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魔芒の月  作者: 弐兎月 冬夜
37/63

アレイスターには手を出すな!!  おまけなのかお遊びなのか訳の分からない夢のお話? ひょっとしてネタバラシなのか? 出たがり作者のうっぷん晴らしかも?

僕は結構理系的な考え方をする方だと思うけど、けっこう霊的な物は信じている口だ。

自分では、何の能力も無いし、視えない人間ではあるけれど、視える人がいるならそういうものかもしれないと思っている。

 先日、小作品をアップロードした。飼い猫のシロが死んだ話である。ペットロスと一口で言うが、まさかシロがこんなに早く逝ってしまうとは予想だにしなかった。つらい思いを文章にすることで、自分はそのペットロスから少しだけ救われた。今もシロの事は残念だし、今も何気なく思い出しては、そこにいるシロに話しかけている。きっと今もそこにような気がしているのだろう。


 シロが死んで2週間経った朝方、クロが朝の4時に僕を起こした。連日の疲れもあり、すぐに2度寝してしまったが、その時シロの夢を見た。シロは何か言いたげな様子だったが、しきりに後ろを気にしていた。(ああ、たぶんお別れに来たんだな。)そんな感じがした。

 こんな夢は前にも見た。シロとクロを飼う前の星夜の時も玄関で去ってゆく星夜の夢を見た。暖かい日よりの出来事だった。とても暖かい日で、澄み切ったような気持ちのいい日だったと思う。ミケの時もあった事だけは覚えている。さすがにあまりに昔なので詳細は覚えていないが、とても気持ちが楽になった。


 どうしてこんな話をするかと言うと、今回のおまけは夢落ちの話だからである。3話のオムニバス形式にしているけど、繋がりなどの意味は無い。ただの戯れでもあるし、伏線のような、説明し忘れた部分を書いた感じだ。特に本編に繋がりの無い部分もあるし、本編に出て来る前置きのような部分もある。

 今、クロは炬燵の中で僕の足に爪を立てて喜んでいる。この仔は幸せに一生を送って欲しい。それは今の僕の切なる願いである。クロもシロがいなくなった当初は、シロを探して大騒ぎしていたものだが、今は落ち着いている。きっとこの仔もシロの死を受け入れたのだろうと思っている。

 さあ、明日も仕事だ。明日は普通に起こしてくれよ、クロ。

< 裁 判 >

裁判長 それでは被告ユンは宣誓してください。


 ユンは宣誓する。どこかしょんぼりしている。


裁判長 それでは検察側からの尋問を始めてください。

 検察官が立ち上がり、尋問を開始する。

検察 被告ユンは○月○日どこでどうしていましたか?

ユン ・・・・黙秘します。

検察 それでは質問を変えましょう。貴方は○月○日コールレアンで起きた出来事を知っていますか?

ユン 知っています。

検察 もし貴方が、あの時コールレアンにいたとしたら、貴方はどうしていましたか?

ユン 骸骨兵と戦っていたと思います。

検察 貴方は戦っていただろうとおっしゃった。ではなぜその場にいなかったのです。もし貴方がその場にいれば、多くの死傷者を出さずに済んだかもしれません。

弁護人 裁判長! 検察側の質問は全て仮定であり、空想の域を出ていません。

検察 いいえ、これは仮定でも空想でもありません。その時ユン氏はコールレアンの近くにおり、襲撃があった事を未然に予知していたと思われるフシがあるからです。

裁判長 検察側の趣旨を明確にしてください。

検察 それでは検察側の証拠物件第28号証をご覧ください。


 スクリーンに写真が映し出される。そこには村の少女が映し出されている。


検察 ユンさん。この少女をご存じですね?

ユン 知りません。

検察 そうですか? おかしいですね。この少女は貴方に助けられたと証言しています。いったいどういう状況で助けられたのか教えていただけませんか?

弁護人 裁判長! 被告はこの少女に見覚えが無いとハッキリ証言しています。

検察  そうでしょうか? ユン氏を目視していたのはこの少女だけではなく、村人の数人が少女を助けたのはユン氏であるという証言が得られてます。少女だけならともかく、村人数人が少女を助けて村に送り届けたのはユン氏であるとの証言は無視できません。少女の訴えによれば、角の生えた女の魔人が彼女を捕らえていた所をユン氏が危険を顧みず助けたのだと証言しています。なぜ、このように勇気ある行動をとれるユン氏が、コールレアンの災害に赴かなかったのでしょうか? これには、ユン氏の意思が大きく作用していたに違いないと思われるからです。

