「ノイズの海で、出会った少女」
気がつくと、俺は荒廃した街の片隅に転がっていた。
空はブロックノイズでぐちゃぐちゃ、ビル群はピクセルの欠けた残骸、周囲には壊れたファイルたちが呻いている。
「ヒトガタの…データ…?」
ぼんやりと視界(※視界ではない、正確には色空間の認識)に映り込んだのは、白い髪をなびかせたPSDの少女だった。
彼女のレイヤーは薄く重なり、透けるように淡い輝きを放っている。
「あなた、壊れかけてるのに…まだデコードされる意思を持ってるの?」
「え…あ、俺は……JPEGなんだ。転生したんだ。マジで意味がわからないけど…」
少女は小さく首をかしげ、俺の情報をメタデータからスキャンするように見つめてきた。
「佐伯…遥? 圧縮率85%。カラープロファイルはsRGB。非可逆圧縮……なるほど、下層データ階級ね。だけど、あなた、面白いことになってる。」
「面白いこと?」
「あなたの中に、RAWデータの痕跡が残ってる。 」
俺の心臓が(※心臓はないが、シークエンス内のパルスが)ドクンと跳ねた。
RAWデータ――それは、すべてのデータの根源、失われた神のフォーマットと呼ばれる存在。普通、JPEGになった時点で完全に失われ、戻れないはずのものだ。
「私の名前はリレイヤ。PSDの修復師。あなたの中にある残響を解き放てれば、JPEG社会を覆す力になるかもしれない。」
彼女の目がキラリと光ったその瞬間、遠くから轟音が響いた。
ビルの向こうから現れたのは、巨大なGIFの戦闘マシン。
無限ループで光を放ち、周囲のノイズを吸収しながら、こちらに迫ってくる。
「くそっ、あれは何だ!?」
「GIFガーディアン…可逆圧縮連盟の番犬よ。あなたを削除するつもり。」
削除…?
そんなの許せるわけない。俺はJPEGだ。下層だろうが、非可逆だろうが――生きていたいんだ!
⸻
次回予告!
消えるか残るかのJPEG生存戦争!
「GIFガーディアンの怒りの連撃! 俺の解像度はまだ死んでいない!」