表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アIイ アン  作者: 元長ニウレノ
星の関所
5/46

旧文明の防波堤にて

「う、んー」


 吊るされた蛍光灯の光の中、少年は目を開く。


「あ、目覚めた」


「おぉ!?まじか!」


「ニンゲンが目ぇ覚ましたぞぉ!!」


 少女と、鼠達が顔を覗き込んでいた。その事実に少しだけ息を呑む少年。


「鉄の子だ!!」


「すげぇ!目が青い!!」


「毛が長ぇのか短いのかよくわかんねぇな!」


 周りで二足歩行する鼠達がちょろちょろする。


「…!」


 まくれた布団に隠れてしまうアンディ。


「こらこらお前らはしゃぐな! コイツ怖がってんじゃねぇか」


「はーい隊長!」


「しかし骨と皮だけだな」


「…ん」


 その鼠どうしのやりとりを見て少し警戒がほどける。


「んで、どうだアイツー?」


 一際大きな、目算1メートル程の鼠が少女に問いかける。


「…うん。心拍数も問題なし。栄養を取れれば三週間ぐらいで健康状態に戻れるし、間違いなく生身」


「まぁ今はそれだけ分かればいいな」


「○○○○○?」


 少年が口を開く。


「あん?なんて言った?」


「××××××××××?」


「わかんねーな。アイツー、分かるか?」


「ちょっと検索かけてみる」


「%¥>々*@☆?」


「/////////?」


 その後何度も意味の分からないことを話す少年だったが。


「もうしわけねぇわかりやせんか?」


「んお!?喋れた!!」


「おめぇティムリー語喋れんのか!!」


「やった!通じやした!!」


「しかもめっちゃ訛ってらぁ!!」


 少年はホッと息を吐く。その手前で隊長とアイツーがこそこそと話す。


「今何語を話してた?」


「旧文明の言語が最初の方は多かったよ。英語フランス語ロシア語日本語。その後アンダーステイツ、冬街道共通語からティムリーまでいった」


「ふーむ。アンダーステイツ語と共通語が話せるのにティムリーが話せるのか…」


「余程の物好きか、教育熱心な親でもいるのか…」


「それでこの歳で放り出されてたんだ。訳ありなのは間違いあるめぇ」


 鼠の隊長が少年に近づく。


「おめぇ、どこから来た?」


「雪原の向こうでやす」


「向こうぅ? 冗談としちゃ出来が悪いぞ?」


 顔をしかめて詰め寄ると、少年は隠れてしまう。


「隊長ー」


「子供怖がらせたー」


「やれやれ俺じゃ会話にもならんか」


 少女が隊長の前に出る。


「ここは私に任せてよ」


「頼むわ。オイお前ら!関所の修繕に行くぞ!!」


「「「アイアイサー!!」」」


 ちょろちょろと動きだし、あっという間に鼠達が部屋から出て行く。残ったのは少女と少年だけとなった。


「そんなに怖い人達じゃないよ」


「えと、はい。それはなんとなくわかりやす」


「まぁ、ゆっくり話せることからでいいから話てよ。別にとって食ったりはしないからね」


「あい」





「そっか。よくここまでたどり着けたね」


「うん…」


「辛かったろうに…」


 少年の話は、聞けば非常に残酷だった。

 少女も茶化したりしないで、境遇と従者の事を悼む。


「アンディ。いい名前じゃん」


「ありがとう。君はアイツーって言うんだね」


「ふふふ、そう? こんな名前の所為で北方戦線のアイツって呼ばれてるんだよ?」


「あはは」


 少女の笑い話に、会話の中ですっかり訛りの取れたティムリー語で返す。


「多分館を攻撃したのは空対地コンドル。まず間違いなくアンダーステイツの正規軍だ」


地下合衆国(アンダーステイツ)…」


「今のところまだ大丈夫だけど、いずれここにも追ってが来るかもしれない」


「ごめんなさい…」


 アンディがしょぼくれる。その頭をアイツーがはたく。


「そんな捨てられたアイボー(愛犬型ロボット)みたいな顔をしないの」


「でも迷惑を」


「問題なしってことよ。そもそもここ星の関所はアンダーステイツと敵対してるもん」


「それって大丈夫なんですか?」


「んまぁ相手はデカイ国家連合だし、本腰を入れだしたらどうなるかわからないけど」


 少女はへらっと笑いながら自分を指差す。


「私がいるし。大丈夫っしょ」


 その声に、あの時おじちゃんから感じた揺らぎは無い。


「そっか…ちょっと地図見せて」


「ん、いいよ」


 少女が近くの棚から地図を取り出す。


 少年はブツブツ呟きながら髪の毛で地図をなぞる。


「えっと…北極星があそこでさそり座が向こうだから…」


「…うわぉ」


 その光景は異様。目で確かに地図を見ながら、なお多くの情報を得ようと触腕を伸ばす姿はまるでクラゲ。


「…なるほど。アンダーステイツの軍はここに来るときどんな方法で来るの?」


「装甲車かコンドル」


「なるほど陸路も取れるならこっちかな」


「…!」


 触手が蠢き図を作る。地図の上に形作られた図形は何かの軌道。


 アイツーには分かる。それは補給線。


「アンダーステイツの軍は多分こっちかこっちに道を作って移動してる。僕が居た白い屋敷は多分ずっと離れた北にあるから、そこまであの飛行機で移動しようとしたなら…」


 導き出される座標。


「最低でもここに発着できる施設があるね」


「…すげぇ。敵の基地の座標を割り出したんだ」


 関所に残った軍事用のレーダーをフル稼動させても長年見つけられなかったアンダーステイツの北方拠点、それを少年が見つけるのにかかった時間は数十秒。


「えへへ。なにか力になりたくって」


「とんでもないな」


 規格外。アイツーの自称世界一優秀な電子頭脳でも、形容する言葉がそれ以外出なかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