アレイスターには手を出すな!! 拾
この秋は話題の漫画がアニメ化されていて、その中でもチェンソーマンは期待度大だった。呪術回戦と鬼滅の刃が来年で、見てるアニメはスパイファミリーだけだったのでございます。(それもスパンが空いたけどね)まあ、そんなこんなでチェンソーマンを見てた訳なんですよ。それでエンディングでパワーちゃんを見てて「パワーって・・・天使だよなあ・・。」とか考えてたら、ふとあることに気づいて、『ヤバイよ、ヤバイよ、ヤバイよ!』←(ここはデカ文字)となってしまいました。
何がヤバいのか・・・それは・・。
私、シャレというか、体のいい言葉で言えばパロディとかオマージュとかになり、低俗な言い方をすればパクリとも言われるわけですが、かなり好きで名前やら地名やら秘宝の名前やらをパロってます。(自分としてはパクりとは言いたくない。)
言い訳になります。実はチェンソーマンの1巻を読んだのは半年くらい前です。絵柄がちょっと趣味に合わなくてそれきりになってしまったのですけど、確か蝙蝠の悪魔の所までです。ところが、自分でも魔人を出そうとしていたのはもっともっともーーーーっと前の事で、全部何かを操る能力を持ってる事にしようと画策しておりました。(ネタバレ)それでショーンは水を操る魔人にした訳なのですが、血を操る魔人ブラドーもその時考えてました。それで気づいてしまったのです。
「パワーとブラドー類似品じゃね?」・・・と。
しかも女性型、しかも角がある。死体を悪魔が乗っ取った=魔人 ザンキの体の一部を食べる事によって人間が=魔人になる。ここも似てる・・・。
(もっとも血を操っても、器物の武器として使う予定はないけど)
血を器物として操るだけならチャンピオンの漫画にもあるけど、これは・・・まったくの偶然なのです。偶然なのになんで角まではやしてしまったのか・・・だいたいショーンやガスやベアードやフーケには角無かったのに!
まさに逢魔が時・・。(使い方が合ってない気がする)
金髪と書かなかった(多分)のだけはセーフ。黒髪のつもりでしたから。でも金髪もいいか・・・
いや! 金髪にしたら完全にパクリじゃねえーか!
でも性格違うし(本当にそうか?)
悩み悩んで悩ましい今日この頃であります。
夜半から降り始めた雨は人々の眠りを深く深く誘っていた。
昨日の嵐のような出来事は、きっと町の人々の記憶に深く刻まれることになるだろう。ホークたちもくたくたになるまで働いたおかげで、翌日に目を覚ましたのは正午をだいぶ過ぎてからの事だった。
マーサの宿屋は町から離れた場所にあったお陰で無傷のまま残っていた。宿屋に泊まっていたのはホークたちを含めて三組の旅人がいたが、他の二組は宿代も払わず逃げ去った後だった。
マーサは怒る気力も無くして、無言のまま帰るなりベッドに横たわった。
ホークたちが目覚めた時、マーサはまだ眠っていたようだ。無理もない、歴戦の賞金稼ぎだったとはいえ、久しぶりの激しい戦闘だったのだから。シュセとサラも眠っていたが、カイドーとホークはほぼ同じ時間に目を覚まし、修道院へと向かった。グラとポッターがまだ負傷者の手当てをしている筈なのだ。
宿屋の外に出ると人間の姿をしたユンがつまらなそうに立っていた。まだ結界の影響があるせいか、どことなく不機嫌そうである。ユンにはあまりやることが無い。修道院へ行くと聞いて、ユンもついて行くことにした。
三〇分後・・・カイドーとホークは修道院の一室にいた。
そこはかつての院長ボーマンの私室である。ヴェルダンディはそこのベッドに移され、グラが夜通しで看病をしていた。お陰でグラの目の下は隈で青黒くなっている。おそらく一睡もしていまい。負傷者の中には治療中に亡くなった者も多かったに違いなく、心身ともに参っている筈だった。
