4. 『同行者』として
「ごめんね、ライラ。僕たちのために。」
三人のもとへ戻るとアイクが沈んだ表情でライラを出迎えた。
「アイクが謝ることじゃない。
ギルドのやり方がちょっと過激だったのは否めないけど、必要なことだよ。」
「でも、これでライラさんの強さはみんなが分かったよね?」
リゼが嬉しそうに話している。
レントは腕を組み、何か考え込むように下を向いていた。
「そうだね。合否は……まぁ、聞くまでもないのかな。」
アイクが向こうに目をやると、倒れているキースのもとへギルド職員が近寄り、回復魔法をかけている。
「それならいいんだけど……。具体的にこの後どうしたらいいんだろ。」
このままでは、ライラはただ冒険者を怪我させた人だ。
それでは困ってしまう。
「ライラ・ブルーガーデン殿!」
ライラが振り向くと、もう一人ギルドの職員が駆け寄ってきた。
「このまま同行者の登録をさせていただきますので、受付の方まで来ていただけますか?」
「それはいいんだけど……。」
ライラは倒れているキースをちらっと見る。
「彼は大丈夫です。職員が手当していますし、何よりも、あなたの強さは十分に証明されました。」
「え、はぁ。」
(さっきまではひどい態度だったのに、ここまで手のひらを返されるとかえって清々しいね。)
ライラが嫌味な感心をしていると、アイクがライラと職員の間に割って入る。
「それだけですか?さっきの戦闘は明らかに腕試しの範疇を超えています。ライラに正式に謝罪があってもいいでしょう!」
アイクが職員にまくし立てる。
気持ちは理解できるし、嬉しいのだが。
「ありがとう、アイク。でも大丈夫。だって見て?私、傷一つないよ!ね?」
ライラがくるっと一回転してみせる。
「……ライラがそう言うのなら。」
アイクはまだ納得はしていなさそうだったが、なんとか収めてくれた。
「じゃ、行こうか。」
受付に戻り同行者登録を済ませて、ライラ達はギルドを後にする。
入り口付近に、キースの姿があった。
「せいぜい、死なねえようにするんだな。」
皮肉とも心配ともとれる言葉を言って、去って行った。
ライラたちもそれに応えるわけでもなく、立ち去った。
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「……準備の前に、しておきたいこと、というより、確認しておきたいことがあるんだ。」
「うん、役割分担、だよね。」
アイクの提案に、ライラが応える。
「うん。そのうえで、作戦と計画を立てたい。まず、僕とレントは前衛なのは決まりだとして、ライラはーーー。」
「私は後ろ。」
「えっ。」
アイクとリゼ、少し遅れてレントがライラの方を見る。
「私は『同行者』だからね。基本的に手出しはしないよ。」
緊張や疑問、様々な感情が三人を取り巻いているのがわかる。
「大丈夫。何もせず放っておくわけじゃない。必要があれば私も前に出るよ。」
「それは、俺たちが対処し切れない場合の保険、ということですか?」
そう言うレントの表情は、少し険しい。
「そうだね、そう思ってくれて構わないよ。」
「それは……心強いと同時に、少し悔しいな。」
アイクが言葉も表情も、その感情を隠すことなく呟く。
さっきのレントの言葉も、悔しさから来たものだったのかもしれない。
「その悔しさは忘れちゃダメだよ。そう思えるのなら、君たちはちゃんと強くなる。」
三人は、各々が強い想いを持って、ライラの言葉を受け止める。
「じゃあ、次は私だね。私は後方支援と必要時の回復。チャンスがあれば攻撃にも加わります。」
リゼはいかにも魔術師という立ち回りで、
意外性はないが、堅実で確実な役割だ。
「あと、少し話は逸れるんですけど、ライラさんの『精霊魔術』について、少し教えて欲しいです。」
さっきのライラの戦闘を見て、同じ魔術師としてリゼは気になるのだろう。
「いいよ。私は三体の精霊と契約していて、それぞれこれを依代にして、私と一緒にいるの。」
そう言ってライラが示したのは、三つのピアスだ。
それぞれに赤、青、紫の魔石が埋め込まれている。
「じゃあ、それがないとライラさんは魔術が使えないんですか?」
「んー、そういうわけではないけど、まぁ困るよね。」
リゼが興味津々でライラのピアスを眺めている。
「私のことはいいの。今は当日の作戦を詰めていかないとね。」
(彼らのことを思うなら、極力手を出すべきじゃない。でも……。)
胸の奥に、妙な重さが残った。
リアーナに頼まれた大事な弟とその仲間、それ以上の思い入れがライラを悩ませていた。
そのあと何度か話し合いをし、各々でも準備を進め、そして、探索計画当日を迎える。




