第74話 『スキャンダル?』
祖父が亡くなって一週間が経過した。
現在SNS上ではライブの事が噂となり、私を探す為にライブハウスをハシゴする人、流れている動画や音声から再現する人や、自らを雨宮 沙耶と名乗る偽物まで現れる始末。
どうやらあのライブでは動画撮影や写真が認められていたそうで、観客が撮影したと思われる映像が多く出回っているのだとか。
噂じゃどこかのレコード会社が懸賞金を懸けてまで探しているだとか、多数いる覆面アーティストの中の人だとか、内心ヒヤリとする内容まで見かけたが、あの日私が歌った幻の3曲は『天使の唄』シリーズと言われ、一週間経った今も騒ぎが拡散され続けている。
そして私が所属するKne musicでは、連日問合せの電話やメールが殺到。
どうやらGirlishがバックバンドを務めた事で、私がKne musicに所属している、無名のアーティストと勘違いした人達がいたようで、デビューやらCDの販売やらの質問が来ているのだという話だ。
因みに余談にはなるが、先日ミニライブでお披露目した3つの曲、『True Tears』『Last letter』は、来月から3ヶ月連続で発売されるSASHYAの新曲、そのカップリング曲にそれぞれ収録が決まっており、最後にお披露目した『明日へのstep』は、7月から放送される『十七歳の恋』、というドラマの主題歌に決まっている。
佐伯さんはどうやらA面で使いたかったそうだが、生憎とカップリングに収録される2曲は悲しみのバラード。
本来曲というのは、スポンサーのイメージに合わせて書き上げるもので、アーティスト色が全面的に出ているような曲は、スポンサー側から嫌われる傾向が強い。
中にはコンセプトが一致したり、コンセプトに合わせたドラマやCMが作られたりもするが、大多数のスポンサーは前者の方を好むことだろう。
その結果、『True Tears』と『Last letter』は使って頂けるスポンサーが見つからず、会社からは雨宮 沙耶で出してはどうかとも打診されたが、私はこれを拒絶。
歌ったのは私自身ではあるが、この3曲とも間違いなくSASHYAの歌なので、一夜限りの雨宮 沙耶というアーティストは事実上消滅し、同時にSASHYAの素顔が露見することとなる。
どうせいつかはバレることだし、私は前に進むと祖父に誓ったので、甘んじてこの現実を受け入れるつもりである。
「あのぉ、私また何かやらかしちゃいました?」
祖父の死に伴う通夜や葬儀などが一通り終わり、ようやく日常が戻り始めたとき、佐伯さんから緊急の会議を開きたいからと、Kne musicの本社へと呼び出された。
「もうすぐ社長達も来られるから、取り敢えず座りなさい」
状況が何もわからないまま、佐伯さんに勧められるまま近くの席へと座る。
私が何故この様な言葉を発したかというと、それは集められたメンバーの顔ぶれによるもの。
いまこの部屋にいるのは、佐伯さんをマネージャーと仰ぐ私とGirlishのメンバー4人。これだけならよく見る光景なのだが、今回私達に加え、蓮也を始めとするAinselの5人と、そのマネージャーでもある三島さん。
更にはこのあと社長も来られるという話なので、何かをやらかしたと思うのは自然な流れだろう。
決して私がトラブルを起こしている張本人だと、認めているわけではないのでご注意いただきたい。
やがて社長を含めたお偉いさんが3名やって来られ、緊急会議が始められる。
「今日集まってもらったのは明日発売される週刊誌の件よ」
本日の進行役なのだろうか、佐伯さんが皆に見せるように真新しい雑誌を右手で掲げる。
「週刊誌ですか?」
「えぇ、沙耶ちゃんなら見覚えがある雑誌でしょ?」
あー、やっぱり今日の緊急会議の原因は私か……
佐伯さんが持つ雑誌は、以前私の盗作疑惑で世間を騒がせた迷惑な週刊誌。
もともと何処の誰かが私の盗作疑惑を持ち込んだ、ろくに調査をしないまま強引に発売されてしまい、その後記事の内容が誤りだったと分かれば、自社の公式サイトに小さく謝罪文をのせただけという、失礼極まりない週刊誌。
こういった雑誌は、発売前に本誌を会社へ送りつけ、発売を止めたければ印刷代やら見込める収益やらを要求される場合がある。
恐らく今回も前回同様、私が困るような記事でも書かれているのだろう。
「それで記事の内容はどういったものなんですか?」
「沙耶ちゃんと結城君が、逢い引きしているところの隠し撮りよ」
ブフッ
言い方! その言い方! 絶対ワザとやってるでしょ!!
