第一章 嘘でしょ
「きもちわるっ」
雪が降り始め、少しずつ積もり始めた十二月十五日。朝からクラスメートは私に罵詈雑言を浴びせる。
私の名前は坂本こころ。海浜中学校に通う普通の中学三年生……のはずだった。
1
「お母さん、ちょっとひまわり公園まで遊びに行ってくるね。」
「分かったよ。三時までには帰ってきてね。」
「はぁい」
私はウキウキな気持ちを抑えて、急いで玄関に向かった。
そして、ピンク色でマジックテープの先にかわいい熊がついている靴をはいた。私のお気に入りの靴だ。
外に出たら狭い物置に上半身だけをつっこみサッカーボールを探す。
「あった」
物置にあったサッカーボールを右脇に挟み、ひまわり公園を目指す。
「ひまわり公園はあっちかな。」
走っているとすぐに公園は見えた。
「あっ。公園見っけ。あとはここの道路を渡るだけ。」
私はそう言うと同時に右手で公園を指差す。
すると、ボールはコロコロと道路に転がっていった。
私は「まずい」と思い、すぐにボールを追いかけた。
その時、私は周りなんか気にしていなかった。
「キキーン」
「えっ。」
コンクリートに私の体が思い切り打ちつけ
る。
「ドンッ」
痛い。すごく痛い。全身が痛い。
周りが徐々に暗くなっていく。
(何か聞こえる。)
「大丈夫ですか?大丈夫ですか?」
「や………」
私は意識を失った。
2
「うっ、んんっ。」
(あれ……私、寝てたのかな?)
私はゆっくり目を開けた。
天井は真っ白、ベットはいつもより広くて、左手には大きな窓がある。また、周りは白いカーテンでおおわれていて、頭の近くには少し薄い茶色の棚がある。その上には小さいテレビが「ポツン」と置いてある。
すると、カーテンが「ガシャン」と音を立てて開いた。
そこには綺麗な女の人が立っていた。
肌は白く、髪は腰の少し上まであり、しばっていないストレート。さらに大きな瞳に薄い唇、そして年齢は三十代前半ぐらい。服は全て白い。また、白い帽子のようなものも被っている。
私はその時ようやく気づいた。
(ここは病院でこの人は看護師さんだ。)
そう思っているのも束の間。
「こ、こころちゃん!大丈夫?ここどこか分かる?」
看護師さんはすごく焦った表情で床に膝をつき、私の両肩に両手を置いた。
「分かります。ここは病院です。」
「はぁ、よかった。私の名前は出水優花よろしくね。」
「こんにちは、ゆかさん。ところで私はどうして病院にいるんですか?」
私は今一番気になっていることを聞いた。
「そうね、説明しなきゃ。落ち着いて聞いてね、こころちゃん。こころちゃんは道路で車に……轢かれたの。」
(えっ。)
ゆかさんは確かにそう言った。「轢かれた」と。
私はその時頭が真っ白になった。
「えっ。轢かれた?」
私はなにが起きているのか分からなかった。
「どういうことですか!」
私は大きな声でそう言った。
そして、ベッドから体を出して思い切り降りようとした。
その時、
「ドンッ」
私は体勢をくずし顔から床に落ちてしまった。
「痛っ!」
「大丈夫!?」
ゆかさんはすぐに私の体を抱き上げベッドに戻してくれた。
幸い頭に少したんこぶができたぐらいですんだ。
しかし、私はあることに気づいた。
「ねぇ、ゆかさん。私、足が……動かない。」
「……」
ゆかさんは黙った。
「ゆかさん…私、足が動かない!どうして!?」
私はもう一度大きな声で聞き返した。
するとゆかさんはこう言った。
「そうなの。こころちゃんもう一度落ち着いて聞ける?」
私はそう聞かれ落ち着いていられる自信がなかった。
しかし、話を聞きたかったので私は「聞けます。」と答えた。
するとゆかさんはゆっくりと口を開いた。
「こころちゃんは車に轢かれて下半身不随になっちゃったの。」
私は質問した。
「えっ。なんですか。それは…」
「もう二度と足が動かないわ。だから一生車椅子で生活するの。」
私はまた頭が真っ白になった。
(二度と歩けない?一生車椅子?嘘でしょ?)
私は信じられなかった。でも本当に足が動かない。
私は泣きわめいた。落ち着いてなんかいられなかった。
しかし、ゆかさんは優しかった。
「辛いよね。」
と言い、私を抱きしめてくれた。
私も「ぎゅっと」抱きしめた。
これは、私が小学二年生の頃の話だ。
初めましてm(._.)m鋤沢輝と申します。
この作品は僕のデビュー作になります。
第一章はいかがだったでしょうか。
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質問はできる範囲で答えたいと思います。
第一章では、主人公である坂本こころの過去を描かせていただきました。過去の話なので、まだまだ始まったばかりです。
第二章では、「今」の坂本こころを描きます。
第二章もぜひ見ていってください。
よろしくお願いします。