質問に仲井さんが解説をする。

 完全には見えないってことと、八重山、つまりもっと南の石垣島あたりだと正月前は十字が見えるのだそう。

 久瀬くんが仲井さんにたずねる。


「八重山では南十字星を『はいむるぶし』と呼ぶと聞きましたが」

「伊江島、本島も同じだよ」


 私は聞いたことのない響きに魅せられた。


「はいむるぶし……」

「『はいむる』は『南の群れ』、『ぶし』は『星』がなまった……」

「あ、流れ星!」


 かのんが空を指した。

 みんないっせいに空を見上げる。

 あっちだと見つけた子が位置を教え、見つけられなかった子も次こそはと宣言していた。

 あそこだ、と男子のだれかが言った。

 また、だれかが流れ星を見つけたようだ。私も見た、と女の子の声も。男子女子関係なく盛り上がってきた。


「三つ願い事すればかなうのは、見て消えるまでやったっけ」

「そんなん無理やろ」

「無理ちゃうがんばれ」


 そして私は盛り下がっていた。

 がんばって見つかるものなのか。


「あ、流れた」


 久瀬くんがぽつり。

 見逃した。星に願いどころではない。

 もしかして見つけられてないの、私だけやったりして……動態視力・集中力・運のどれが悪いかは不明だが、こういう状況になるとへこむ。

 はいむるぶし。

 自分をなぐさめるように、それをじーっと眺めた。

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