弁護人 裁判長。検察は想像で被告を貶めようとしています。

裁判長 弁護側の主張を認めます。検察側は質問の趣旨を説明してください。

検察  分かりました。ユン氏は類稀なる戦闘能力を持ち、エグランでは多数の魔物と戦ってきました。彼がその能力を発揮せず、知っていながら赴かなかったことは怠慢以外ではありえないと思われるからです。どうして今回に限りコールレアンでの戦闘を避けたのか? ホーク氏から未だかつて離れることなく、地母神D=メーテルとの契約を反故にするような行動をとったのか、それを解明するための物です。検察からは以上です。


 傍聴席や陪審員がウンウンと肯く。


裁判長 それでは弁護側の反対尋問に移ってください。

弁護人 分かりました。それではユン氏に質問します。貴方の首輪は何のための物ですか?

ユン  オレが・・いえ、私がホークから離れられなくするための首輪です。

弁護人 なるほど。それではあなたがホーク氏から離れるとどうなりますか?

ユン  首が絞まって息が出来なくなります。

弁護人 それが続けば、死に至る事もあるわけですね。どれくらい苦しいですか?

ユン  ・・・この世の地獄です。


 ユン、泣くようなそぶり


弁護人 なるほど、お辛いですね。

検察  意義あり。

裁判長 意義を認めます。

検察  被告は事件後の修道院で、ホーク氏をどついて自らの首を絞めています。これはある種の性癖、もしくは大して苦痛ではないからこそやれた行為ではないでしょうか!

弁護人 検察は想像で話しています。陪審員の皆さん、皆さんは首を絞められたことがおありですか! 人間の最大の苦痛は息が出来ない事です、それは想像を絶すると言われています。被告がたとえ一時でもその苦しみから逃れようとした事が罪でしょうか! 誰しも苦痛から逃れたいという本能があるはずでしょう? それが罪になるというなら、そういう人は異常な性癖を持っていると言わざる負えません!

検察 意義あり! 弁護人は遠回しに検察を侮辱しています!

裁判長 意義を認めます。弁護人は発言を撤回してください。

弁護人 分かりました。発言を撤回します。ただし、被告が死ぬような思いで首を絞められたという事実は、曲げようのない事実です。これは被告の苦痛がどれほど甚大であるかの証明のための発言であっと事をご理解いただきたい。弁護側は以上です。


  裁判長はゴホンと空咳をする。


裁判長 では審議は以上です。検察は怠慢罪で死刑を求刑しており、弁護側は無罪を主張しております。陪審員の方々は、今までの審議をよく吟味していただき、公平な捌きをお願いいたします。それでは陪審員の皆さんは別室で・・・

陪審員A それには及びませんですぢゃ。

陪審員B そのとおぉりぃだよお~ん。陪審員はみんな有罪(ギルティ)って言ってるよぉお。

陪審員C 有罪(ギルティ)なんだなあ。ゲフゲフ。


 陪審員全員が口々に有罪(ギルティ)と叫びだす。


ユン  ・・・・・・・・・・・あ・・


 陪審員だけでなく、傍聴席からも、検察も裁判長も弁護人も有罪(ギルティ)コール


ユン あったま来た!  ざけんなよォ!! てめえら! 全員ぶち殺すぅ!!!!


 すると突然首輪が絞まる! 拘束されて引きずられてゆく。


ユン く、お・・覚え・・・!!!!


 *****************


 飛び起きる。

「し・・死ぬかと思った・・。」

 息が荒い・・・。


 *****************


<暗黒の夢>


「紹介しよう。彼がかの有名な天才数学者チャールズ・エブス教授の再来と言われた宇須教授だ。彼の量子コンピューター理論はみんな知ってると思うが、彼の理論が現実化すれば、世界は一変するだろう。我々は最高の天才を迎えられた訳だ。」

「初めまして、宇須(うす)です。」

(ふん、何が天才だ。冴えない野郎め。)

「僕は日本語が読めるよ。君の名前はゼットっていううんだろう。」

「あはは。失礼、ちょっと似ているけど違います。僕の名前は綾人と言います。」

(バカ丸出しだ、クターク。)

「違うよ、絶人だろ。僕はもう君の事は絶人と呼ぶよ。そう決めた。」

(ドラッグでもやってるのか。この薬漬け野郎が。)

「ようこそ、研究所へ。私はここの主任研究員のダイアンよ。」

「遺伝子工学での御高名はかねがね。」

「高名なのは所長の方ね。オリバーは物理学でノーベルを取ってる。」

(そうさ。なぜ、俺は取れないんだ。間違ってる。)

