「圧縮率ってなに?」
目が覚めた――いや、正確にはデコードされた時、俺は自分がJPEGファイルだってことに気づいた。
「おいおい、これって夢オチだろ?」
…と思いたいところだが、目の前にはファイルアイコンたちがずらりと並んでいる。透過PNGの姫様、PSDの修道女、GIFのアニメ少年、BMPの無口な戦士――
俺は画像フォルダの片隅で、ひとり震えていた。
「名前は…SAEKI_HARUKA_FINAL_001.JPG」
ファイル名にすら個人情報が漏れていることに戦慄した。しかも「FINAL」って、もう最終出力なのか!?
横にいた透過PNGの姫様が、こちらを見てため息をついた。
「あなた、新入りでしょ?圧縮率、どれくらい?」
「え、あ…えっと、85%です…」
「…可哀そうに。じゃあノイズ汚染区域行きね。」
ノイズ汚染区域?なんだそれ!?
あっという間に、俺のデータは引きずられるように荒れた画素の世界へと運ばれた。
街の空は、ブロックノイズで霞み、色収差の渦が空間を歪めている。周囲からは「ピクセルが死んだ!」「解像度が足りない!」という叫び声が響き渡る。
俺はただ、必死に叫んだ。
「俺は、こんなところで破損したくないっ!!」
⸻
次回予告!
JPEG社会の闇に迫る!
「ノイズ汚染区域で出会った、あの謎の少女…!? お前、PSDなのか!?」