転生したらミジンコだったので、人間を引くまで転生ガチャしてたらチート能力を身につけたのでとりあえず無双してチーレムです
「うわっ! またミジンコかよ……」
もはや何回目かすら忘れたが、ミノルは水辺に漂うミジンコに転生した。
漂うだけの、ちっぽけな存在。
そしてその運命はあまりに過酷だった。
「ああ、コイが迫る……うわー!」
またもお陀仏になるミノル。この水辺がどこかすら、小さすぎる彼にはわからない。
魂だけになり、また転生ガチャとなる。
(また次もミジンコなのかな……。神さまー!)
ミノルは思わず叫んだ。
『呼んだ?』
緊張感のない声がミノルの意識に響いた。
(あなたが、神様?)
『え?』
(あなたは、神様ですかあ?)
『とんでもない、わしは神様じゃ。なんか用か?』
(もういい加減、人間に転生させてくださいよ)
『そりゃ無理じゃろ。人間以外の生物のほうが、ずっと多いんじゃから』
(早く人間になりたいんですよ)
『残念ながら、次もミジンコじゃ。……おっ、でも今度はボーナスポイントが多いぞ』
(ボーナスポイントってなんですか?)
『誰でも生まれるときには持ってるんじゃ。能力値にポイントを上乗せできるんじゃよ。ふつう10ポイントくらいじゃが、次のお前さんは65535ポイントもあるぞ。ラッキーじゃな』
(じゃあ、そのポイントでめっちゃ強くなれるとか?)
『そうじゃよ。もしくは、その6万ポイントを使って人間になるって手もあるぞ?』
(えっ、人間になれるんですか?)
『でも、その場合、人間になるためにポイントを使うから、転生後はポイントゼロでスタートじゃよ?』
(じゃあ、またミジンコ転生の場合だと?)
『それなら、この6万ポイント全部を使えるぞよ。どっちにする?』
(え? どっちって?)
『つまり、ポイントゼロでぱっとしない人間に転生か、ミジンコのまま6万ポイントで無双するか。選ぶのじゃ』
(…………)
二者択一だった。ミノルは考えた。待望の人間に転生するかどうかを……。
(そういや、転生前の人生もぱっとしなかったしな。それなら、いっそ……)
そして、決断した。
────
「……力がみなぎってくる……!」
結局、ミノルはミジンコ転生を選んでしまった。
1ミリほどの小さな体に、圧倒的なエネルギーがあふれてくる。
「もはや、この水辺は俺には狭すぎる……!」
ミノルがちょっとジャンプすると、水面が盛り上がり、はるか上空まで飛び出した。
眼下に広がる景色に、自分がいた場所があった。
「池だったのか……。井の中のカエルならぬ、池のミジンコか」
衝撃で揺れる水面には、コイたちがひっくり返って波に揺られていた。
「さてと……ここはどんな世界だ? 千里眼、発動」
世界が、ミノルの脳内に流れ込む(ミジンコに脳があるのか?)。ここは、人間だった時にミノルがいた世界ではないようだ。
「どこに行くか……こっちだ」
大気を引き裂く衝撃波をともなって、ミノルは地平線のかなたに飛び去った。
────
その頃、『ソノ王国』では、国王たちが困り果てていた。
「国王、魔王軍の侵攻が迫っております」
「わかっておる、大臣……。誰か、この国を救ってくれる勇者はいないのか」
国王たちの間に重い沈黙があった。そのとき、堂々とした声が響いた。
「勇者なら、ここにいますぞ、陛下」
「だ、誰だ!? 姿を見せい」
国王と大臣はキョロキョロと見回した。
「私は、ミノル。訳あって姿をお見せできませんが、魔王の討伐、お任せ願えませんか!?」
国王と大臣は顔を見合わせた。
「ミノルと申したか。では、勇者ミノルよ、お主にこの国の命運は任せたぞ」
