表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法の壺  作者: 鏑木恵梨
Timeshare
25/168

06.4月10日(土)

宛先:白河たかなり

Cc:

Bcc:

件名:ご報告・契約について


母との件について、すぐに同意していただけるとは

正直言って予想していなかったので、驚いています。

今はすっかり落ち着きましたので、ご報告します。

さて、既存の「契約」に関しては先日申した通り、

思うところがあり、ご迷惑のかかることがないよう

処理させて頂きました。

要するに、すべて「夢の出来事」であったと理解して

頂ければ結構です。後顧の憂いもございません。

今後も仕事に邁進下さいますよう、お祈り申し上げます。


以上



  *  *  *



 送ったメールに返信など無いことくらい、自分も予想している。邪魔であるとさえ思われているだろう。それくらいはいいかげん認識している。

 それが分かっていても意地になって送りつける、その不毛さに自分自身、呆れ返ってはいる。

 こんなのは自己満足。逃げ場が欲しいだけ。

 そう表現してしまえば、終わってしまう。

 たとえ現実逃避でも、止めてはならない……そんな気がしていたのだ。



 そんな時、一通のメールが届いた。

 無題で、HTML形式。いつもならごみ箱に捨てている。

 たまたま今日はプレビューウインドウを開いてしまっていた。



送信者:白河隆哉

宛先:久瀬暁哉

Cc:

Bcc:

件名:


これまで返事の一つも出さなかったことをお許し下さい。

さて、例の件については君の言う通り「夢の出来事」と考えることにします。これは私の償いようのない罪です。しかし、礼や侘びの言葉、美辞麗句等をどれだけ重ねたとしても君には届かないでしょうし、私も空虚です。今は敢えてこれ以上何も書かないこととします。

ただ、いずれは君にかけることの出来る言葉が見つかると信じています。我が儘な願いですがそれまで待って下さい。




 俺は、パソコンの前で、しばらく動けなかった。


「今頃……」


 呟きは、ディスプレイの光に紛れていった。

 俺は突然、散り際の夜桜を眺めたくて、窓を開けた。

 自分が、何かに呼び醒まされるような感覚に包まれながら。

 生温い風を全身に感じながら。


 ただ、闇を見つめた。

Timeshare 終了です。


次は、藤生氏の仕事人ぶりをご紹介する小話を予定しています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