「なに、たまたまだよ。たまたまさ。」

(そうだ、選定が間違っただけだ。)

「アデリン。こっちに来てご挨拶なさい。」

「・・・いま、忙しいです。」

(どうしてこの研究所にはまともな奴がいないんだ。)

「・・しょうがないわね。彼女がアデリン。私たちはアドって呼ぶわ。反物質の研究をしてる。きっと馬が合うわよ。後で自己紹介してね。」

「承知しました。では後ほど。」

 (右手だけで挨拶しやがる。礼儀がなってねえな、アド。)

「それから彼がうちのホープのサミュエル・タン君よ。物理学から生物学までマルチプレーヤーの何でも屋だけど、専攻は物理学。時空間転移の研究をやってるわ。世界初の時間旅行者になるかも。同じ東洋系だから仲良くしてやってね。」

(余計なお世話だ。クズ学者。おっと笑顔だ、笑顔。)

「よろしく、宇須教授。どうせだから、僕も君をゼットと呼ぶよ。」

(うまい言い回しだ。我ながらうまかった。)

「よろしく、タン教授。僕はそれでもいいですよ。日本でも苗字が珍しいので愛称で呼ばれていました。」

(お前もクズだ。最高のクズ。)



「生物の死には3つある。一つ目はプログラムされた死。植物や昆虫などが当てはまる。2つ目は捕食される死。弱肉強食というやつで、全ての生物がこの死の恐怖にさらされる。唯一当てはまらないのが人間だ。稀にライオンやサメに喰われる奴はいるがね。そして3つ目が()()()()()()()()()()。老衰がこれに当たる訳だが、人間はそれを既に克服してしまった。

 では人間はどうなるか?

 死なない生物に進化は無い。個としての死は非業と言える訳だが、種としての不死は進化の停止を意味する。

 つまり、新しい種が決して生まれる事が無いという意味だ。ゆえに人間に進化の未来はありえない。進化のできない種は必ず滅亡する。ではこの先、人間が種として進化していくにはどうすべきか?

 人間を3つの死のいずれかに当てはめ、強制的に死なせることでしか人間が種として生き残っていく術はない。我々人類は、今後プログラム的な死により年齢制限を設け、徐々に人口を抑制し、繁栄してゆくべきではないのか?

 例えば、人類を中世の時代に生活様式を戻し、健康に生き、そして死ぬ。捕食される側にも回るべきだ。強靭で凶暴な生命を作り出し、彼らと戦う事によって命の重みを知り、徐々に進化してゆくべきだ。少なくとも生物の多様化は必要と私は考える。当然の事だ。第一、現在の人口の人間を賄えるだけの食料が既に無い。我々は寒さに凍え、ひもじい思いをしながら絶滅してゆく。我々は宇須教授の開発した量子コンピューターによるAIシステムにすべてを委ねてしまえば、私利私欲の無い公平で豊かな人生を送ることが出来る。その為に我々チームはナノシステムによって細胞を変異させてファンタジーのような世界を構築させることが出来る研究を続けて来た。」

  「それは不道徳だ。君たちの研究は人類の栄えある未来の為の研究だ。」

「ナーンセンス!それは初期的なテーマでしかない。ナノシステムで細胞を変異、または遺伝子を操作する?? 時空間転移? そんな事で未来が明るい物になると信じているのか? あんたたちの首についているのは猿や犬の首か何かか? バカげている。」

  「バカげているのは君の方だ。君の提案は却下する。」

  「タン教授。君の提案には吐き気を催す。」

「偽善。無知。我儘。なぜ、あなた方は全体を見ようとしない。いつもあるのは己個人の欲求だけだ。それを公的な物だと定義づけることで、自分を正当化しようとする。すべての生物は平等に生まれ、平等に生き、平等に死ぬべきだという事が、なぜお前たちに分からないんだ!」

  「タン教授。暴言を慎みなさい。」

  「君とはいずれ契約を打ち切ることになるだろう。」

  「覚悟しておきたまえ。」



「僕は人間というのは魔法使いだと思っています。言葉は呪文であり、より良い未来の為に皆が皆、呪文を唱える。悪意のある言葉は凶器となり人を苦しめ、自然を破壊する。良い言葉を唱えていれば、きっと未来には良いことがある。そうやって人類は進化していったんじゃないでしょうか?」


*****************


 一筋の光さえ無い真っ暗な部屋の中で、男は飛び起きた。

 全身に冷たい汗を掻いている。

 息が荒い・・・。


*****************



<青い猫のポケット>


「さて、皆様の為に、僕はミナイでいろいろと買い物をしてきました。」(ぢゃ。)

