表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アIイ アン  作者: 元長ニウレノ
始まりの館
1/46

白い屋敷の少年

『ボッチャマ。ドコニオラレマスカ』


 綺麗な屋敷に駆動音とノイズ混じりの機械音声が響く。


「書庫だよおじちゃん!」


 元気な声が聞こえてくるのは屋敷一階の東端。


『モウジキ晩餐ノオ時間デス。ロビーニオモドリクダサイ』


「もうちょっとだけ待って!今いいところなの!!」


『ソウイッテ、昨日モ真夜中夜23時51分39秒マデ映像鑑賞室カラ出テコナカッタデハアリマセンカ』


 むう、と口を尖らせた少年が、巨大な本棚から飛び降りる。


「わかったよー!でも本を戻すからもうちょっとだけ待って!!」


『ソンナコトハ私ガ済マセテオキマスノニ』


「ダメだよ!ぼくが読みやすいように並べるんだから」


 少しして部屋から走り出た少年。綺麗に掃除された屋敷は埃一つ立て無い。


「今日の献立は?」


『B級ノ流体食ノスープニ、特上洗浄池ノ群生ワカメサラダ、アト養殖鼠ノステーキデス。主食ハ…』


「あー、当ててあげる! メインがステーキならパンだね!」


『御名答デス。白ブレットカートリッジニナリマス』


「なかなか豪勢だなー!」


 ウキウキした様子で食卓に座る少年に、後から付いてきた者が呆れたように問いかける。


『ボッチャマ。今日ガ何ノ日カオ忘レデスカ?』


「新暦1074年12月24日? 今日は何かあったっけ」


『ボッチャマノ誕生日デス…』


「あー!そうだった!!今年で何才になるんだっけ?」


『12歳デス。全ク自分ノ事ニ関シテハトント興味ヲ持ッテ下サラナイノデスカラ…』


 むうと口を膨らます。


「そんなに言うならそろそろぼく自身のこと、調べる許可を出して欲しいんだけど…」


『時ガ来レバ私ガ教エテ差シ上ゲマスカラ』


「約束だよ!」


 巨大な屋敷の中で食事の音が暫く響く。

 髪が異常に伸びた少年と、拳銃がそのまま頭の代わりに付いているかの様な姿の従者が、大きなテーブルの片隅で寄り添っていた。


「プレゼント?」


 食事が終わった頃、従者からかけられた話に少年はきょとんとする。


『エエ。ボッチャマモモウ12歳ニナリマス。ナノデコチラヲ』


 手に小さい物を握らせる。


「?んっ!!ふぉおお!!」


 それが何か分かった少年は歓喜から叫ぶ。


「これっ、これ!!?」


『上階ノ資料室ノ鍵トナリマス。ズット行キタガッテマシタノデ』


「おじちゃんっ!!」


 従者に抱きつく。


「ありがとう!!こんなに嬉しいのっ生まれてはじめて!!」


『オオゲサナ』


「早速見てくるね!!」


『ボッチャマ』


 走り出そうとした少年を呼び止める。


「なーに!?」


『資料室奥ノ扉ノ先ヘハ…行カナイデクダサイ』


「??奥の扉?まぁいいや。行ってくるね!!」


 走り去って行く少年。暫くして階段を駆け上る音が聞こえる。


『機密漏洩ノ可能性…問題無シト判断…技術デハ不可能。確率282429536481分ノ1ヲ30秒ゴトニ更新…』




「わああ、これが資料室…!」


 二階東端の資料室。一階にある図書館と比べるとスペースはこじんまりしているが、蔵書の量は引けを取らない。整然と積まれた紙の山の奥に、巨大な本棚があり所狭しと書物が並べられている。


「うーんどこから行こうか…」


 資料と本とをがさごそと物色する。


「よしっ決めた!」


 手に取ったのは一際分厚い書物。


「新暦の進化新論と生物及び機械の変遷年表…」


 表紙をひとしきり眺めたら、開いて中身を確認する。


「………………」


 そこからは無音だった。恐ろしい速度で視線が往復し、瞬く間にページがめくられていく。


「……………………………」


 膨大な量の活字を瞬時に読み取る。髪の毛がざわざわと動き出し視線に沿うように文字をなぞる。


「……ふぅ」


 表紙を除いた厚さだけでも30センチを超える鈍器が如し書物が、読みはじめてから僅か10分で読破された。


「面白かった….」


 読み終わった満足感からか、或いは終わってしまったことへの寂寥か短く息を吐く。


「さてと次は…」


 本棚に本を戻し、別のものを見繕う傍ら少年はこうも考える。


「一ヶ月ぐらいで全部読めちゃいそう…」


 図書館の莫大な書物を、解禁されたその年のうちに読み切ってしまった時のように。


 白い屋敷の夜が更ける。地平線の向こうから朝日が昇るまで、紙をめくる音が静かに続いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