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前編

ゼノウォフマナフしばきながら書き連ねたので拙さが際立つと思います。エレメント足りねぇ。

そして華がありません。ロリコンにあるまじき華のなさです。でも、主人公が偏屈めの爺なの結構すきなんです。

あとたぶん後編がないと面白み減るのでブクマだけして後編待ったほうが精神的にお得かもしれませんよ。

 「聞きましたか、博士。また落ちたそうですよ。今度は飛行船だって」

朝、だれて眠っていた脳が、教え子の、電話線越しでさえ妙にうるさい声でたたき起こされた。

「博士聞いてますか?やばいですよ。光がドーンっていって飛行船を落としたって話です。近くを航行してた船が見たってインタビューで!」

相変わらず喋り方がうるさい。この助手は。いつもとにかく喋る…。死んでもしゃべり続けるんじゃあないかと思えるほどうるさい。しかし、昨日はずっと寝ていてニュースを知らなかったおかげで内容は興味深い、適当に返事をして続きを促す。こういう時はおしゃべりの性、情報をたくさん得て全部放出してくれるから、周辺情報まで得られてありがたい。

「ええ、ええ、例の海域ですけどね、今までは船ばっかりだったじゃないですか、落ちたの。今回は飛行船だって!光が空にバビューンって昇って、上にいた飛行船を墜落させたんですよ、やばくないですか!?」

フム、やばいな。例の海域…三つ子の島の間の海域。そこを通る船が軒並み沈んでしまうという。三か月ほど前発見された三つ子の島は、どれも希少種やら固有種やら、珍しい動物もいるし、なんだか香辛料も採れるらしい、ということで冒険家が集った。しかし、先月あたりから行って帰ってきた者がいなくなった。周辺海域には船の残骸が浮遊しているから、おそらく沈んだのだろう、ということになっている。野蛮な原住民がいるとか、巨大なサメがいるとか、果てはドラゴンの巣だとか様々な説があるが、結局原因はわかっていない。

「その、光がドーンだかバビューンだかは、確かな情報なのかね」

「さぁ、ひょっとしたら違うかもしれませんが。なんか海域を監視してた隣国の船が見たって言ってるらしくて。友好国ですし、あそこに限って妙な嘘はつかないと思いますけどね」

…興味深い。だんだん目がさえてきたぞ。タイミングがいいことに、昨日完成させたアレを動かす時期がもう来てしまったようだ。

「なるほど。原因はばかばかしいやつばかりだったが…ここへきてもっと妙な説が浮かび上がったわけだな。今頃、古代アトランティスだとかムー大陸だとかの遺跡、そんな説が出回っているだろう」

「ハハ、大当たりですよ博士、サメ説とか完全に消えましたけど、頭に大砲つけたサメがいたかもしれないじゃないですか。いくらなんでも古代文明は早とちりですよねぇ」

「君のも大概だぞ。むしろそんなサメがいたらそれこそ古代文明の産物だろうて。いや、逆に、古代文明があってさえそんなサメはおらんだろう」

「えー」

聞くからに非難の意をこめたであろううめきをあげる、電話口の向こうの助手に「来い」とだけ言い残して電話を切ると、部屋の奥にある大きな扉を開いた。


・    ・    ・


「パパ…お父さん」

幼い子供が、恥ずかしがりながら父を呼ぶ。まだ「パパ」でもいいような歳であるが、

この子供は、生意気にもすでに大人ぶって「お父さん」と呼びたがっていた。

 「どうしたんだい。まだ「パパ」でもいいんだよ」

「だめ。「お父さん」なの…。ぼくははやく大人になるの。それで、お父さんの夢を叶えるの…。ねぇ、また、夢の話、聞かせて」

  おまえは本当にこの話が好きだな、いいだろう、と言うと、父親は語り始めた。まだ若いというのに諦めてしまった、遥か遠い夢を。


・    ・    ・


 私は、隔世遺伝というのはあると思っている。と、祖父の家から持ってきた本を閉じながら考える。

あの父親にはなかった─祖父にはあったという─一族の誇りを、私は強く持って生まれた。私自身は祖父に会ったことはない。祖父は誇りに忠実で、人生の殆どを研究に費やしたせいで、私が生まれるころにはすっかり弱っていて、物心ついた時には亡くなっていた。

祖父が人生を賭け、そして父が早々に諦めたその夢を、叶えたい、と強く思った。その夢に秘められた浪漫に心が呑まれた。

今朝のビームの話を聞いた時、あの時感じた浪漫をもう一度感じたような気がした。やっと見つけた。あそこにある。きっとある。高揚の度合いで言えば、人生で一番かもしれない。


・   ・    ・


「博士。おはようございます。来いっていうから来ましたよ。アレできたんですか?」

「できたぞ。潜水艦だ」

話をしながらも手を休めない。出立のための準備を一刻も早く進めなければならない。これから乗るものに信頼性がなくては安心できまいと、性能やら原理やらを適当に説明しながら水とパンとを鞄に詰める。

