ある夜の事 first
薄暗い部屋の中。
聞こえ始める、誰かの声。
「聞いて聞いて!ホントに凄かったの!あの子が腕を振っただけで首が飛んで、血の花が咲いたの!あぁ、思い出しただけでもぞくぞくするわ。あなたにも見てほしかった、あの光景!」
「そうか。役目を果たしているようだな。…他人のことより、お前はどうなんだ」
「あら、怖い顔。大丈夫!首尾は上々よ。あの女の子も、サクラのおかげで無事に入りこめたみたいだし。あなたから言われた別の仕事も今やってるわ」
「なら良い。……蒼い眼は見つかったか?」
「全然ダメね、見つからない。でもちょっと気になる子は見つけたってサクラが言ってたわ!」
「ほう?それは誰だ?」
「あなたには教えないわ。もし言ったら、あなたが殺しに行くでしょ? そんなのダメよ!その子はあの女の子に殺してもらうから!」
「……好きにしろ。私は待つだけだ」
「待つだけね…… あっ、そろそろ私ご飯の時間だから」
「……血の一滴も残すなよ」
「心配しなくても大丈夫。証拠なんて残さず全部食べるから!けっこう美味しいのよ?人って。あなたもどう?」
「..…遠慮しておく」
「それじゃあ、いただこうかしら」
誰かが近づいて来る。
暗くて、見えない。
「やめ…て 殺さないで…!」
「ちゃんとおいしく食べてあげる…からっ!」
ブチンッ と聞こえちゃいけない音がした。
「つ゛あ゛ぁ!」
「まずは右手からね」
叫び声だけが響き渡る。
夜はまだ長い。
彼らの夜はまだ終わらない。