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幽霊(女子高生ギャル)は、今日も俺の部屋で音楽を聴く

作者: 黄金餅
掲載日:2026/06/04

あんまり女子高生っぽくない言動とか、そういう違和感があるかもしれませんが、暖かく受け入れてくださりますと幸いです


あとジャンルが微妙だったので、一旦コメディーにさせていただいております

それは、少しの非日常。されど、大きな変化はなく。



◇◇◇



「やっと終わったぁ……」


そう言いながら、少しでも肩の凝りが治らないかと伸びをし、仕事からの帰路に着く。少しの優越感を味わいながら。


大変そうだな、今から()()()帰る人たちは。お前もそうじゃないのか、と言うのは愚問だ。俺の家は会社から徒歩30分。少々長いと感じるかもしれないが、終電逃して徒歩6時間コースと比べたらまだマシだろう。ちなみにもう一つの候補はそこであった。


そんなことを考えながら、途中にあるコンビニでビールとつまみを購入する。

やっぱり金曜日ってのは最高だよ、いくらでも酒を飲んでいいのだから。まあ?俺はできる大人なんで?二日酔いして頭痛でうなされるようなバカな真似はしませんし?危ないな、と思ったらブドウ糖とって、風呂で温まって、みたいに対策しますし?


誰に向かって見栄を張っているんだお前は、と冷静な自分に言われて少々落ち込むが、それも手にある袋の重さを確かめればふっと和らぐ。いいんだ、金曜日くらい気楽に行こうぜ。そう思い、およそ残業帰りとは思えない軽い足取りで家を目指して歩いてゆく。





俺は菅野(すがの)(れん)27歳、絶賛独身彼女募集中である。好きなものは音楽、嫌いなのはおじさんと呼ばれること。別に俺って老け顔じゃないんだけどなぁ……

今日も今日とて、繁忙期である会社で終電間際まで残業に追われていた。おっかしいな、俺の会社はブラックじゃないはずだったんだが。そんな疑問を抱きつつも、


カシュッ、とプルタブを開き


グビリ、と音を立てながらビールを胃へと流し込む毎日である。頑張れ俺の肝臓。できれば死ぬ間際まで健康でいてくれよ。ブラック企業もびっくりなブラックぶりに、我が肝臓は応えてくれる。いや俺の思い込みか………?いやいや、きっと肝臓くんはいいお返事をしてくれていることであろう。そう言い聞かせ、もう一度黄金色の液体を喉へと流し入れる。


つまみのビーフジャーキーを一つ、口の中へとポイッと放り込み、ゆっくりと噛み締める。


「やっぱビーフジャーキーが一番だな」


そんなことを呟きながら、最近新調したコンポの電源を入れる。


今日は緑黄色野菜の気分だ。基本的に、緑黄色野菜の曲は明るいものが多い。少し疲れた夜や、気分を上げたい夜にはうってつけだ。そう思って、入っていたCDを取り出し緑黄色野菜のCD──10周年記念のベストアルバムだ──を入れる。

音量を調節し、他の部屋に響かない程度に抑えられた重低音が、それでもなお腹の底に響く。これだから高音質はたまらないねぇ。1人、気取った感じの思考を繰り広げつつ、もう一度ビールを口へと運ぶ。


そういう、当たり前の、されど至福のひと時を過ごしていた俺。しかし、その「当たり前」は、ふと目をコンポから逸らし、窓の外へと向けたことで崩れ去った。


そこに写っていたのは───────



















──────ギャルがよく着ていそうな派手な服をを着た、17,8歳くらいと思わしき女性(ギャル)の姿であった。しかもノリノリで音楽にノっているのだ。俺の後ろで。


「ブフォアッ!?」


我ながらセンスのある驚き方だ。その女性(ギャル)に気づいた瞬間、驚きすぎた俺は口に含んでいたビールを吹き出した。

そして、吹き出しながら後ろを振り返る。


そこには、窓に映っていたのと寸分変わらぬ推定女子高校生(ギャル)が。そして、俺が完全に固まっていると。


「あ〜、おじさんきたな〜い。ビールは噴き出さないでもらえます〜?」


「は?」


いや、これは妥当な判断だと思う。普通に考えて、自分の部屋に女子高校生(ギャル)がいて、それに驚きすぎてビール吹いたら「汚い」って言われたんだぞ?確かに汚いけども。あとで掃除しよ。