「さすが博士っすね。アイデアの出どころが全くわからん。博士っていうだけのことはありますね」

「なに、書物と少しのヒラメキだけだ。わからなくても別にいいが」

操縦の半分はわかってもらわないと困るがね、と付け足して、荷物を詰め終わった鞄をよっこらせと持ち上げ、件の潜水艦の格納庫の扉を開く。

「やべぇ、だろう。乗れ」

案の定やべぇ、と言って、そこにある完成した潜水艦を嘗め回すように眺めてから乗り込む。

それは楕円形のようなシルエットをした、球体状の、奇妙な形をしていた。船体は金属チタニウムを基にした合金でできていて、塗装をしていないので、金属光沢が扉から入る太陽光を反射してよく光っている。外殻は海まで運ぶのを簡単にするために車両になっていて、潜水艦の部分は見た目より小さい。

「やっぱこれなら水圧に押しつぶされなさそうですね。まさか実現するとは。すげぇ…三億回ぶんくらいすげぇ」

「意味が分からん。…まぁいい、行くぞ。おまえのぶんの操縦は道中で教えよう」

「はいはい。久しぶりのフィールドワーク楽しみだなぁ。…で、どこへ行くんです?」

エンジンをかける。ブロンブロンと景気のいい音が格納庫に反射して、冒険の高揚を促す。

「わかっているだろう。海底都市だよ」


・   ・    ・


彼には私の話をしていた。(謎の書物を読み漁り謎の機械を作り続ける得体のしれい変人オヤジにしか見えなかったという)私の研究に興味を持ったのが彼だけで、今にしてみれば、初めてわかってくれる人ができたことが、あの時はとても嬉しかったのだろう。自分の、一族の夢を追い続けるだけなのだ、理解者などいらんとは思っていたが、いざとなると違うものだ。やはり人間は社会性動物らしい。

ただし、書の内容だけは漏らさなかった。我らの書く書の、その内容は決して部外者に漏らすなと、そういう決まりがあるのだという。昔は秘密結社のような体裁だったというし、その頃の名残だろう、つまらんものだが、なんとなく必要以上には見せていなかった。


 「これがこう?いやこうか??んん???」

 「違う、そうじゃない!それはそっちだ!」

 …しかしそれがこんな弊害を招こうとは、予想だにしていなかった。

 彼に任せたのは瓦礫や岩をどけるためのアームの操作なのだが、ここは私が一人で作ったもので、しかも説明書の文字がひどくなまった一族の言語だったために操作方法が難しすぎたのだ。

 こいつは頭がいいからまぁ大丈夫だろうと高をくくっていたが…失敗だったようだ。

 「ほれ、明日には三つ子島につく。はやく覚えろ…、もう説明書は見んでいい。感覚でやれ感覚で。お前そういうの得意だろう」

 「いや無理がありますよ。まぁやりますけど…。ていうか博士も不親切ですね。現代語で説明書書き直してくださいよ、こんなひどい方言なら。もはや別言語ですよ」

 「ああ、うるさいぞ。年寄りはいたわれと親に教わらんかったのか!」


・   ・    ・

結局、思ったよりスピードが速く、その日のうちに三つ子島に着いた。船体への負担を減らすために海上に出つつ、身を隠すために島の影に隠れて夜を越し、海鳥の声で目を覚ます。

「錨を上げろ…。朝だ。出発するぞ」

「はやくないですか。まだ暗いですけど」

「早くしないとほかの連中も起きるだろう。ここの開拓はレース状態なのだ、とっとと潜らんと見つかってしまう」

「はいはい…頑張って操縦覚えたしもうちょっとねぎらってほしいなぁ…」


 再び海に潜る。ここ一帯の浅瀬は珊瑚礁ができていて見目も美しい。図鑑にものっていない珍しい生物も多いだろう。帰りに余裕があればそういう奴を捕まえて帰れば学名に名前がつくな…、などと考えながら、しかし、それゆえに観光業の場になろうとしていて見つかりやすいここを素早く抜け、深海を目指す。

 「ここらでいいだろう…。レーダーでおおまかな位置を特定するぞ」

 「レーダーねぇ…、数年前まではSFの中だけの話だと思ってましたよ…と」

 全くその通りだ。深海にあるかも、じゃあどうやって見つけるんだそんなもの、となった時、書物を全てあさって考え出した結果生まれたものだ。

 光線が飛んでくることは予想済みだった(だからこそその話で高揚した)。光線はどうやら重力をねじまげて作っているようなので、ならばその重力震で都市の大まかな位置がわかるのでは…という発想のもと生まれたものだ。重力震を読む程度なら造作もない。

 「ふむ。近いな。よし…、もうすぐだ。もう少しで…!」

 高揚で肩が震えた。積年の夢が叶う時が来た。技術水準が足りないとか、場所がわからないとか、様々に悩まされてきたが、もうすぐそれが報われる。

 震える腕を操縦桿に添えた。その時、目に閃光が飛び込んできた──


 「ハ、ハハ…、危なかった…。危なかったですね。狙いがずれていなかったら今頃神様に抱かれてましたね。アーム一本で済んでよかった…。ていうか、あれ、横にも飛ぶんですね」

 閃光は、艦を灼くことはなく、アームを一本亡き者にしただけだった。

 しかし、私は、艦を反転させて、逃げるように、来た道を戻る。

 「ちょ…、博士。なんで戻ってるんですか。あ、アームが片方壊れたから無理だと思ってるんですか?いや、片方だけでも岩くらいどかせますって!なんならドリルだって無事じゃないですか」

 「違う。そうじゃない。もう…いい」


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