大学行ってない私が考える「こんな学園祭体験したいよ」って話です
もうすぐ、時計は0時をまわる頃。
学校のコンピュータ室であたしはひとり、バチバチと孤独にキーを叩いていた。
夜が明ければ、学園祭の初日が訪れる。
我らがコンピュータ部は当然のように、何も準備をしてこなかった。
来訪者が適当にPCに触れるようにしといて、なんかOS付属のゲームとかやってもらう……そんな展示で良いだろうと、思っていたのである。
「まあよくよく考えたら、曲がりなりにもコンピュータ部。そこまで投げやりな話ってないよな」
あたしは苦笑交じりに独り言を零す。
結局、コンピュータ部として相応しい、遊べる感じのオリジナルゲームをプログラムで組むことにしよう……と、あたしは急にそう思い立ったのだ。
学園祭などという浮かれたお祭り騒ぎに身を投じられる経験は、この先もう何度もない。
だったら全力で楽しんでやったって良いだろう……なんて考え直したワケである。
ちなみにオリジナルゲーム1本仕上げちゃう計画を思い立ったのは、ついさっき。夕方頃の話だ。
もちろん部員はみんな帰った後なので、この計画はあたし以外、誰も知らない。
あたしだけがもう5時間ほど、ぶっ続けで突貫作業を行っている。
「んー、動かす部分は朝までにどうにかなるかな。キャラクターつくるのは時間的に無理ゲーっぽいから、適当に素材系から拝借しましょうかね――」
素材キャラクターだと味気ないが、背に腹は代えられない。
もっと早く思い立ってれば良かった……と少し後悔もする。
「……お腹空いたな」
日が昇るまでに完成するであろう算段が立ったところで、誰に言うでもなく呟く。
「外のコンビニまで行くのは時間かかるし……自販機のコーヒーでお腹満たすしかないか」
長丁場になると分かっていたのに、食料を準備しておかなかったのは完全な失態だ。
あたしはよいしょっと、席を立ち上がったのだが……そのときだった。
キィと、コンピュータ室後方のドアが開く音がする。
「誰?」
振り返ってみると、そこには同じコンピュータ部員のタクトが立っていた。
「あ、ごめん。ユカリさんがいるなんて思わなくて……。ビックリさせちゃったよね?」
コンピュータ部いちのイケメンは、どことなく嬉しそうに笑みを浮かべる。
手にはコンビニの袋が提げられている。中身は食べ物や飲み物のようだ。
「タクト君、こんな時間にどうしたの? 終電なくなるよ」
「実は……明日の文化祭までに何かやっておきたくなっちゃって……」
なんだ、同士じゃん。
あたしは自然と表情を綻ばせてしまった。
「タクト君って確かCG得意だよね。今から8時間でキャラクター5体と背景2枚……イケるかな? あと、その袋の中身、ちょうだい」
同士よ、一緒にこの刹那的な快楽を楽しもうじゃないか。