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星空色の魔法使い  作者: たいさ
3/20

視える者K first

濁っていた視界が晴れた。

倉庫の中の仄かな照明に照らされて、さっきまで鼓膜が破れるほどの奇声を上げていた『それ』がもうただの肉塊になっている事に気付く。

真っ白な服のキャンパスに、朱色の華が描かれていた。

鼻を刺激する血の匂いが、お前が殺したんだと否応無く訴えかける。

あぁ、終わった… 終わったんだ。

用はもう無い。こんな所、さっさと出よう。

疲弊した身体を無理やり動かそうとすると、


「もう終わったのか? 予定より速いな」


後ろから、声が聞こえた。


「うん、殺ったよ。 …ねぇ、これで良いの?」


「あぁ、これで良い」


「そっか… じゃあ次は何をすれば良い?」 


私は振り返り、男に尋ねた。 


「詳しい事は後で話す。戻るぞ」


男はそれ以上何も言わず、倉庫から出ていく。私は黙って、彼の後ろを付いていった。


波の音と潮風が傷を優しく撫でる。夜の港を歩くのは、魔法使いと一人の少女。未来を想う少女は、魔法使いの後ろ姿に自分の居場所を重ねる。

自分は彼に評価されている訳ではない。ただの使える駒としか考えられていないのだろう。

…それでも良い。もう見捨てられるのは嫌だ。自分は彼に使命を与えられた。自分はそれを遂行するための道具だ。今、この身体が再びこの世にあることだけに幸せを感じろ。

そうでなければ、私はここにいる価値すら無い。

自分はただ、ひたすらに、殺せば良い。


魔法使いは立ち止まり、不思議な言葉を唱えると宙に手を翳した。

地面に幾何学模様が浮かび上がり、その空間だけが歪み始める。

程無くして、黒い扉が現れた。

扉は不気味な音を響かせながら、独りでに開く。

その先は夜よりも暗い闇だ。

二人は臆すること無く扉の中に入り歩き出した。

扉はゆっくりと閉じ、消えていく。

太陽が海の向こうから顔を出す頃には、もうそこには何も無かった。

???「港……?」

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