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転生お姉ちゃんの異世界てまち  作者: あやめこ
第1章 拝啓、悪の森から
2/62

01「僕は神様です」

 あのコを残して部屋を移り、僕は手早く内密の案件に執りかかった。


 ...はあ?


 ...ヒィッ


 ...ふぅ


 ...へぇへぇ


 ...ぽい、っと。


 はぁ、やーーーーっと作業終了! 


 あー、疲れた。ホント、疲れた!


 でもね、僕、頑張った! ほぼ計画通り! 僕はやり遂げたよっ!


 後はヤツが僕の世界に定着するのを待つだけだ。


 お待たせしてるあのコには悪いけれど、ちょっと休憩。

 僕は床に直に座り両足を伸ばし、両手を上に上げて背伸びをした。

 あ、イタタタタッ。あちこち、ズキズキ、チクチクするー。

 何で神である、それも創造神である僕に対してこんな酷いことをするかなーっ。

 せっかくの造形美に痕でも出来たらどうしてくれるんだっ!

 僕はムカムカしつつ、全身に神力を巡らせ治療を施した。

 肉体から来る痛みはなくなったけれど、精神的ダメージは減少するどころか増幅した。


 だいたいさ、希望通りに転生させてやるって言ったのにだよ。 

 元の世界に戻せの一点張りで、創造神である僕の言うことを聞こうとしないんだよ、おかしいでしょ? 

 かーなーり下手に出てやったのに、創造神であるこの僕の提案を拒否しまくるって、ホントいったい何様だよっ! 

 創造神である僕に従わない転生なんて、本来なら即返還か消去対象だ。

 だけど依頼だし返還はできないから、僕は我慢強く説得を続けたんだ。

 でもぜんぜん話が進まなくてさー、つい実力行使って天罰ぶつけちゃったんだよねー。

 そしたらヤツってば怯むどころか創造神である僕に暴力を振るったんだよ、酷くない?! 

 神様を傷つけてまで自分の欲望を貫くなんてどこまで罪深いんだ、信じられないっ! 

 ホント、野蛮な愚民って何を仕出かすか判らないから怖いよねー、あー、ヤダヤダ。


 試しに封印もやってみたけれど、すぐに破られた。まぁ、試しただけで全力じゃなかったしー。

 このまま部屋ごと切り離して放棄も考えたけれど、精神体だから元の世界に戻りそうで止めにした。

 僕だからって頼まれた案件だし、何とかして転生させるしか道は無い。

 そこで改めて僕は考えた。暴力じゃ何も解決しない、やっぱり話し合うことこそが大切だって。

 僕は説得を続け、その時に閃いた思いつきを提案することで何とか転生を承諾させることに成功した。

 そのせいで何か妙な事をやらされたんだけどさー。痛くなかったし、我慢して付き合ってやったよ。

 別にヤツの暴力に屈した訳じゃないんだからねっ。


 転生することになったんだけれど、ここからも面倒だった。

 ヤツの希望した転生の設定が細かくてさー。

 丈夫で長寿の二種族を掛け合わせろとかー、見た目を元のとあんまり変えずに二足歩行の陸上生物にしろとかー。

 何でこんな面倒な希望を叶えないといけないのかってムカムカしたけれど、これ以上長引かせる方がもっと面倒なので黙って操作してやった。

 短命な種族でも丈夫で長寿にする方法もあるんだけれど、結構神力を使うし調整が難しそうだったから、ヤツには何も言わず却下した。こんな事で神力を無駄遣いするなんて無意味だもんね。

 でもまあ、丈夫さは必須だろうなって思ったから希望通り丈夫な種族を選んでやったよ。

 今回の依頼達成条件は『元の世界に絶対に戻らないよう転生させて欲しい』

 そのためには僕の世界に生きて定着させることが最重要項目となる。

 たまに死亡すると元の世界に勝手に帰る【死に戻り】っていう能力持ちがいるんだって。たぶんヤツもそうなんだろう。あれって空間を大きく歪めるから凄く迷惑って話だったんだよねー。

 だから簡単に死なない程度に丈夫であることは必須条件、これには僕も賛同できた。

 なので平均寿命の長い順で並べて上位二種族を選択した。寿命が長いってことは丈夫ってことだよね。 

 ちょうど二番目が二足歩行で人間っぽかったので、簡単に元の姿を反映できた。さすが、僕。

 鏡を見せて確認させたら、ほぼ見た目はそのままだって喜んでいた。やるね、僕。

 角がある種族だから角は必須って言ったら、仮装みたいだから気にしない、だってさ。

 鏡や目視で見えない角以外の部分のことは教えてやらなかった。ざまあ見ろ。

 ヤツが角を確認した直後、速攻で地上世界に落としてやった。

 消え際に手を見せながら何か言ってたけれど、無視無視。

 後は定着するまで監視するだけ。

 落ちた先は創造神である僕の世界だ、定着したら覚えてろ... 


