視える者R first
ゆっくりと瞼を開けた。
まだ視界はぼやけていて、頭もあまり回っていない。
「ん~ よしっ」
軽く伸びをしながら体を起こし、ベッドから出て着替える。
重い体を動かして部屋を出た。
二階から降りて、台所へと向かう。
窓から外を見るとまだ少し暗くて、時計の針はちょうど6時を指していた。
早起きする事も、お弁当を作る事も、朝ごはんを作る事も別に苦では無い。
もともと居た世界では、病気がちの母親に代わってよく妹たちの分を作っていたものだ。
……先にお弁当を詰めようかな。
昨日作っておいたおかずを、レンジで少し温め始めた。
━━この世界は、あっちの世界に比べたら平和だ。人を襲う魔獣はいないし、そもそも魔法という神秘さえ知らない。同じなのは、人が怖いというだけ。
温め終えたおかずをお弁当に入れていると、電話が鳴り出した。
こんな時間に誰だろう。私は電話機の側に置いてある連絡網のプリントと、表示された電話番号を照らし会わせる。どうやら一つ前の家からみたいだ。
何か起きたんだろうか…?恐る恐る、電話に出た。
「もしもし? はい、屋土坂です。ご用件は何でしょう? 本当…ですか…? わかり、ました。後で伝えておきます。 はい、それでは」
震える手で、電話を切った。この事を、彼に伝えたらどうするだろう。大人しくしている訳がない。
ドアの開く音。
程なくして、階段を降りる音が聞こえて来た。
「おはよう、レイナ。何かあったのか?」
心配そうに訪ねる彼に、言わなければならない。
「あのね、一樹君。今日…学校は休みになるみたい」
「休み? どうして…?」
先ほど聞かされた言葉を、伝える。
「事件が、起きたんだって」