「グラ、少し休んだらどうじゃ。」
「ありがとう。でももう少し。ここで起きてる。」
グラも元はこの修道院で暮らしていた修道士である。とある事件をきっかけに、破門され出入り禁止となったのだ。だからと言って懐かしさの為に残っているわけではない。グラにしても二度と戻りたくない場所でもある。しかし、ヴェルダンディは別だ。彼女たち3姉妹には相当可愛がられていたのだ。ヴェルダンディの行く末がどうなるのかも気になる。
「ゆっくり眠れたかい、婆ちゃん。」
「痛みは激しいが、何とか眠れたよ。坊主、名は何と言ったかな?」
「ホーク。」
「ホークか。お前さんはラグナロクの転生者じゃろ?」
ホークは答えなかった。
「まあよいわ。転生者じゃろうとなかろうと、今を生きてるのはお前さんじゃ。」
「伝令は飛ばしたのかい、院長。」
ホークの言葉にグラとカイドーがハッとしたようにヴェルダンディを見た。ホークの言う通り表向きはボーマンを院長としていたのだが、本当はヴェルダンディがコールレアン修道院の院長なのである。そして十秘宝の一つ愚弄王リーの魔導書を密かに守護していたのだ。
無論ホークはヴェルダンディの腕を見た時から、腕に巻かれているのが愚弄王リーの魔導書である事は判っていた。本物を持つ以上、強力な魔法使いであり、修道院の中でも相当な地位にいることは容易に想像がついた。さらに、図書館の中にある 愚弄王リーの魔導書が偽物なのは説明するまでもなかった。
「うむ。先ほど伝令を飛ばした。二~三日で竜騎兵団のゼンに届くだろう。お前たちは、その前に町を出なさい。マヌルカンからも使者がくれば、きっと拘束される。」
「ホークが何をしたって言うんですか!」
グラが真剣な目つきでヴェルダンディを睨みつけた。
「何もしやしない。わしらと町を助けてくれた恩人じゃ。しかしな、グラ・・」
「あれから何も変わってないんですね。ギース教は。」
グラが吐き捨てるように言った。
「・・そうじゃ。何も変わっていない。しかしな、グラ。わしは、お前さんたちに希望を見た。希望の未来が微かに見えたのじゃ。その未来をお前たちに託してはいけないかい。」
「・・・・。」
ヴェルダンディは真剣な眼差しでグラを見、その手を握った。
うつむいていたグラは、ヴェルダンディを見、その手をそっと握り返した。
ヴェルダンディは満足したように目を閉じた。
「実は、婆ちゃんに頼みがあって来たんだ。」
ホークがしばらくして話し始めた。
「十秘宝のありかを知っていたら教えてほしい。特に魔槍バベルのありかが知りたい。」
「・・・わしが知っているのは、そのバベルのありかだけじゃ。しかし・・遅かったの。バベルはロアの軍団に持ち去られてしまったわい。」
ホークは難しい顔をして考え込んでいた。
「ホークよ。なぜ、バベルにこだわる?」
「いや・・何でもないよ。」
ホークが何かを隠しているのは誰の目にも明らかだったが、3人ともそれ以上、問い詰めはしなかった。その時が来ればホークは話すだろうし、それを聞くのが怖かったからでもある。
「・・ただ。」
と、ヴェルダンディは口淀んだ。
「一つだけ気になる名前がある。」
「名前じゃと?」
「ガルマンの首都ベルーストにある皇帝の居城はハールウという。」
「なるほど。ただの偶然か、それとも単に名をもらって付けただけか・・?」
カイドーはそう言われてみればと相づちをするが、それにしても名前だけでそれが十秘宝に結びつくのかどうかはかなり怪しい。ただの偶然かもしれないし、その名を知ってあやかって付けるという事もありうる。
そのハールウという名前は、十秘宝のひとつ<ハールウの動く城>という秘宝の名前である。