そうではなく。まず、おじさんは解せぬ。こちとらピチピチの20代だぞ。これ重要な。次に、こいつは誰だ?なんで俺の部屋にいる?というかギャル過ぎないか?疑問は絶えず、後から後から湧いてくる。というかなんでそっちも不思議そうな顔してるの?


「あれ?おかしいぞ?」


「?」


「あーあー、てすてす。もしもーし、おじさんこの声聞こえてますー?おじさーん?」


先ほど、おじさんと呼ばれなんとも言えない気持ちになっていたものの、ここまでおじさん、おじさんと連呼されると怒りも頂点に達して。


「誰がおじさんだっ!!」


つい声を荒げてしまう。


「え!?本当に聞こえてた!?」


しかし、目の前にいるギャルはそれどころではないようだった。何に驚いているのかは知らないが、こちらが言いたいのはただ一つ。


「なんのことかしらねぇけどな、こちとらまだまだピチピチの20代だ!」


おじさんではないという事実のみである。

そんな俺の声に気押されたのか、目の前のギャルは「え、あ、えっと、それはごめん。お兄、さん?かな?」と訂正した。これで俺は満足である。いやでもちょっと戸惑いがちなのは解せん。


あれ、おかしい。俺の思考がどんどん違う方向へ飛んでいってるぞ。危ない危ない、ちゃんとこのギャルの対処をしなければ。というかこれって普通に不法侵入だよな?


「えーと、おじ……じゃなくて、お兄さん。私の声聞こえてるよね?あと、私のこと見えてるよね?」


「当たり前だよ不法侵入者。誰だかしらねぇけどとっとと出てけ。あと一回おじさんって言いかけるな」


「あはは……結構当たりきついね……でも、本当に見えてるなんて……」


最後の方は何を言っているのかあまりわからなかったが、あたりがきつい理由なんて一目瞭然である。


「当たり前だ、俺の家に不法侵入した挙句、俺のことをおじさん呼ばわりしたんだからな」


「いや、そうなんだけど、おじさん呼びしたことについてはしっかり謝るよ?でも不法侵入は違うかな……」


「あ?なんでだよ」


「だって、私死んでるもん」


「は?」


意味が理解不能過ぎて、俺の脳がフリーズする。


「いやだから、私死んでるんだよね」


「…………………はっ!?」


衝撃にフリーズした俺の脳みそがもう一度起動する。そして、先ほどの言葉を噛み砕き……一つの結論が出る。


「はっはっは、そんなことあるわけないじゃないか、冗談きついぜ?わかったならとっとと帰りな」


どうせ嘘だろう、それが結論だ。当たり前だ、そんな簡単に死んでる……つまり、幽霊だと言われて信じられるものか。


「はぁ〜〜」


「ん?なんだよ、そんなため息ついて。ため息つきたいのはこっちの方だ」


「めんどくさいなぁ、でも仕方ないか、せっかく見える人に会えたんだから!」


「さっきから何言ってるんだよ」


「いやぁ、信じてくれてないでしょ?私が幽霊だって」


「当たり前だよ」


「やっぱりね。だから幽霊の証拠を見せてあげようと思って」


「は?」


俺がそう言った次の瞬間、目の前のギャルが浮かび上がった。


「え?」


物理法則は何をしている?ニュートン力学どこいった?ニュートンが泣くぞ?ありえない、しかし実際に目の前で起こっている出来事を受け入れることができず、またもや俺の思考はフリーズする。


