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喫茶 MADOROMI  作者: アリエス
2023年3月から…
9/23

2023年5月1週間目

2023年5月1週間目。桜花の時期が終わり、新緑が萌える水曜日の昼下がり。私は実家に来ていた。母親が隣の県にある、苺が欲しいと言い出し、私は母親を連れて、ドライブがてら苺狩りへと向かっていた。隣の県に行くには、峠越えになる。気圧の変化に敏感な私には、少し苦手だ。両耳が塞がる感じ。アップダウンが激しく、急カーブもあり、幾つものトンネルを抜けて行く。母親は余程楽しみにしていた様で、車の窓から見える景色を運転中の私に逐一報告してくる。

「見てみて…アソコの木の枝折れてる。雪で折れたのかな?…あそこの薮、わらび出るんだね。ロープが張られてる…。」

山育ちの両親はとにかく、この時期になると落ち着かないのか、山菜の話題が尽きない。実家ではこの時期を境に、沢山の山菜料理が出てくる。たらの芽、コシアブラ、わらびに、ウド…。とにかく、山菜がメインになる。かと言う私は、景色が見たくても運転中でよそ見出来ず、相槌をうつのみ…と…川に掛かる橋の欄干にちょこんと座っている…あれは…猿!?私はびっくりして思わず叫んだ。その声に反応した母親が、笑いながら

「山だもの猿くらいいるよ。鹿に狸に猪…」

確かに山の中の道路だけど…。そう思いながら運転し、お目当ての苺農園に着いた。料金を払い、ハウスの中に入ると、甘い香りと赤く沢山実っている苺たち…白い可憐な花もあり、その花にミツバチが蜜を吸いに来ている。

「可愛い…」

小さな羽を目いっぱい羽をばたかせ、せっせと蜜を集めると同時に受粉していく…。ここ苺農園は取れた苺を使い、ジャムや紅茶なども販売している。店員さんが私に手渡した案内の用紙…。ここで栽培した苺を近くのカフェにて、お菓子にして販売していた。そういえば、あったなぁ…あの辺に…名前忘れたけど。…私は先週の出来事を思い出していた。初めて”あのお店”…喫茶店の名前を知ったのは先週の事。

「すみません…”お店”のお名前教えて貰えませんか?」

この”お店”…喫茶店には看板が無い。ドアに開いてる事を知らせる吊り看板のみ。”お店”入ってから、喫茶店だと知った。マスターは”ちょっと待ってね”と話すと、カウンター内の棚に置いてある、小さな金庫に手を掛けた。”ガチャ…カシャン”

金庫の蓋を開け、ゴソゴソと何かを探してる…

「あ、あの…」…私が声をかけると同時に”あ、あったあった…”…マスターは1枚の紙を手に取ると、振り返って私に”はい”と手渡した…。マスターから受け取り、目を通す…”喫茶・MADOROMI・店主…”

シンプルな名刺…。しばらく貰った名刺を見ているとマスターが金庫の蓋を閉めながら、「この”店”の名前を聞いたお客さんは君で何人目になるかな」…マスターは私を見ながら、

「君は桜の時期より少し早めにこの”店”に来たからなぁ…」

この意味深な言葉に私はびっくりして固まった。

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