「ありがとう。それで十分だよ。行って見て調べてみれば何か分かるかもしれない。」
カイドーは少し沈思した。ガルマンはフリーシアの東北東に位置する国で、正式にはガルマン帝国と言う。ガルマンはギース教がまだ流布されていない国の一つで、そこならギース教の干渉もないだろうが、ちょっと厄介な国であった。
「ガルマンならば、わしらの追手も入り込めぬ。色々と面倒な国ではあるが、フリーシアに留まるよりは安全じゃろう。」
「ふむ。しかしの。」
「お主たちなら、なんとかなるじゃろ?」
「・・・心配しても始まらぬ・・か。」
「その通りじゃ。それはそうとカイドー。そこのボーマンの絵を外してくれ。」
カイドーはヴェルダンディに言われるがまま、壁にかかっているボーマンの油絵を外した。するとそこに隠し戸棚があり、そこを開けると一本の紐がぶら下がっている。それを引くとその隣にある戸棚がどんでん返しとなって隠し部屋が現れた。そこには間違いなく金貨だろうと思われる皮の袋が棚にいくつも並んでいた。
「ボーマンが必死に貯めこんだ金貨じゃ。餞別に持って行くがよい。」
「・・こんなことをして大丈夫か?」
「心配ない。ボーマンは死んでおるし、その金がそこにあることを知る者はわしの他にはいないのでな。」
ヴェルダンディは楽しそうに微笑んだ。本当の院長は彼女ではあったが、実際に執務を執り行い、修道院を仕切っていたのはボーマンである。他の修道士たちはおろかボーマンでさえもヴェルダンディが院長とは気づいてはいなかったのである。知っているのは4大司教と教皇に近い者たちだけである。彼女はボーマンのやり方を苦々しく感じてはいたものの、影として愚弄王リーの魔導書を守る責務に就いている以上、口出しすることは許されなかった。また、ボーマンの不正を暴いてマヌルカンに上訴することもしなかった。
ゼンと同じようにサイコメトリーの能力を持つ彼女は、修道院がこうなる事も、三姉妹のうち自分一人だけが助かってしまう事も、カイドーとホークにボーマンの隠し金を渡すことになる事もすべて視えていたとしたら・・・それは十分過酷な運命だったと言えるだろう。
「これを子供と老人で運ぶのは少しきついな。」
「じゃあ、ユンを呼んでくるよ。」
ホークは返事も待たずに部屋を飛び出した。こういう所はやっぱり子供である。カイドーたちは微かにほほ笑んだ。そして、ホークは飛び出した途端にまた戻って来た。
「婆ちゃん、婆ちゃん。婆ちゃんにプレゼントがあったんだ!」
ホークはベルトのポシェットから七色の組紐を取り出した。一見すると愚弄王リーの魔導書に見える。
「オイラと友達で一緒に作ったんだ。秘宝を譲ったと分かったら、婆ちゃんもただじゃ済まないだろ。」
ホークは軽くウインクすると、部屋を飛び出して行った。
「一応・・・偽物は用意してあるんじゃが・・。」
ホークに渡された偽物の愚弄王リーの魔導書は似せてはいるが、本物とは全く違っている。子供が作ったであろう手作り感満載の不格好な代物である。
カイドーはヴェルダンディを見て苦笑いしている。
ヴェルダンディはまじまじと偽の愚弄王リーの魔導書を見た。
きっと一生懸命に作ったのであろう。針でも刺したのか、組紐にわずかに血が滲んでいる所もあった。
「せっかくだし・・・貰っておこうかの。」
ヴェルダンディは偽の愚弄王リーの魔導書を大事そうに胸に抱いた。
礼拝堂は廃墟と化し、瓦礫はある程度片付けられたものの、雨ざらしままのまだ危険な状態である。ゆえに怪我人は修道士たちの食堂に集められ、元気な者たちがその治療に当たっていた。生き残った者たちのほとんどは衛士である。回復魔法の使える者はいないので、ポッターの指導で修道院にある薬をかき集めての治療であった。
