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8. 決意の『精霊召喚』


「許さないって、そんなことはいいからさ、早くこの子と戦ってみてよ!」


男は相変わらず、軽々と悪意を吐き散らかしている。


「……もう喋らないで。吐き気がする。」


(まずはこいつをなんとかしないと。)


ライラは目の前の魔獣と対峙する。


感じる魔力、見た目、どれを取ってもあの男の狂気が反映されたような嫌悪感を覚える。


(万が一にでも迷宮が崩壊してはいけないからセラは使えない。レアはアイクたちを守っていて私の防御はできない。結構キツい状況だけど……。)


振り返り、アイク達を見る。

ライラの脳裏に孤児院長の姿がよぎる。


「もう、誰も死なせない。」

確かな決意を込め、小さく呟く。


ライラは赤い魔石のピアスに、そっと、しかし力強く、触れる。


(ルナ、力を貸してね。)


――赤い魔石が、鼓動のように脈打つ。

空気が、わずかに震えた気がした。


「じゃあ、あの子をやっちゃって。魔石は研究に使いたいから、残して欲しいなぁ。」


男はまるで、おもちゃをねだる子供のような口ぶりだ。


だが、それを受けて攻撃を放とうとしている魔獣は、その口調に似つかない禍々しい雰囲気を纏っている。


そしてその悪意の塊が、強大な火球となってライラに向けて放たれる。


(レアを出してるから、防御魔法は使えない。かと言って、避けるとアイク達に当たる。レアが付いているとはいえ、それはできない。なら。)


ライラは魔法陣を展開する。

それは今までとは違い、一つだけ。


だがそれは、放たれた火球を飲み込むほどの大きさだ。


その魔法陣からは魔力を含んだ水の奔流が現れる。

そしてそれは、火球を飲み込み、消滅させた。


(それなら、相殺する!)


防いだと思った束の間、さっきと同じ光線が放たれる。

同じ攻撃だが、その数は倍以上に増えていた。


「さすが多彩って言うだけあるね……!」


今度はさっきとは対照的に、無数の小さな魔法陣が出現し、攻撃が放たれる。

その数だけの眩い光が連続して炸裂し、すべての光線を打ち消した。


一瞬、迷宮の中に静寂が訪れる。


(……終わりじゃない。)


次の瞬間、地鳴りとともに巨大な岩塊がライラへと迫った。


(次から次へと……!)


ライラは岩の壁を生成し、飛来した岩塊を防いだ。


石の破片が周囲に散らばり、土煙が舞う。


「やっぱりすごいね!この攻撃を防御魔法なしで凌いじゃったよ。道理で、さっきの子たちじゃ歯が立たないわけだ。」


息つく暇のない攻撃。

捌く分には問題ないが、アイクたちの状態を考えると悠長にはしていられない。


(レアの回復魔法があるとはいえ、長引かせるわけにはいかない……!)


赤い魔石が、これまでになく強く脈打つ。


(そうだね、ルナ。ありがとう。ちょっと無理させるけど、ごめんね。)


ライラは深く息を吸い――


「精霊召喚――」


ほんの一瞬、迷宮内に凪が訪れる。

しかしそれはすぐに、魔力の波にかき消された。


「――ルナリーニア!」


赤く鋭い光が迷宮を満たし、少女の姿がそこに現れる。


その少女はゆっくりと目を開ける。

その瞳は神秘的であり、同時に、それに勝るほどの苛烈さを秘めているようだった。


「……遅いよ、ライラ。」


少女が静かに、鋭く、ライラに物申す。


「レアにも来てもらって私自身消耗が激しいし、出したくは無かったんだけど、もうそんなこと言ってられないよね。」


ルナはライラの言葉に少し不満そうにため息をつき、レアがその様子を苦笑いで見守る。


ルナは魔獣に敵意を見定める。


「じゃあ……いくよ!」


ルナは周りに真紅のオーラを纏わせ、魔獣へとその矛先を向ける。


「精霊を二体同時に……。いいね、いいよ!見せてよ、その子たちの力を!」


男は笑っている。だがその目だけは、まるで死んだ魚のように光を失っていた。


「もう喋らないでって言ったで……しょ!」


ライラは魔獣の真上へと飛び上がる。


魔獣の動きに合わせ、ライラは反射的に魔法陣を描こうとした。


だが――指先に集まるはずの精霊の力は、霧のように掻き消える。

描きかけた術式は、形を結ぶことなく散った。


「……やっぱり、ダメ。」


代わりに、ライラはルナを見つめる。

彼女の代わりに戦うのは――ルナだ。


ルナの真紅のオーラはそのまま魔法陣へと形を変えて、魔獣へと放たれる。


ルナの魔法陣から放たれた雷撃は、空気そのものを焼き切るように唸りを上げた。

それでも、魔獣の甲羅はびくともしない。


(硬い……!ただの飾りじゃないんだね。)


ライラがそう思っていた時、攻撃の一つが甲羅から露出している部分へと直撃する。


すると魔獣は見るからによろめき、嫌がっている。


(……!なら。)


「ルナ!一瞬でいい。あいつを浮かせられる?」


返答はない。

代わりに、怒りを帯びた魔力が、空気を軋ませた。


魔獣はそれに対して、させないとばかりに甲羅の棘を無数に放つ。


「……。」


ルナはその棘を凍てつく魔力で凍らせ、業火で消し去る。


「……!」


そのままルナは魔獣の足元へと巨大な魔法陣を展開。

そこから発生した岩の柱で一瞬だが、魔獣の体が浮き上がる。


そして、その一瞬をライラは見逃さない。


ルナの顕現により失った術式を詠唱により取り戻し、そして、猛烈な竜巻のような風の魔法が炸裂する。


魔獣にそれほどダメージがあるわけではない。


(狙いは……これ!)


ルナの攻撃で浮き上がったその巨体を、風の魔法が捉え、魔獣の天地がひっくり返る。


甲羅で覆われていない、弱点が露わになる。


「今!いくよ、ルナ!」


ルナが巨大な魔法陣を発動、ライラも同じように準備をする。


「ーーこれ以上、奪わせない。」


ライラのその言葉を合図にルナは強大な炎の矢を、ライラは風の魔法を発動する。


その風を纏った炎の矢は、紅蓮の衝撃となって魔獣へと直撃する。


断末魔の唸り声をあげ、魔獣は塵となってこの世界から存在を拒絶された。

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