「ね?幽霊だって言ってるでしょ?おじさん」


しかし、人間の体というものはすごいもので。


「誰がおじさんだっ!!」


脊髄反射でその言葉を放ち、次いでフリーズも解除される。


「あー、お兄さん」


「なんでそんな面倒くさそうなんだよ。あとどうやって浮いてんだよそれ」


「さっきから言ってるでしょ?幽霊だって」


「いや、でも、うーん」


“幽霊だ”という言葉になんとか反論を試みるも、現に宙に浮いているわけであって、どうにも否定できない──というか、この状況で否定のしようがない。


「分かった?ここまで私が色々してやってるんだから、さっさと認めなさい?」


「うわぁ、すっげぇ腹立つ顔」


優越感一色な、こちらを見下したような、バカにしたようなその顔に思わずそんな言葉が出る。


「うわー、そんなこと言うなんて。だからいつまで経っても彼女できないんだよ?独身のままなんだよ?」


別に失礼なことを言ったから、と言うわけではなく、「彼女ができない」「独身のまま」と言うワードに、つい反応してしまう。俺だってそう言うこと結構気にしてるんだからな。あんまり俺の心を抉ってこないでほしい。


「別に?俺は好きで独身のままなんで?」


「この前お酒に酔っ払って、1人で「彼女ほしいよぉ〜」とか言ってたのに?」


「んな!?お前、どこでそれを!?」


「いやぁ、ワタクシ幽霊(・・)なんで?そりゃあいろんなことをみることが出来る訳ですよ。しかも私結構上位の幽霊だしね?おじお兄さんのことなら知らないことなんて無いのサ〜」


「いや、上位がどうとかはあんまり分からないけども。俺のことなら知らないことなんてないって、どう言うことだ?あとおじさんって言いかけんな」


「だーかーら、私は幽霊だよ?今まで君がこの部屋でしてきたこともずっと見てた訳。なんでこのタイミングで私のことが見えるようになったかは知らないけど、とにかく今までずっとこの家に憑いてたからねー。あ、そうだ。3ヶ月くらい前にさ、おじ……お兄さんが酔っ払って帰ってきて、裸で転げ回ってた時の話しようか?」


「おいちょっと待てそれは結構話が変わってくるぞ」


「まあ、こんな感じで私が幽霊だってことは理解してくれたかな?」


「いやこれで幽霊じゃなかったら流石にやばいだろ。まあ認めてあげますよ。渋々だけどな?(ここ重要)」


「んー、まあ若干アレだけど、認めてくれたんだしヨシとしよう。ところで名前は?」


「びっくりするほど話の切り替えが早いな」


「そこが長所です☆」


「そこしか長所がないのか?可哀想なやつだな」


「「しか」なんて一回も言ってませーん。耳大丈夫ですかぁ〜?」


「あーあー、キコエナイナー」


こんな感じで、小学生以下の低レベルな言い争いを繰り広げつつも自己紹介をする。


「私は星野恵。メグって呼んでね。好きなものは音楽だよー。I love music って感じ」


「メグって呼ぶかは保留で。俺は菅野蓮だ。奇遇だな俺も音楽が好きだ」


「おー、なんだか運命感じちゃうね」


「共感できないな、俺は一ミリも感じない」


「えー、ざんねーん」


「それにも共感できないな」


「すがの、れん……んー、じゃあ……スガノドンだね!」


「おい待て、なんでそんな簡単に人の名前を捻じ曲げていく」


「だってそっちの方が親しみやすくない?蓮根か暖簾とどっちがいい?ちなみに私の推しはスガノドンね」


「ああそりゃそうだろうよ、一番最初に出てきたのが一番じゃなかったらどんな思考回路してんだよ。というか全部却下」


「えー、可愛くなーい?絶対スガノドンがいいと思うなー」


「俺の人生史上初めてだよスガノドンは。あって蓮根だ。つかのれんってどっからきてんの?」


「えっと、すがのれん→がのれん→暖簾、って感じ?」


「まあ確かに俺の名前はちゃんと利用されてるな、すっげえ不満だけど」


「あーもう、文句が多いなぁ!」


「誰のせいだよ、誰の」


「仕方ないなぁ、じゃあれんれんにしといてあげる!」


「どっから目線だよ。まあでもれんれん?でいいよ」


「おー、じゃあよろしくね?スガノドン」


「お前一回病院行った方がいいと思うぞ」


「ザンネーン、もう死んでマース。まずはお墓探しからだね!あと私のことが見える医者っているのかなぁ……あと触れなかったら意味なくね?あ、そうそう。れんれん、私に触ってみて」