ユンは今、そこにいた。さすがに黒豹の姿ではうろつけないので、人間の姿になっている。ユンが食堂の厨房に入ると、そこのコンロに乗っているフライパンの中に丸くなって眠っているポッターを見つけた。
「猫ノ丸焼キ、マズソウ。」
ポッターの耳がクルリと回る。
片目を開けて、それがユンだと分かると、再び目を瞑った。夜通し働いていたのはグラだけではない。ポッターもまた大忙しで動き回っていたのだ。そして、ようやく一息つける状態になったのである。
「コンロ火ヲツケルカ?」
「イタズラは止めておきなさい。ぢゃ。」
ユンはニタニタ笑っていた。
ちょうどそこへホークがやって来た。
「ユン! ここにいたのか! 手伝ってくれ。」
「ヤレヤレ。人使イ荒イ。ホーク、クソガキ。」
「なんか、言ったか? コイツ。」
ホークがユンの頬を両手で引っ張る。
「ヒュイマヘン。ニャニモヒュッテマヘン。」
「分かればよろしい。」
腕組みしてドヤ顔でいるホークの背後で、烈火のごとく怒っているユン。しかしユンは反撃できない。やったら最後、頭が焼けるように締め付けられる。
「ラグナロク殿。」
「うん?」
ポッターが二本足で立ち上がり、胸に手を当てこういった。
「ご挨拶が遅れました。わたくし、ホーリー・ガーフィールド様の弟子で、ケットシーのポッターと申します。ホーリー様よりあなた様のお役に立つよう仰せ付かっております。」
ホークはポッターをマジマジと見て、両手で抱えた。ポッターは脇を掴まれて両足がブラブラしている。ホークはポッターを舐めるように見つめた。
ポッターの毛色は黒である。下あごから胸にかけて大きく白い毛があり、四つ脚の先も靴下を履いたように白く、老人が長い髭を伸ばしたように見える。ただ、左脚だけは靴下を履き間違えたか膝くらいまでのハイソックスになっている。
「あの・・何か、お気に障りましたか?」
「・・・オスか。」
「どこ、見てんぢゃ、あんたは!」
ポッターが人間だったら真っ赤になっていたところだろう。
ホークはポッターを大理石の作業台の上にそっと降ろした。
「お前、ただの猫だろ。黒猫2匹はキャラ被るでしょ。」
「誰ガ、猫ダ!!」
ツッコミの勢いでユンがホークの頭を殴ったとたん、ユンの頭は呪いの仮面で強烈に締め付けられた。ユンはあまりの痛さに厨房の床での悶絶し始めた。
「痛ってぇ・・・。しかし・・ほんとにバカだな、お前。」
「ぐおぉおお!!!!」
(痛い! 苦しい! でもちょっとだけ気持ちよかった) By ユンの心の声
「あのぅ・・ラグナロク様? ぢゃ。」
「オイラの名はホーク。ラグナロクじゃない。今度その名で呼んだら蹴っ飛ばすからな。」
そう言えば戦闘中にドレイクに蹴っ飛ばされたポッターである。
「・・はい。承知しましたラ・・ホーク様。ぢゃ。」
「ホークでいいよ。ホーリー。」
「僕の名はポッターです。今度その名で呼んだら引っかきますよ、ぢゃ。それにホーリー様は残念ながら身罷りました。ぢゃ。」
ホークはちょっと変な顔をしたが・・「そう。」と軽く返事を返しただけだった。
結局・・・・ホークは何を思ったかすべてを運ぶことは止めて、一人2袋だけいただくと、大半を隠し金庫に残したままホークたちは修道院を後にした。どのみちすべてを持って行っても旅にはかさばる荷物にしかならない。そう考えたのだろう。それに金の使い道は他にもある。
その夜、眠い目をこすりながらマーサの宿屋にマッシとエストロを除いた全員が揃った。
ポッターは初めて会うメンバーに自己紹介をした。いつの間にかホークのパーティーはカイドーのパーティーを飲み込み、総勢10名の大所帯になってしまったようだ。
