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喫茶 MADOROMI  作者: アリエス
2023年3月から…
3/23

2023年3月3週間目

2023年3月3週間目の月曜日。私は届いた離職票を手に、とある公共施設に来ていた。ここは、職を失った人達が集まる場所。失業保険の手続きに来ている。自己都合の退職だから、保険が支給される迄、早くとも2ヵ月は掛かるし認定の為に、何回かこの施設に来なければならない。最初の手続きが終わり今回で2回目。職員さんと面談。

テーブルを仕切りされた狭い席…。

「何かして見たい仕事はありますか?」と…。

特に何かしたいとかは無く、だからと言って”無職”とは言ってられず、私は頭を悩ませていた。何か1つでも、秀でた物があれば、まだ違うのだけど…

お金が必要だった私は、大学や専門学校には、進学せず、高校を卒業してすぐに就職した。

「今は特には…。」

面談が終わり、施設内の駐車場に停めてある車へと向かった。車に乗り込み、運転席に座ると同時に大きなため息が出た。

「…身体さえ…壊さなきゃなぁ…。」

しばらく運転席で休んでいた。

別に”仕事が”嫌いになって辞めた訳じゃない。どちらかと言えば、”人”で辞めた。

職に付いてた頃は、言わゆる”寝に帰る”生活を送っていた。職場とアパートの往来。

「生活の為とは言え、キツいなぁ…。」

いつの間にか趣味の読書もせず、生活の為に必死に働いた。とは言え、”仕事”に不満があるか?と上司に聞かれれば「無いです。」と答えた。強いて言うなら、”人”にある。以前、元同僚から、

「人なんて何処の職場でも同じ。だけど、”あれ”じゃぁなぁ…。」

と零していた。

”あれ”とは同じチームのリーダーの事。その人は私が入職して4年目の春に入ってきた。私よりずっと歳上の彼女は入職2年目にチームリーダーとして抜擢されたが…。彼女が居るだけでチームの雰囲気が変わる。良い方に変わればまだしも、悪い空気が漂う。私は常々、思っていた。

「…面倒なタイプだ。関わり合いたくない。」

そんな中でも日々業務をこなしていたけど、とうとう身体が悲鳴を上げた。

そして勤務最終日にお別れの花束を渡された時、ふと彼女を見た。今でもその顔が忘れられない。嬉しそうな…その顔を…。今だに脳裏に焼き付いて離れないあの顔つき…。

「…さて…帰るか…。」

施設を後にした。

翌火曜日。私は実家に向かっていた。今日は、母親の受診の送迎。母親は定年退職後、身体を壊した。手術を受けて、追加治療もして、何とか命は取り留めたものの、こうして定期的に受診が必要だった。実家に着き、母親を迎えに行く。玄関のドアを開けて靴を脱いでリビングへ向かう。

「おはよう。準備出来てる?」

リビングの炬燵に座り新聞を読んでいた母親。

「おはよう。トイレにいってから、行く。」

老眼鏡を外し、テーブルに置いて、トイレへ立つ。用を済ませ戻ってきた母親を車に乗せて病院に向かう。車の窓から景色を見ている母親。

何を思うかは分からない。だけど、複雑な表情をしている。病院に着き、受診して、昼前には実家に着く。私は母親にちょっと行くところがあるからと言って、母親を車の中から見送った。母親が家の中に入ったのを確認して車を走らせた。

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