刀(中)
導入が雑
「やっと…着いた…!」
事件現場は見つけた。見つけたは良いが、やはり…
「警察は…いるよなぁ そりゃ…」
結構な大人数で辺りを調べている警察官達。遺体があるであろう場所は、ブルーシートで囲まれていて中を見ることは出来ない。
「茜なら姿を変えるか、姿を隠して調べられるんだろうけど……」
しばらくすると、大きな車からテレビカメラを携えた人達とアナウンサーらしき人が出てきて中継を始めてしまった。
どうする?意気揚々と家を飛び出してきたが、俺は犯人の手掛かりすら掴めていない。
携帯電話が震えた。ボタンを押すとニュースが流れ始める。警察関係者によると、今回も首が撥ねられていたらしい。
だったら……目的地を変更しよう。
上沢町と坂之平町。首切りの起きた2つの町の公園を見に行こう。
犯人は分からないが、おそらくあちらの世界の関係者。
ならば、警察には見えない手掛かりがあるかもしれない。
俺はスマホの地図を開いて、もう一度走り出した。
スマホを開いて時間を確認すると、午後3時を表示していた。
歩いて町に向かうこと。その大変さが嫌というほど身に染みた。
2つの公園を観察し終え、やっとの思いで泉町まで帰ってきたが犯人は見つからない。
成果は…あると思いたい。茜が言っていた魔法の反応は分からなかったが、何らかの結界が張られた痕跡は見つけた。だがそれ以外、何も見えなかった。
帰る途中、通り過ぎようとした空き地に気になるものを見つけた。
側まで駆け寄り、観察する。
「何かが埋まってる? これは…遊具の跡か」
この空き地は、もともと公園だったみたいだ。ここら辺は見た限り、人通りが少ない。使われなくなったから撤去されたのだろうか。
━━━気にする必要は無かったな。
家に戻る前に、もう一度あの事件現場に行ってみようか。
そう思いながらも、意識は別の事に興味を抱いていた。
ここは空き地。だけど公園。公園……?
何故だかそういう"直感"めいたものを感じて、空き地から出ようと動かす身体と足を急停止させた。
刹那、ヒュンッ と風を切る音が聞こえた。銀色に光る刃が目の前を、正確に言えばちょうど首の辺りを通り抜ける様を視た。
あと一歩踏み出していたら、この首は飛んでいたかもしれない。
「ちっ…!」
後ろに飛び退き、ポケットから取り出したナイフを握りしめる。
いつの間にか、空き地全体に透明な壁が張り巡らされている。
結界か…! いつ展開させられた?
突然、視界がぼやけ始めた。
魔力で作られた霧が辺りに充満している。
一般人が吸えば意識を失うぐらい魔力が濃い。
だがぼやけはすぐに消え、一定の範囲からも霧が消えた。霧に隠れて見えなかった、誰かの姿が現れる。
そこにあるのは、
すらりと長い刀を持った、着物姿の少女。
大人びた雰囲気だが、歳は同じか少し上か。
わざわざ姿を見せた理由は何だ?
焦る俺に対して、彼女は淡々と語り掛けてきた。
「私を、殺しに来たの?」
「…………………え?」
あまりにも唐突な質問に、直ぐには返せなかった。
「俺は……これ以上誰かが犠牲になるのは嫌だ。だから、止めに来た」
「……そう」
彼女は素っ気なく返すと、刀を構える。
「無駄な抵抗をしなければ、綺麗に痛みも無く撥ねてあげるけれど?」
「……さっき言っただろ。俺は君を止めに来たんだ。殺されるなんて御免だ」
彼女の目には、敵意も殺意も感じない。
殺すことはさも当然だと言わんばかりに、俺を見据えていた。
「じゃあ……」
「━━━━━始めましょう?」