ところで、エストロたちとミナイの村に行ったはずのポッターがどうして(どうやって)コールレアンにやって来たのか? その訳をポッターが皆に説明した。
「という訳で。僕の代わりにマッシさんたちとミナイに行ってもらえるメンバーをお願いしたいのです。ぢゃ。」
「・・ま。カイドーとグラが適任だろうな。」
シュセが腕組みしながらそう言った。
「あたしも行きたいけど、ダメかなあ?」
「お姉ちゃんが行ったら、全滅するよな。」
ガツン!(殴る音)・・・ユンがほくそ笑む。
「悪いけど、私は他にやることがある。」
グラが意を決した面持ちで答えた。
実は皆が集まる2時間ほど前の事だ。
治療が一息つき、ヴェルダンディも容態が安定してきていたので、ポッターとグラはマーサの宿屋に帰って来ていた。グラはまだ寝ているサラの隣のベッドに入ったが、目が冴えて眠れない。ほんの4~5分横になっただけでベッドから出た。階段を降りるとマーサが夕飯の支度をしている音が聞こえる。邪魔するのも何なので、グラはそのまま外へと出た。
夕日が沈みかけて空が橙色に輝いている。雨は既に上がって明日はきっと晴れるだろう。そんな空だった。
グラは町に続く小道を散策することにした。
疲れている筈なのに、なんとなく気が高ぶっている。その理由もなんとなく分かっていた。放牧場の柵にもたれて座ると、町の方角からカイドーが歩いて来るのが見えた。カイドーもグラに気が付いたらしく、ゆっくりと手を上げた。
やがてカイドーがグラの所までやってくると、カイドーはグラに話しかけた。
「こんな所でどうしたんじゃ? 明日には出発するから、今日は早めに寝たらどうじゃ。」
「ありがとう。でも何だか眠れなくて。」
カイドーは「ふーむ。」と少し唸ると、沈みゆく夕日に目をやった。
少しばかりの沈黙の後、カイドーがポツリと話し始めた。
「まったくもって自信喪失じゃわい。」
「え?」
「ホークの事じゃ。ジモン島の時もそうじゃったが、あの魔力の量、魔法の威力、判断力、術の多彩さ、どれ一つとっても儂は足元にも及ばぬ。そう思い知らされたのじゃ。」
カイドーは杖を掴んでグラの隣に腰を下ろした。
「だって、ホークは伝説のラグナ・・」
「そうじゃ。だが儂は、心のどこかで魔法使いとしては世界一じゃと自負しておった。伝説の魔法使いラグナロクなどとっくに追い越したと・・思っておった。昨日も儂一人ならもうこの世にはいなかったじゃろう。ロアの軍団の連中との力の差も思い知らされた。」
グラは沈黙した。カイドーとは長い付き合いになる。グラにとってもこれほど頼りになる魔法使いはカイドーが初めてだった。世界一と思っていたとカイドーは言ったが、グラもそう思っていた。
「人に魔法博士などと言われて、浮かれておったのじゃ。研鑽する時間は十分にあった。」
「・・・それは私も同じ。ギース教の修道士になった時、10年に一人の逸材と言われ、回復と防御呪文では誰にも負けないと思っていた。」
「実際そうじゃろう。お前さんほどの回復士は世界に数人とおらんぞ。」
「あなただって世界屈指の攻撃魔法のエキスパートだわ。」
お互いに噴き出して大笑いした。
「・・・世界は広かった・・って事ね。」
「そのとおりじゃな・・・・・。」
「でも自信を失うのは早計ですよ。ぢゃ。」
いつの間に来たのか、二人の目の前にちょこんと座ったポッターがいた。
「僕が見てもお二人の実力は世界でも3本の指に入るほどの実力者でしょう。そのお二人が同じパーティーにいるという事はまさに奇跡のようなものです。ぢゃ。」
突然のポッターの出現に、カイドーもグラもちょっと驚いたが、グラはポターを見てにっこりと笑い、両手で抱き上げると自分の膝の上に乗せた。