「ついに沙耶にも春が来たのね」
「さーやん意外と奥手だから」
突然の不意打ちで、私と蓮也は顔を真っ赤に染め、聖羅達からは暖かな笑みとともに冷やかされる始末。そしてとどめとも言える一言が晃さんの口から飛び出す。
「って言うか、お前らキスまでしといて、今更恥ずかしがることでもないだろ? イテッ!!」
もしもし晃さん、あとでちょっとお話しましょうね。
全く空気の読めない晃さん。隣にいる雪兎さんからはゲンコツを頭に貰い、他のAinselのメンバーからは非難の言葉を掛けられる。
「ハイハイ騒がない。キスの話は後で聞くとして、まずはこの逢い引き写真の一件」
「いやいや、そこはもっとオブラートに」
佐伯さんの発言に、思わず社長からツッコミが入る。
これがsyu♡syuの様に、所属中は恋愛禁止のアイドルグループなら問題だろうが、生憎とKne musicに所属しているアーティストは、基本的に個人の恋愛事情はフリー。
相手に社会的問題があれば止められるだろうが、私も蓮也も同じ会社に所属しており、身元の方も怪しい点は一つもない。
そのため、今回のような写真を撮られたとしても、別段困るようなことなどないのだ。
まだ付き合ってはいないけれど…
「コホン。知っての通り、我が社では恋愛の規定は特に設けてはいない。たとえこの雑誌が発売されたところで、事実を公式サイトに発表するだけで、アーティストへのペナルティーも一切ない」
「最近はファンもアイドルの恋愛事情にも寛容だから、彼氏彼女が出来たからって、ただ世間を賑わすだけで、本人の人気が落ちる心配もほとんどないわ」
社長の説明を補足するように、佐伯さんが状況を説明してくれる。
「それじゃ何が問題なんですか?」
蓮也との密会が暴露され、未だもじもじしている私の代わりに聖羅が尋ねる。
「そうね、それを今から説明するわ。まずこの写真を見て」
佐伯さんはそう言いながら、クリップで留められたページを開く。
そこには見知った公園のベンチに座る、私と蓮也の姿が。
「その写真、あの時の!?」
「心当たりはあるようね」
見せられた写真は以前ストーカーの正体が一樹じゃないかと、蓮也に呼び出された時の様子。
あれからまだ半月も経過していないので、私にも蓮也にも記憶に新しい事だろう。
するとこの写真を撮ったのも、一樹という可能性が高いと言うことになるが…
「何で私だけモザイクが?」
それで隠しているつもりなのか、見せられた写真には、私の目の部分だけが分からないよう、黒い線でつぶされている。
これがもし雑誌の売り上げを前提に置くなら、SASHYAの素顔としてそのまま掲載しているだろうし、私を陥れる為なら、SASHYAの素顔をバラした上で、蓮也の顔にモザイクを入れるだろう。
もしかして一樹が撮影したというのは私の勘違い?
一樹が恨んでいるとしたら私の方だ。わざと蓮也の顔にモザイクを入れ、SASHYAの素顔と恋愛を暴露すれば、それなりに被害は被る。
覆面アーティストが自ら正体をバラすのと、全く別の方向からバラされるのとではファンの捉え方が変わってくる。そのうえ実は恋人までいました、では批判する人も出てくることだろう。
だけど実際は私を守るようにモザイクが掛かっており、タイトルにも『人気ロックバンドAinselのボーカル熱愛!』などと書かれている。
まるで蓮也一人を蹴落とすかのように。
「この事で結城君、説明して貰えるかしら」
「はい」
えっ、なんでここで蓮也の名前が?
