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魔法の壺  作者: 鏑木恵梨
Magi Farm
12/168

12.クラス名簿

 迎えた三年生、始業式の日。

 クラス分けを張り出した下駄箱は、人であふれかえっていた。私も多分にもれず、人山をにぎわせている一人だ。

 渡辺かのんとは同じクラスだった。せりとは分かれてしまった。


「また今年も、ラブラブなわけやね、はるこ」

「へ?」


 十秒ほど、なんのこっちゃと理由を推察。

 もう一度、クラス名簿を見直して気がついた。


「あーそういうこと」


 同じクラスに藤生皆の名がある。かのんが茶化しているのは、そのことなんだろう。

 そういえば、鹿嶋くんは別のクラスで発見し、白河くんはどこにあるのか発見できなかった。見落としたかも知れない。

 新しい教室は、四階一番端。

 席順は、名前の順。かのんの席は対角線上にある。先生が来るまで廊下側の私の席でおしゃべりをしていた。

 鐘が鳴り、先生が来た。青いジャージを制服にしている数学教師・下崎だ。

 空席はひとつ。

 藤生氏のところだということは、すぐわかった。

 下崎が出席をとりはじめた。

 まずは天宮。『あ』で始まる名前の私の出席番号は、今年は一番だ。あとは終わりまで待ちに入る。

 全員の点呼を聞いていると……。

 あれ? 白河くんの声。

 声のした三列目一番前を見ると、目があった。人の良さそうな笑顔。そこにはメガネをはずして少し印象の違う彼がいた。

 藤生氏は、初日から欠席のようだ。

 下崎が連絡事項を伝え終わると、始業式のため校庭に出ることになった。


「白河くんの家、離婚でもしたんかなあ」


 かのんが寄ってきて言った。


「へ? なんで」

「名前ちゃうかったやん。名簿見てみよっか」


 教卓の出席簿をちらっと見てみる。


「下の名前、なんやったっけ」

「ええと、あきなり……これちゃうのん? 『久瀬あきなり』」

「ほいな」


 教卓のそばに席があるウワサの彼は、なにやら取りに戻っていた。


「両親、離婚したん?」

「ちょ、はる。ストレートすぎ」


 かのんがぶしつけな質問をする私をなじる。

 白河……久瀬くんは気にする風もなく答えた。


「おかげさまで。調停はこれからやけど」

「ふーん。大変やね」

「そうでもないで。それより」


 始業式の時間はあと三分。悠長に話してられないことに気づく。

 かのんは教室を出た。

 続く私に、久瀬くんはすばやく小声で告げる。


「藤生くんからのメール、あとで見せる」

「なにしとん! 早く」


 かのんにせかされて、私たちは校庭へと走った。



  * * *



『父親に会ってくる。どうも攻撃の対象はおれだけじゃなくなってきたから。会えばなんとかなると思う。それまでは、よろしく頼む』


 久瀬くんが見せてくれた、藤生氏からのメールの内容。それは、藤生氏がとうとう念願を果たすことを示すものだった。

 おめでとう、藤生氏!

 でも……不安がつきまとう。

 本当に大丈夫なんだろうか、と。

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