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刀(序)
「事件が、起きたんだって」
電話で伝えられた内容を聞いたとき、チャンスだと思った。
犯人はまだ近くにいるはずだ。今なら、止められるかもしれない。
「学校周辺で起きたんだろ? それ以外の情報は無いのか?」
彼女は静かに、首を横に振った。
「無いの。電話で言われたのはそれだけ」
「……分かった」
俺は自分の部屋へと戻ろうとした。
「一樹君は、どうしたいんですか!」
少し立ち止まって、答えを口に出した。
「俺は…真実が知りたいんだ」
部屋に入ると、俺はすぐに制服から普段着へと着替えた。
ジャケットを羽織りながら階段を駆け下りて、玄関
へと突き進む。
「何が起きるか分かりません。……気を付けて」
「あぁ、行ってくる」
自転車には乗らず、走って家を飛び出した。
学校のステッカーが貼られた自転車なんかに乗って行ったら、騒がれてしまう。
━━━━急がなければ。
十字路を曲がって、小さな公園を通りすぎ、横断歩道を進んで長い坂道を上りきれば学校の近くだ。
「絶対に、見つけ出す!」
決意を胸に走り出した。