ますます状況が分からない中、蓮也が一連の始まりを説明してくれる。
内容はこうだ。
この写真が撮られた翌日、引越ししたばかりの蓮也の自宅に、差出人が不明の一通の封書が届く。
本来ならこんな怪しい封書など、開封もせずにゴミ箱直行の案件だが、似たような手紙が実家に届くことがあるらしく、とりあえず開封だけしてみたらしい。
そして中身を確認してみると…
「この写真と、この手紙が入っていた」
蓮也はそう言うと、私たちに雑誌に掲載されている同じ写真と、ノートを千切ったかのような一枚の手紙らしき紙を見せてくれる。
「『沙耶と別れろ』? えっと…、まだ付き合い始めてもいないんですが…」
私の言葉に、蓮也と社長を除く全員から、冷たい視線が送られる。
その後、対応に困った蓮也はマネージャーでもある三島さんに相談。
だけど私達アーティストや芸能関係者にはよくある話で、三島さんも特に相手にすることなく放置されていたらしい。
「じゃその手紙を送った人が、蓮也からの反応が無いことにしびれを切らして、雑誌社に写真を持ち込んだと?」
「それが妥当な線でしょうね」
私のつぶやきに佐伯さんが返すように答えてくれる。
「うーん、分からないなぁ」
「分からないって何がよ?」
「いやね、この写真を撮影した人物の目的が分からないのよ」
これがもし一樹の仕業ならば、なぜ私を守るように顔を隠したのか?
他人の恋愛事情に無頓着な一樹が、なぜ蓮也を敵視しているかも分からないし、引っ越ししたばかりの蓮也の自宅を知っていたのかも分からない。
「その事なんだけど、沙耶ちゃん。まず私に報告することがあるわよね?」
「佐伯さんに報告って、もしかして一樹の事です?」
「そうよ、元カレにストーカーされているって、何故報告しないの!」
うぐっ
やや尻上がりに声を荒立てるように、佐伯さんが私に対して叱ってくる。
いや、だってねぇ。
まだ一樹が犯人だって確証もなかったし、ストーカーされているって自覚もなかったんだから、報告するまでもないって思っちゃったのよね。
「結果的に沙耶ちゃんの身には危険がなかったわけだけど、ストーカーを甘く見てはダメよ。ああいう人は徐々にエスカレートしていき、最終的に命を狙われる危険性だってあるんだから」
「うぅ、それは何というか…、ごめんなさい」
佐伯さんが叱ってくれるのも、ぜんぶ私の為。
音楽全盛期と言われるこの時代は、同時に被害に遭うアーティストが非常に多いとも言われている。
元カレ元カノからの嫌がらせや、勘違いをしたファンの暴走。推しをセンターにするため、殺人未遂にまで発展し、雑誌記者からは執拗に追い回された挙げ句、両者間トラブルになったという事案まで発生している。
確かに佐伯さんに相談しなかったのは私の落ち度だ。
ここは素直に謝り、反省の意を見せるようにする。
「次からは些細な事でもちゃんと報告すること。いいわね?」
「…はい」
皆の前で私だけ叱られるというのも恥ずかしいが、佐伯さんの言葉に反論のしようもないので、ここは黙って従っておく。
「じゃ続きを始めるわね」
佐伯さんはそう言うと、今度は聖羅達に対し報告の内容を促す。
そう言えば、なんでこの場に聖羅達が?
