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8-召喚術

「では、魔術について教えましょう」


 領都ションディキュートから出て馬車に揺られながら旅をする2人。黒髪赤眼に一面黒の服装を纏った少年アルと銀髪赤眼、ロードから貰った下級貴族から平民まで着る帝国の伝統的なワンピースを着た少女ナナ。

そんな道中アルはナナに魔術を教えようとしていた。


「こんな御者をしながら教えれるの?」


 アルはナナと一緒に御者台に乗せて、運転中眠くならないよう隣で話し相手になって的な感じで魔術を教えようとしていた。


「まあ、今日は話す程度だから。本格的には始めない。ナナは魔術についてどれほど知ってる?」

「貴族と神官だけが扱える力で、民を守るため、土地を守るための力と習った」

「まぁ僕は貴族でも神官でもないけどね」

「あ!」


 そう目の前のこの男は平民なのに魔術を扱う。そして、父ガブリエルやロードよりも強い。ナナにはそのことが不思議だった。


「貴族と神官だけってのはまあ、間違いじゃないよ。魔術師の9割くらいは特権階級だし。魔術とは、生き物が持っている魔力という力を使って術式を発動すること」

「ひゃっ」


 ナナは後ろから頭を触る感触を感じた。後ろを振り返ると自信の背中から腕が生えている。アルを見ると右手がなくなっていた。


「こんな感じで不思議な力」

「驚くのでこういうのはやめて」

「ごめんごめん」

「じゃあ本当は誰でも使えるの?」

「うん、使える。どんな生き物でも、平民でも魔力があるから。だけど、魔術を扱うための教育を平民は受けられないから結局使えるのは貴族だけなんだよね」

「アルは平民なのにどうして使えるの?」

「それは、俺の先生が偶々魔術を扱えたから、俺も教育を受けることができました。運がよかったよかった」


 アルは笑いながらそう言ってくる。しかし、言葉とは逆に、悲しんでいるとナナは思った。


「そんな魔術ですが、大きく3つに分かれます」


 アルは指を3本立ててそう言った。


「まずは1つ目ナナのお父さんが使った召喚術。これは、封印された精霊や魔物を呼び出す術。召喚術を使う人は魔術を扱う人の1%くらい」

「質問いい?」

「どうぞどうぞ」

「ぱーせんと? て何?」

「え?」


 ナナは現在10歳。今まで友人達と野山を走り回ることばかりだった。教育なんてものは貴族として恥ずかしくもない立ち居振る舞い位しか受けていない。帝国で使われる文字や足し算と引き算はできる。だが、確率なんて分からなかった。


「えーと、100人いたら1人しか使ってない激レアな術ってこと」

「そんなに、難しい魔術なの?」

「いや、ただ単に不人気なだけ」

「不人気?」

「召喚するには召喚媒体が必要なんだけど、まずはそれを入手することから始まる。ただ、自分で封印することになると自分のレベルにあった魔獣を封印することになる。強い魔獣を封印しようとしてもうまくいかず殺される危険があるし、弱い魔獣なんか封印してもたいして戦力増強にはならない」

「弱くてもいっぱい召喚すれば」

「複数召喚ができればそれもありなんだけどねえ」

「できないの?」

「召喚術を使っているということは術式を一つ使っているということなの。だから複数の術式を同時に発動させないといけない。これがまた大変で大変で」

「じゃあ召喚術は弱い魔術と」

「うん。1から始めようと思ったらまず手を出すことはないね。だから、召喚術を扱う人は初めから強力な召喚媒体を持っている人たち。君の家のようにね」

「魔導書」


 ナナは魔導書フォービデンを思い出した。


「あれは相当強力なのが眠ってると思うよ。獄烙なんてものが封印されてたんだし。他にも頁があったからまだやばいのがいると思う」


 嫌な思い出だ。あれのせいでみんな死んだのだから。


「わたしはその召喚術を使えるようにならないとだめなの?」


 ナナはできれば使いたくなかった。自分の父を領民を殺したものが封印されているものを研究することなどいやだった。


「心情的には嫌だよね。あんなことがあったんだもの。僕的には正直どっちでもいいよ。君が召喚術について勉強しようとしまいと。僕は召喚術を教えれないし」


 そうだ、召喚術を使うのは100人に1人の不人気術なのだ。アルは使わないのだから教えれるわけない。


「じゃあ、どうやって勉強すれば」

「一緒に勉強していくしかないね。君の家の研究資料から」

「でも、あれはもう」


 置いてきた。ナナはあの家から何も持ちだしてきてない。


「あ、大丈夫。あそこの研究資料は僕の倉庫に入れてきたら。目的地についたらそれは返すよ」

「え?」


 アルは空間を繋ぐ魔術を使う。だから、貴重な研究資料はさっさと盗み出していた。


「泥棒」

「保護したと言ってほしい。どうせあんな田舎領主が差し押さえたって燃やされるか捨てられるかなわけだし、だったら僕が貰っておく方が資料たちも喜ぶってもんよ」


 それに、領主があの資料を調べれば獄烙(ごくらく)がアルボンドゥルグ家の研究してきた魔導書から出たと推測するかもしれない。そうなれば、帝国は魔導書を探すだろう。そんな危険な魔導書なんて管理下に置きたいはずだ。


「ありがとう」


 ナナは感謝した。あの家から何も持ちだせず出てきたと思ったのだ。だが、持ちだせたものがあった。あんな結果になってしまったものたちだが、父が残したものを捨てていなかったことがナナはうれしかった。


第2章スタート!

ナナはアルに魔力の扱い方をどんどん教えてもらいます。

まずは座学。説明回でごめんね。

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