 これで転生の希望は叶えたし、寿命の長い種族を掛け合わせたんだから定着するのは時間の問題。

 アノ御方と二人きりの密談を重ねて計画した通り、希望を叶えて転生させた。

 本人の希望の設定にしてやれば格段に定着しやすくなるらしい。

 とにかく生きてさえいれば、いつかは世界に定着するはずだ。

 望郷の念が強くても転生先で生き続けていれば友達や家族ができて、その絆が世界に縛り付けてくれるんだったかな。

 まあ、財産や地位を手に入れたら手放せなくて踏み止まっちゃうもんだよねー。

 死んでも執着しちゃうからアンデットなんていう魔物も生まれる訳だし。

 だいたい転生関連って結構神力使うし設定も面倒なのに、何でみんなやりたがるの? 

 運任せで転生させる世界も多くてホント、謎なんだよねー。

 僕はよっぽどじゃない限り転生なんてやりたくなかった。

 歪みの発生率も高いしさー、最初も面倒、後でも面倒ってホント、みんなマゾだよね。

 でも今回はアノ御方からの直々のお願い案件だから引き受けちゃったんだ。

 『アナタにしか任せられないの』なーんて言われたら、もうやるっきゃないよね。

 だけど今後は絶対しない。頼まれても絶対断る。転生なんて今回限りだ。

 さてと、気持ちを切り替えよう。終わったことを気にしても無意味だもんね。


 僕は大きく伸びをしてから立ち上がり、衣の乱れを直した。

 そして、あのコが待っている部屋へと転移した。


「お待たせしてごめんねー。」

「なるほど、主神のお客様でしたか。」


 あのコを独りで待たせていたはずの部屋に見知った顔が居て何か言った。

 コイツは僕の世界の一柱なんだけれど、真面目過ぎて融通が利かないんだよね。

 コイツが戻ってくる前に終わらせて出掛けるつもりだったんだけどなー。

 でも監視役にはちょうどいいんだ。元々出先から指示して監視させるつもりだったし。

 内緒の案件だけど僕の一柱なんだし、それくらいはやらせてもいいよね。

 ぐだぐだ聞かれる前にとっとと終わらせよう。

 僕は神力を使って光背を出し、目の前のコイツに言い放った。


「我、首座の神として神命を下す。

 転生者を地上に降ろしたので、定着までは死なせないように監視よろしく。

 内密の案件だから他世界への漏洩は絶対禁止、調査とか伝達も全部禁止。

 あ、定着するまで転生者への干渉も禁止ね。」

「は?」


 コイツが驚いた顔で固まってる隙に、あのコに近付いて腕を優しく掴んだ。


「それじゃ、後よろしくー。」

「あっ、お待ち」


 何か言ってたけれど聞き終える前に僕らは転移し、この部屋から脱出した。

 アイツのことだ、僕を確保して問い質そうとするだろう。

 だけど、これは内密の案件なんだから周りに知られる訳にいかないんだ。

 なので僕は神力を使って転移経路に細工を施しながら、こまめに転移を重ねた。


「あらためて、ごめんね。思った以上に手間取っちゃった。

 経過報告したいところなんだけど、その前に食事でもしようか。

 いい店を知ってるんだ、待たせたお詫びに御馳走するよ。」


 待たせたのは事実なんだからお詫びするのは当然だよね。

 まずは食事でゆったりと。そして、その後まったりと。

 転生もほぼ計画通り、期待通りにやり遂げきった僕の手腕を報告するのは義務だからね。

 だけど、あの暴力的なところは絶対内緒だ。暴力もだけどあの出任せも無かった事にしないとねー。

 そういうところは端折って、辻褄が合うように経過と行動を再構築。

 予定通りに明敏に進めていたのだけれど、転生体の微調整を念入りに行っていたため時間がかかった。

 良し、これでいこう!


 僕は掴んでいた手を腕から肩へと移動させつつ、このコを連れてまた転移した。

 


-・-・-・-・-・-


語り手    僕、この世界の主神(転生者を落としてやった、後はよろしくー)


あのコ、このコ  僕の世界のモノでは無い何か(お待たせー、たぶん僕好み)


コイツ、アイツ  この世界の一柱(主神の補佐か部下らしい、真面目らしい)


ヤツ       たぶん転生者 (元の世界へ帰還熱望、転生、落とされた)


 



お読みくださり ありがとうございました!

お気に召さない場合は無かったことにして忘れてください、お願いします。

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