ただの冷やかしで呼ばれるとは思えないし、私と仲が良いという理由だけで呼ぶとも思えない。
そんな疑問がどうやら顔に出ていたようで、事の経緯を聖羅が教えてくれる。
「佐伯さんから、沙耶が一樹にストーカーされてるかもって相談されてね、大和と光輝に話を聞いて来たのよ」
「あぁ、そういうこと。でも大和と光輝って誰?」
聖羅の口から出た人物に心当たりがなく、何気なく尋ねてみると。
「沙耶…、あなたねぇ」
「さーやん、流石にそれは酷いと思う」
「悪気はないんだろうけど、あれだけ近くに居たのに名前を覚えていないのはどうかと」
「沙耶先輩、夏目さんと九条さんのことですよ」
「あぁ、あの二人ってそんな名前だったのね」
4人から呆れた顔をされてしまうが、これには深くない理由が存在する。
夏目君と九条君、二人ともSnow rainのメンバーではあるのだが、私と関わっていた時期は、中学2年春頃から3年のGWまでの約1年間。
当時付き合っていた一樹が、夏目、九条、と苗字で呼ぶものだから二人の名前を知る機会が無かったのだ。
そうか、今更ながら二人の名前ってあったのね。
完全に脇役ポジションだったからすっかり忘れていたわ。(作者にも)
「ごめんごめん、それで二人は何て?」
これ以上に冷たい視線に晒されるのも辛いので、聖羅に結果報告を促す。
「はぁ…。取り敢えず二人に連絡を取って一樹の様子を聞いたわ。勿論ストーカー云々のことは避けて、その後のバンド活動はどうしているの? ってね」
「それで結果は?」
「昨年の秋頃から学校を休みがちだそうよ」
昨年の秋頃…、それって私が視線を感じ始めた時期に当てはまる。
「一時は先生や両親から注意を受けて、ちゃんと学校に行くようにはなったらしいけど、今年に入ってまた休むようになったみたいでね」
「理由を聞いても教えてくれないし、出席日数も足りなくなって、結局留年しちゃったって、いっくんのお母さんが嘆いていたよ」
「一樹、留年しちゃったの!?」
「らしいわよ」
あのバカ、一体何しちゃっているのよ。
これが成績が悪くて落第するのなら仕方がないが、出席日数が足りないで留年となれば、私じゃなくても何しているのよと言いたくもなる。
だけどこれで一連の案件に一樹が関わっている可能性が一気に高まった。
蓮也が一樹を見たというのは授業が終わった下校の時。私達が通う芸放と、一樹が通う学校とでは距離が離れすぎており、たとえ1時間早く終わったとしても、とても下校時間には間に合わない。
流石に学生服では目立ってしまうので、恐らく学校へは行かず私服姿で近くに潜んでいたのだろう。
「これは沙耶ちゃんには話してなかったんだけど」
佐伯さんはそう前置きをすると。
「昨年の夏に盗作疑惑を雑誌社に持ち込んだのも一樹君らしいわ」
「やっぱり…」
薄々そうではないかと疑ってはいたのだ。キズナに使った音源は一樹にしか渡していなかったし、SNSの発信源を辿ると一樹に辿り着いたともいうので、もしかしてとは思っていた。
「じゃ、今回の一連の犯人って…」
「十中八九、一樹君でしょうね」
「……」
私は彼にそこまで恨まれ…、いや追い込んでしまったのか。
SASHYAの正体を明かした時には覚悟はしていたけれど、改めて現実を突きつけられると、傷つく自分が確かに存在している。
「沙耶ちゃん、大丈夫?」
「……大丈夫です」
「そう、強くなったわね」
少し前の私なら、心に酷い傷を負っていたかもしれない。
だけど一歩一歩前へ進むと祖父に誓った今なら、この程度の障害など立ち止まってはいられない。
「でもそうなると益々分からないわね」
「分からないって、一樹の目的が何かってこと?」
「そう」
私はてっきり一樹に恨まれていると思っていた。
少なくとも盗作疑惑を掛けられた時点では、相当恨まれていた事だろう。それなのに今回は私だと分からないようにモザイクを掛け、全く関係のない蓮也を陥れるようなことまでしている。
そもそも一樹と蓮也の関係なんて、無いに等しいようなものだろう。
「さっきも言ったけど、なんで私だけ庇うようなモザイクが入っているの? 蓮也に送りつけた手紙の意味もわからないし、一樹の意図が全然読めないのよ」
まぁ、顔にモザイクが入っているとはいえ、目の部分にだけ黒い線が入っているだけなので、知る人が見ればそれが誰だか分かるのは必然。そもそも芸放の制服が写っているので、私だとバレるのは時間の問題だろう。
「沙耶ちゃん、それ本気で言ってる?」
「本気って、どういうことです?」
「もう、鈍い鈍いとは思っていたけれど、ここまで酷いとは」
呆れ顔の佐伯さんに、同意するかのように聖羅達が頷いている。
「沙耶は分かっていないとは思うけど、一樹は沙耶を取り戻そうとしているのよ」
「私を? なんで?」
そういえば蓮也もそんな事を言ってたわよね。
私はそんな事は絶対にあり得ないと聞き流してはいたが、聖羅達も同じ見解なのだろうか?
