68-ピャーチ
「私はピャーチルド・アイスバーグ。歳はアルと同じ15歳。みんなからはピャーチって呼ばれてる」
・・・・・・同い年なんだ。
次に自己紹介したのは白髪の青年。座高も高く顔だちもキリッとしていて大人といった雰囲気だがまだ成人前らしい。童顔のアルとは大違いだ。ついついアルとピャーチを見比べてしまう。
「なんだよ」
「なんでも」
アルに気づかれ、すぐ目を背ける。実年齢よりも幼いアルと実年齢よりも大人びているピャーチ。とても同い年とは思えなかった。
「そして、ラトナブルグの王子」
「「王子!?」」
ナナとティーユはピャーチの身分に驚く。
知らない国だが王子だ。てっきりここの領地の貴族と思っていたら王族。もっと位の高い人であった。
ラトナブルグという国についてノインが教えてくれる。
「ラトナブルグは大陸最南端にある小国。だから、王子だけどそんな畏まらなくていいわ」
「国土だけでみたらかなり広いよ」
「人住んでるところは少ないだろ」
ラトナブルグは大陸最南端の国。寒さに厳しく1年中雪が解けない地域もあるらしい。だから、国民はほとんどが国の北側に住んでいるそうだ。
「ラトナブルグといえば氷だな」
「ああ、氷は国の資金源であるね」
ラトナブルグは氷の名産地。寒い地域を活かしてあらゆる国に氷を輸出しているそうだ。特に帝国は暑い国。ラトナブルグの氷は高級品だ。
「ティーユは僕とノインの弟弟子だから。ナナは気軽におじさんって呼べばいいよ」
「やめてくれ」
アルと同い年なのだ。いくら大人びていてもおじさんという見た目でもない。ピャーチも呼ばれたくないようですぐに拒否する。
「お兄さんと呼んでくれ」
ピャーチは素早い動作で膝をつき、ナナの手を掴みそう言う。
「やめなさいロリコン」
「うっ」
ノインはピャーチの腹に蹴りを入れた。
・・・・・・兄か。
兄弟がおらず一人っ子で育ったナナは兄というものに憧れがあった。だから、呼んでみることにした。
「よろしく、ピャーチお兄ちゃん」
「あっ、なんという甘美な響きだ。いい、いい」
ピャーチは兄と呼ばれたことが余程うれしかったのか恍惚した表情を浮かべる。若干気持ち悪い。
「黙りなさいロリコン」
「ナナ、絶対お兄ちゃんなんて呼ぶなよ。分かったか」
「う、うん」
兄というものに憧れがあるがあんな表情をされるのは嫌である。ナナはピャーチと呼ぶことに決めた。
「それで、お前たちは何しに来たんだ」
ルーシが飲んでいたカップを置きそう尋ねる。
「ちょっと皇室に狙われて」
「帝国にいれなくなったから来ちゃった」
「帝国皇室だと!?」
ルーシもトゥーリもピャーチも驚く。皇室に狙われたということは帝国貴族全員に狙われると言っても過言ではない。大陸最大国家に狙われたことは相当驚くことであった。
「おほん、人払いを」
咳を入れて落ち着くとルーシは人払いをさせた。部屋に残ったのは座っている7人。ナナ、アル、ノイン、ティーユ、ルーシ、トゥーリ、ピャーチだけだ。
「今度は何をやらかした?」
「ダイヤモンドになったの」
ノインは首にかけてあるネックレスを取りみんなに見せる。
「ダイヤモンドの冒険者を取り込もうとしたのか」
「ええ」
「どうして断るのですか。貴族になれるのは名誉なことじゃ」
貴族とは特権階級の者たちだ。権力を持ち、金を持ち、魔力を持つ。大抵の平民からしたら怖い存在であると同時になれるものならなってみたい存在でもある。平民から貴族になることは大変名誉なことだ。
「この2人からしたら貴族になってもデメリットしかないんだ」
「え?」
トゥーリはアルたちのことをよく知らない普通の貴族だ。だから、貴族になるデメリットがわからなかった。
「お金は十分ある。権力や責任なんかはいらない。土地に縛られて自由もなくなるし」
「それになったところで戦場をたらい回しにされるか子どもを産ませられるかでしょ」
強さを見込まれて貴族になるのだ。待っているのは戦場だ。
帝国は現在戦争をしていないが今後しないとは限らない。
自由を捨てて身分を上げることをノインは全くと必要としていない。
貴族になるメリットが全くとないのだ。
兄と呼ばれたいピャーチ。呼ばれた反応がきもくてすぐに呼ぶことを辞めました。