「何々? 何を買って来たのよォ、早く見せて!!」

 青い猫はお腹の愚者の小箱(フールボックス)から何かを取り出す。

   音楽が鳴る。

要救命者発見印鑑(ゴニゴスタンプ)ぅ~!」

「何だよそれ?」

「これはねえ、ピンチになった仲間を仲間同士に知らせるスタンプなんだ。これをみんなの血を混ぜたインクを入れて押すと、誰がピンチになったか分かるんだよ。」(ぢゃ。)

「ふ~ん。なんか、使えそうもないね。」

「の✕太君は呑気だから一番危ないんだ。いっぱい押しといてあげるね!」(ぢゃ。)

「うわぁあ! やめろ! それ結構痛いじゃないかぁ!!」

 暴れまわるホ✕クに青い猫があちこちにスタンプを押しまくる。

  ぐったりする✕ーク。

「そして次が・・・」

「ちょっと待て、なんでお前は青くて、ずんぐりで、手が丸いんだ!」

「細かい事は気にしちゃダメだよ、のび✕く~ん。」(ぢゃ。)

「は・・話し方も変だぞ、お前!」

  ホー✕を無視する青い猫

「|簡単瞬間移動魔法陣絨毯インスタントゲートぉ~。」(ぢゃ。)

  音楽が鳴る。

「これはねえ、どこでもいつでも瞬間移動魔法陣(ゲート)が使える優れモノなんだよ。ボクが持ってた≪ど✕で✕ド✕≫の方がずっと優れてるけどね~。」(ぢゃ。)

  ノックの音

「すいません。✕子✕二雄プロダクションの者ですが・・。」


*****************


 彼は飛び起きた。

「やばい・・・苦情来ないだろうな。」

  クロが足に爪を立てている。

  息が荒い・・・。


*****************



 今回でアレイスター編は終わりです。

次回の話は、実は当初は一切予定していなかった話となります。前にも書きましたが、ホークはたぶん出てきません。周りのうねりのような物を書こうと思っています。ただ、今回適当に描いてきたツケが回りそうなのでいったん設定を見直しています。人物の名前や道具関連の能力や性能を書き留め始めました。こういう作業は実は一番好きな作業で、昔漫画を描いていたころにゲームの取り扱い説明書みたいなものを一生懸命作っていました。それと、次回は新キャラも出てきます。本当は仲間がもう一人増える予定だったのですが、そのキャラはお蔵入りというか、仲間にならないと思います。ただ、別のキャラが仲間になるかもしれません。こちらもまだ分かりません。でもおそらくは今回の章では仲間にはならないでしょう。書いている本人が分からないというのは、結構作者として楽しい部分でもあります。

 そう言えば、アレイスターは魔導書なのにどうして本じゃないのか? とお思いでしょうけど、ハンターXハンターのクロロのような戦闘スタイルになるのは避けたかったからです。というより、最初の予定では本でした。本の表紙に口がついてて呪文を唱えるといった感じで考えていたものです。それがどうして組紐なったのか、僕自身でもよくは分かりませんけど、その方が意外性があって面白いと思いました。あの唇のレリーフは昔の高名な魔法使いの霊力が封じ込められていて、高度な魔法を連発する。だからこそ持ち主は飛び切りの魔力を持った魔法使いにしか扱えない代物となっています。

 ところで、話は変わりますが、ネタバレを嫌う人がいます。

 ところが自分は一向に平気なタイプなのです。

物語はつまるところ面白いか否かでしかないと思っているせいで、ネタを先に知っている事で、作品の面白みが半減するとは思っていません。要はそのネタに行くプロセスが必然であって作品としてうまくできているかどうかと思っているからだと思います。

 僕は若いころ時間さえあれば映画を観てきました。それこそ貪るようにです。年間で300本以上見ていた年もあります。そうこうしてるうちに、物語の骨子のような物が何となくわかるようになり、最初の数分で大体の話が読めるようになります。だからと言ってすべて最後まで見たし、本当に面白い話は、それでも面白かった。

 いつか自分の話もそれくらい面白い話になればいいなと思います。

 クロが飽きてきて、僕の足ではなく、段ボールを齧り始めていますので、そろそろ寝ようかと・・・。

そういや、邪魔しに来た時、クロのヤツ、PCを操作してルビを入れたんですけど、そのやり方が未だに分からない。パソコンの操作は僕はネコにも劣るのであります・・。(トホホ)

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