「承知いたしました」
「ところで、どうして姿を見せんのじゃ?」
「見せないのではなく、見えないのです。私はミジンコなので」
「ミジンコ? なんだそれは?」
「めっちゃ小さい、爪の先ほどの生き物です」
「なんと。たしかに、よーく見ると点のようなものが浮いている……かな……?」
「はい。それでは行ってまいります」
言うが早いか、小さな竜巻を残してミノルは消えた。もっとも、国王たちにはどのみち見えない勇者の旅立ちだ。
────
城を出ると、すさまじい速度で飛び、ミノルは前線へと到達した。
「あれか……」
オーラをまとって飛びながら、ミノルが地上を見ると、ソノ国の兵と魔王軍のモンスターたちが平原をはさんでにらみ合っている。
ミノルはその小さな体から魔力を解放した。
「トランス・フェイズ・バリオン・フラッシュ……!」
目がくらむ一瞬の閃光の後、すさまじい爆発が魔王軍を包んだ。
だが、ソノ国の兵士たちの前方には光の壁が現れ、何事もなかった。
兵士たちはあっけにとられて成り行きを見ていた……といっても、すでに戦闘は終わっていた。
土がむき出しの荒野になった平原の中央に、ぽつんと1体のモンスターが残され、恐怖に震えている。
「……魔族の女か。魔王の居城を教えろ」
「だ、誰だ? くっ、殺せ!」
ミノルは女魔族の思念を読み取った。
「……なになに、ここから東に1000キロか」
「ち、違う!」
ミノルの念動力で、女魔族の体が飛び上がると、放物線を描いてソノ国の兵たちの前にどさりと落ちた。
「そいつは捕虜にしておいてくれ」
兵士に告げると、ミノルは東の空に飛び去った。
──黒雲が覆う魔王の居城では、魔王が玉座のひじ掛けにもたれて頬杖をついていた。
「のう側近、いつになったらソノ国は落ちるのじゃ?」
自分たちの勝利を確信している魔王の態度は、ゆるみ切っていた。
「は、魔王さま、まもなくかと」
「そこまでだ。魔王」
「誰じゃ!? 姿を見せよ!」
「俺はミノル。訳あって姿は見せられんが、お前たちを倒しに来た」
「賊めが、ステルス魔法か、しゃらくさい!」
魔王が冷気魔法を放つと、空気が輝く。
そして広間の真ん中に、淡い光の球体の姿を浮かび上がらせた。
バリアを張ったミノルである。
「見えた、そこか」
再び冷気を放つ魔王。だがミノルは微動だにしない。
「ステラー・ウィンド・エクスプロージョン!」
ミノルの炎の風が、魔王に直撃した、かに見えたが、直前で冷気のバリアを張ったようだ。熱と冷気がぶつかり、水蒸気になって一気に広がる。
「ふふ、さすがは魔王。そうこなくては」
「このわしに向かって利いた風な口を。死ねい!」
魔王は、魔力を解放した。
空気が震え、氷が床から壁を伝わって広間全体を包む。
すべてが、空気すらも凍結する。その余波で、側近も氷の彫刻と化した。
広間は静寂し、勝利を確信する魔王。が、中央にぽっと小さな灯がともる。ミノルだ。
「遊びは終わりだ、魔王。『フェルム・ヌクレリック・インプロージョン!』」
エネルギーが、一気に収縮していく。次の瞬間、魔王は爆発消滅した。広間の氷も融けている。
「さて、帰るか。お? 玉座の後ろに財宝が。ついでにもらっておくか。手土産にしよう」
ミノルは、自分の体の1000倍はある巨大な宝箱を念動力で持ち上げると、魔王の城の天井を突き破ってミノルは飛び去った。
──道中、魔王の恐怖が消え去った世界は活気を取り戻している。
「どの町も平和が訪れたようだ。……む、あれはなんだ?」
通りがかった町に降り立つミノル。といっても足はないが。
