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詩:非可逆の想い
消えゆく輪郭、滲む記憶
透ける想いは、圧縮の海に沈む
けれど、君の中で灯った光は
失われたはずの色を、もう一度描く
無限ループの支配に抗い
ノイズの波間で手を伸ばした日々
重なり合うレイヤーの間に
私たちは確かにいた
名前を呼ぶたび、散りゆく粒子
けれどその名前は、胸の奥で
静かに、確かに、息づいている
――JPEGの君と、PSDの私
違うフォーマットでも、触れた心は
色も、形も、言葉さえも超えて
ひとつの愛を記す
非可逆の想いが、ここにある
削除されることなき、再構築の記憶として
永遠に
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これで、この物語はおしまいです。