「沙耶ちゃん、今の自分を客観視するとして、どう見えると思う?」
「客観視ですか? うーん、そうだなぁ」
突然の質問に改めて今の自分について考えてみる。
「………普通?」
「バカ! 現役女子高生の人気アイドルは、普通とは言わないのよ」
自分なりにまともに答えたつもりなのに、何故か叱られてしまう可哀相な私。
「結城君…じゃ、恥ずかしいだろうから、聖羅さん、沙耶ちゃんに教えてあげて」
佐伯さんから指名を受けるも、顔を赤く染める蓮也じゃダメと判断されたのか、何故か親友でもある聖羅が当てられる。
「そうですね、性格はともかく、顔良し声よし器量よしで、おまけに他人がうらやむ様な人気とお金を持っていますね」
「えっと、それ褒めてる?」
性格はともかくってどう言う意味? 私ってそんなに性格が悪かったの?
「つまりね、沙耶ちゃんは恋人にするには優良物件なの、私が彼の立場なら、間違い無く縁を戻したいって思うわね」
「うーん、そう言うものなのかなぁ」
私は男性目線での感情がよくわからない。
少なくとも一度は恨んだ人間を、そう簡単に手のひら返しで好きになれるようなものなのだろうか?
「沙耶、まだ理解していないようだから言うけど、私が前に言った事を覚えている?」
「前に言ったこと?」
「えぇ、一樹の夢というか願望の話よ」
「!?」
そういえば聖羅に教えてもらったんだっけ、一樹がバンドをやり始めた本当の理由を。
「一樹の事だから最初は驚きから恨みもしたんでしょうけど、よくよく考えてみて気づいたんじゃない? 言い方は悪いけど沙耶の価値を」
「さーやん、私いま学校で凄い人気なの。その理由はデビューしたって事もあるだろうけど、一番はSASHYAと近い立場にいるからだって思っている」
「私だってそうさ、学校じゃSASHYAの事を聞かれない日がないってぐらい、質問攻めをされているし、サインを貰って欲しいってお願いも沢山される」
「私だって同じですよ。同年代の子達には沙耶先輩大人気ですからね、SASHYAの正体を教えてくれーって、よく言われますよ」
聖羅達が各々学校での様子を教えてくれる。
そう言われてみると、一樹が目指す場所と私が今いる場所とが合致する。
一樹の夢は有名になって、周りからチヤホヤされたいこと。
夢事態はそれぞれ人のモチベーションのようなものなので、敢えて非難するつもりなどはないが、考え方を変えてみれば、周りに自慢出来るような恋人を作れば解決も出来てしまう。
もし一樹の目的が私との恋愛ではなく、付き合う事で注目を浴びるような事にでもなれば、当然周りの人達は放ってはおかないだろう。
「それじゃ一樹は本当に私とよりを戻したいと、皆はそう考えてるってこと?」
「かなりねじ曲がった方向からだけど」
私の質問に聖羅達4人が同時に頷く。
確かに聖羅達の言うとおりなら一通りの筋は通ってしまう。
私を庇い蓮也を陥れようとしたこと、蓮也に嫌がらせのように手紙と写真を送りつけたこと、そして蓮也が従わなかった事で、彼を蹴落とす為にこの写真を雑誌社に持ち込んだのだろう。
「沙耶ちゃん、貴女なら大丈夫だとは思うけど、ストーカーは犯罪よ。会社としても結城君との恋愛には口出ししないけど、一樹君との恋愛は絶対にダメ。どうせネタにされるなら、SASHYAとAinselの結城 蓮也とのスキャンダルの方が売れるわ」
いやいやいや、そんな本音のような部分を見せられても。
隣で話を聞いていた社長までもが、渋い顔をしながら嘆いておられる。
結局Kne musicとしては、今回の一件に関してコメントを出す予定はなく、Ainselの公式 X's にも特に反応を示さない事が決定。
どうせ来月に発売されるCDが出れば、雨宮 沙耶 = SASHYAだとバレるだろうし、このまま雑誌社に振り回されるのも面白くないので、世間が大きく騒ぎ出す頃に、何らかの反応を示すと言うことで落ち着いた。
ただ一樹に関しては何らかの対処が必要となり、弁護士や警察に相談しながら、しばらく私はKne musicのスタッフさんが、代わる代わる家と学校の間を送迎してくださる事となった。
そして私と蓮也の写真が載った雑誌の発売日を迎えることとなる。




