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アIイ アン  作者: 元長ニウレノ
星の関所
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星の関所と北のアイツ

「…」


 木の一本も生えない極地にて、よろよろと雪を踏みしめる少年。


「……!!」


 寒さに体がかじかむ。着の身着のまま極寒の他に放り出された身。既に先端部分は紫色に変色し、じんじんとした痛みを除き感覚は消え去っていた。


「……!」


 少年は足を止めない。日は落ち、空は雲に覆われ、雪の足がどんどん強くなる。

 その最中で、倒れこもうとする体を懸命に支える。


「た……」


 強風に横殴りにされ、耐えきれずに倒れこむ。体に雪が積もり、いよいよ体の自由が効かなくなる。


「ただいまって… 言うんだ…!」


 それでも這って進もうとする。

 程なくして意識を失った少年を、細長い鉄の化け物が静かに飲み込んで行った。




「はぁー寒っ!!」


「口に出すな!意識しちまうだろ」


「がったがたに震えながら意識もクソもあるかよ!」


 ここは星の関所。旧人類が残した星の描かれた旗、その下に作られた冬の世界と生き物の世界との境界である。


 その境界の上、作られた防塁で、二人の門兵が冬の世界を見ながらだべっていた。


「うっわ、鉄仮面のパイプラインだ」


「まじか! こっち来んなよー」


 鉄色の巨体が雪の平原を跳ねる。それを見た門兵達は揃って肩を縮こませた。


「…アイツまっすぐこっち来てねぇ?」


「マジだ! 早く隊長に繋げ!!」


「やばっ、通話番号なんだっけ待機室!?」


「265だよ!急げ!!」


 巨体が雪を跳ね飛ばしながら関所へ突貫する。


「あっ、隊長!? やっと繋がった!!」


『9番窓だな!?こっちからも振動が伝わってるぞ何が来てる!!?』


「あ、えっとメガトン級のパイプライン!鉄仮面です!!」


『あの芋虫か! ちょっと待ってろ!!』


「おい!前見ろやばいぜ逃げろ!!」


「なんだよ、!!?」


 外を見ればパイプラインと呼ばれる化け物が立ち上がり、特徴的な頭部を二人に向けていた。


『そっから逃げろ!! ブレスが来っぞ!!』


「やばやばやばっ…」


「ひぃぃー…!」


 腰を抜かした二人はその場に座り込んでしまう。その目の前には既に、真っ赤に熱された炎の球体が来ていた。


 後ろから走り抜ける影一つ。


「狼はだれだー?」


 炎にそのまま食らいつく。


「私だー!!」


 そして炎を消し飛ばした。


「「アイツーさん!!」」


 二人を救ったのは少女。しかしスラリと伸びた足の関節や首元にネジが付いている。


 その少女が屈託無く笑う。


「おまたせ!助けに来たよ!!」


『オイ!お前ら大丈夫か!?』


「「たすかっだぁーーっ!!」」


『大丈夫そうだな!!よしアイツー!!』


「あいよー!」


『見てのとおりだ!!ヤツをたたんじまえ!!』


「隊長に出番残した方がいいかい?」


『お、俺が出るのはまた今度だ!!』


「へいへい隊長びびってるー」


『とっとと行け!!』


「あいあいさー!」


 冬の世界に飛び込んで行く少女。


「しっかしすげぇな…アイツーさん」


「炎を食ったのか?どうやって?」


『ほら余裕が出たならアイツーの援護!!そこに備え付けられた機銃は飾りじゃねっぞ!?』


「「あいあい!!」」


 少女、アイツーが去った後で二人の兵士も動きだした。

 尻尾を動かしながら。


「んー、まあまあなサイズ。でもメガトン級は無いかなぁ」


 雪原を疾走する少女、アイツー。目の前で関所に向けて次弾を装填している巨体へ跳躍する。


『わかってるだろうが火薬類は厳禁だ!!ヤツの中に詰まってんのは重油だからな!!』


「へいへい。隊長は心配性だなぁ」


 アイツーが懐から得物を取り出す。それは大きめのドライバー。


「燃やさず、弾けさせず、音を立てず壊す。私の得意分野じゃん」


 鉄の巨体を駆け上がる。


 《PIIIiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii!!!!!!!》


 巨体が絶叫をあげる。


「音波兵器ね。ナマモノや遠隔操作ならイチコロだろうけど…」


 ものともせずにドライバーを突き立てる。


「私には効かないよ!!」


 ぐりっとひねる。


 《EEEEEEEEGGGGYAAAABAAA!!?!!!?》


 その瞬間、巨体は音も立てず分解された。雪原に大質量がぶちまけられ、雪の柱が巨大に立った。


「今のは本当の絶叫だねぇ!」


 《BEEEeee!!!》


「おっと!」


 最期の足掻きと言わんばかりに吐きかけられた重油をかわし、原型を留めている顔へ向かう。


 《Beee!!!》


 そして突き立てられる。瞬間、頭部を覆っていた鉄の仮面が崩れ落ち、100メートルをこえる巨体は完全に沈黙した。


「さらば古い同胞」


 崩れた鉄の芋虫の体から重油が染み出す。その異様な匂いの中でも少女は顔色一つ変えない。


「んーーさて、隊長さーん?」


 隊長に声をかけるアイツー。


『お前…』


 しかし返答は芳しく無い。


「どったの?」


『どったの? じゃ、ねぇ!! 音波兵器が来るなら先に言え!!自慢の耳が飛んだらどうすんだ!!』


「隊長の耳なら一人でに飛んでいきそうですけどねー」


『こんっの野郎…!!』


「んで、なんか欲しい部品とかってありますか?多分露製のTLナンバー、その後継品ですけど」


『まてまて、回収ぐらいは俺たちにやらせろ。お前解体は得意だが搬送下手だろうが』


「はいはい。分かりましたよ…!」


 その時、アイツーの感覚が捉えた。


『どうした?アイツー』


「…パイプラインの中に生身の生体反応」


『…うそだろ?フォトゲノム生命ではなく生身の?』


「間違いない。消えかけだけど」


『…ヤツらか?』


「交ざり物じゃない。多分混じりっけなしの()()


 言いながら少女は解体を再開する。


『ちょ、おいおい回収する気か!?』


「面白い。生体機能のほとんどを一時的に停止することで辛うじて生き延びてるけど、こんなの微生物以上の大きさの生物で実践した例は存在しない」


『…つまり?』


「この子機械の中で冬眠してる」


『クマでも入ってたのか?』


「いやこれは…」


 少女は辛うじて温もりが残っている肉体を抱え上げる。


「ニンゲンだ」

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