「んなっ!?何を言ってるんだ!?淫らな!」


「えー、れんれん何想像してるの〜?別に変なところ触って、なんて言ってないのに〜。あ、もしかして、日頃からそう言うことばっかり考えてるからそんな思考に至るのかな〜?」


「あー、うるさいうるさい!くそぅ、なぜ俺はこんな失敗を……この短い会話でも絶対いじられるって分かってたはずなのに……」


「己の愚かさを呪いな、れんれん」


「くそうぜぇ……」


「乙ー。て言うかさ、私触れてみてって言っただけなんだけど。もう話が変なところまで飛びすぎ。れんれんのせいだよ?」


「いや、俺は悪くない……いやでも俺も悪いか……」


「はい、認められて偉いでちゅね〜」


「俺は煽りに負けない」


「できるんでちゅか〜?」


「……」


「おー、れんれんにしては頑張るねー。じゃあはい、手、出して」


「……?」


「私さっき言ったよね?触れるか確認するって」


「ああ、さっきの」


「れんれんこそ病院行ったら?」


「いやだね、金がねぇんだよ金が。そんなことしてる暇あったら溜まってる仕事終わらせる」


「へー、まあ頑張れー。で、早く手、出して」


「ほい」


そう言って、目の前に手を出す。すると、恵……まあメグでいいか。メグもそれに合わせて手を出してくる。そして、手が近付いていき───




───お互いの手が、触れた。


「…………あー!?やっぱり触れるー!!」


その事実に、少し遅れて気づいたメグが驚きの声をあげる。


「え、なんでそんなに驚いてんだよ」


「だって触れたんだよ?幽霊ってものに触れられないんだよ?だからもう嬉しくて嬉しくて!」


「あ、そうなんだ。幽霊って物に触れられないんだな」


「でも不思議だなぁ、なんでれんれんには触れたんだろう。ほらみて、家具とかには透けるのに」


そう言って、メグがテーブルへと手を伸ばす。そして、テーブルに触れたと思った瞬間、するっとメグの手が机をすり抜けた。


「本当だ。なんでだろうな」


「不義義だねー。でもまあいいや、幽霊ってぶっちゃけ暇なんだよね。幽霊ってお互いにも見えにくいみたいでさー。あんまり幽霊同士喋ったりとかできないんだよねー。まあれんれんの家にいる時は音楽が流れるからよかったけどさー」


「ふーん。幽霊も結構大変なんだな」


「大変なんだよー」


「あ、ていうか気づいたら1時じゃん。まあ明日休みだからいいけどさ。さーて、音楽聴こ」


「なんだろう、私が幽霊って話した時もそうだけど、あんまりいい反応が返ってこない……ちょっと不満」


「どんまい、とだけ言っておこう。じゃ、俺音楽聴くから喋りかけてくんなよー」


「えー、せっかく人と話せたのにー」


「音楽聴いてたら暇じゃないんだろ?」


「確かに音楽は大好きだけど、今はもっと話したいのー!れーんれーんっ!はーなーそーおーよー!」


「お前なぁ、子供じゃないんだから」


そうやって、夜が更けていく。俺の日常が、ささやかな、いやまあ十分有り得ないんだけど、非日常へと変化する。しかし、日常は変わらず続いていく。



◇◇◇



一つ、変化があったとすれば。会社からへとへとになって帰った家に、音楽を聴きながら1人の少女が待ってくれていることくらいだ。しかし、それもいつかは日常となって。きっとどこまでも続いていくことであろう。

家で音楽を聴いていて、窓の外をふと見た時に、ハンガーにかけられた服が人に見えたのがきっかけで執筆しました。結局、あまり音楽要素は盛り込めずに終わってしまいましたが、大目にみていただけると嬉しいです。


読んでいただき、本当にありがとうございます。それでは、お目汚し失礼いたしました!

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