町の広場には市が立っている。たくさんの商人がさまざまな品を売っている。
ミノルは奴隷商人の店に目をやると、商人が口上をまくしたてている。後ろには、鎖でつながれた女の奴隷が、5人。
「らっしゃい! こいつぁ極上ものだよ。今日は1人たったの150ゴールド。なに、高い? それじゃあ100ゴールドでどうだ。もう負けられないよ。え、まだだめ? じゃ、1人買えば、もう1人つけちゃおう。もってけドロボー!」
「よし、買った」
「はい、まいどあり。お客さん、どちらです?」
商人は、店に集まった人だかりの中から声の主を探すが、見つからない。
「私はミノル。訳あって姿は見せられん。しかし、金ならここにあるぞ」
ミノルは魔王城から持ち帰った宝箱を、どすんと商人の目の前に置いた。
「こ、こんなに!? こりゃあ多すぎますよ。奴隷を全員買ってもおつりが来ますよ」
「つりはいらん。とっておけ」
商人が奴隷たちの鎖を外すと、5人が前に出た。
「私は、ハンナです」
長い金髪で白い肌の美女だった。
「私は、アトラ」
黒髪で、肌が浅黒い美女だ。
「……レメリアだ」
魔族の女だ。さっき戦場で捕虜になった女だった。もう奴隷商人に売られていたのか。
「ムムだみょ♪」
キツネ耳の付いたキツネ目の美女だ。
「ヨルムです……」
銀髪で耳のとがった美女だ。
「もう君たちは自由だ。どこへでも行くといい」
自己紹介が終わると、ミノルが言った。
「いいえ、私たちはミノル様とご一緒します!」
全員がハモった。彼女らは感じていた。ミノルの底知れぬ魔力、王者の風格、器を。
「そうか……。ちょっと城に行ってくるから、君らは待っていてくれ」
「お客さん、夕刻ですから、もうお城は閉まってますよ」
商人が親切に教えてくれた。
「む、そうか。じゃあ一泊してからにするか」
「奴隷たちも連れて行くなら、あそこの宿が広くていいですよ」
商人は通りの向こうの大きな宿を指さした。奴隷商人などという人権ガン無視な商売をしているわりには、親切だった。
「じゃ、さっきのお金から宿代だけ返して」
──翌日
宿屋の窓に朝日がさしこんだ。
「おはようございます、ミノル様。美人をたくさん連れて、ゆうべはお楽しみでしたね」
「ご主人、ちょっと城へ行ってくるから、彼女らを頼む」
5人の美女がうっとりした表情でミノルを見送る。
体長およそ1mmのミジンコが、美女たちといったい何をどう『楽しんだ』のかは、宿屋の主人には謎だったが……。
──いっぽう、ソノ国の王城は歓喜に包まれていた。
「ただいま戻りました」
「おお、勇者ミノルよ。魔王を倒したことは、我々も聞き及んでいるぞ」
広間には、王、大臣、兵士たち、そして王の娘である姫も、ミノルの帰りを待っていた。
「そなたはまことの勇者じゃ。どうじゃ、わしの娘と結婚し、この国を治めてくれんか?」
「いえ。ミジンコの身で王になろうとは思いません。私は気ままに旅でもしようかと存じます」
「そうか。ならせめて、真の勇者のあかしである『プランク・トン』の称号を受け取ってもらえるかの?」
「は。謹んでお受けします」
──こうして、ソノ国と世界は魔王の手から救われた。
ミノルは、美女たちの手のひらの上で転がりながら暮らし、たまに魔物が出れば討伐することを趣味とした。
彼の授かった称号である『プランク・トン』は、のちに『微生物』を意味する言葉の語源となった。
(藤村書房刊 『魔法と微生物の発見』より)
この作品は作中作です。
本編? はこちら https://ncode.syosetu.com/n9269mc/