「ポッター様。お願いがあります。私を弟子にしてください。」
「ぢゃ?」
「貴方の医療の知識、腕前は私の及ぶところではありません。私を弟子にしてください。そして、あの<アリアドネの糸>と<クロッサスの鈎爪>を私にも教えてほしいのです。」
ポッターはグラの瞳を見た。真剣な思いが伝わる真っ直ぐな瞳だった。
「弟子の事は・・まあ良いのですが・・・<アリアドネの糸>と<クロッサスの鈎爪>については生半可な気持ちでは習得できませんよ。ぢゃ。」
「命を懸けても習得して見せます。」
「そうではありません。あれは修行で得られる能力ではありません。貴方がおっしゃる通り命懸けになるでしょう。ぢゃ。」
ポッターはグラの視線を外して答えた。
「覚悟は出来てるわ。」
沈んでしまった夕日の残照がグラの顔を赤く染めていた。
「私はポッターとしばらく離れます。」
シュセたちには寝耳に水だった。
「ドレイクさんにお願いがあります。おそらく僕とグラさんだけでは不都合が生じるハズです。どうか一緒に来ては頂けないでしょうか? ぢゃ。」
「俺が?」
ドレイクは何のことか分からずにいた。
「ちょっと待ってくれ、じゃあ、俺はどうなるんだ?」
シュセにも何のことか理解できなかった。
「ミナイには儂一人で行く。儂もギリアンの魔窟で一皮むけたいのでな。シュセ、お前はホークについて行ってやれ。世間知らずのお嬢さんとユンだけでは旅もままならんじゃろう。」
「旅って、いったいどうするんだ、これから?」
「シュセさん。俺たちはガリアン帝国って所に行くんだ。」
「ガ、ガリアンだとぉ!」
シュセは腕組みして考え込んだ。
「確かに、このメンバーじゃホークのお守りは俺しかいねえよな。それにしてもよりによってガリアンとはな・・。」
「そこに十秘宝の<ハールウの動く城>があるかもしれんのじゃ。」
「確かな情報なのか?」
「いや、何も分かってはいない。だからこそお前が必要なんじゃ。」
シュセはしばらく考え込んだ後、短い溜息をつくとにっこりと笑った。
「しょうがねえな。いいとも、俺でいいなら一緒に行こうぜ、ホーク。」
ホークの笑顔がシュセをまた笑顔にした。
「さあさあ、悪だくみは終わったかい。飯の時間だよ。」
マーサが大鍋を持って現れると、サラのお腹がぐぅ~~っと鳴った。
1年後・・・・
「父さん、ようやくこれで完成だね。」
「ああ。どうだ、いい出来だろう。」
ベクターとトニーの親子は町の入り口に出来た新しいモニュメントを前に汗を拭った。
そこには1年前の騒動の時に大活躍したホークのゴーレムに似た陶磁器で出来たモニュメントが飾られている。身の丈3mはあるこのカラフルなモニュメントは、ベクターとトニーの二人が焼き上げたものである。もちろん、こんな大きな陶器は焼けないので、部品を作って組み合わせていくという作業だ。
やがて、その像は、コールレアンの<守護神マーサおばさんの像>として町のみんなに愛されることとなるのだ。
たった一人を除いては・・・。
「いったい! これとあたしのどこが似てるのさァ!!!」
えーと。前書きでネタバラシしちゃいましたけど、彼らが再び出てくるのはまだ先になります。でも魔人の一人くらいは出て来るかも。大筋は出来てるものの、細かいところは成り行き任せのいい加減な私です、はい。アレイスターはひとまずこれで終わりです。次はおまけを書きます。本筋とはあまり関係ない話になりそうですが、ちょっとアレイスターで書けなかった部分とか、遊びを書くつもりです。
後日譚の伏線になるかもしれませんけど。
因みに、今回の終わり方を見てみると、アニメで言えばシーズン1の終わりかな。みたいな終わりになってます。次が始まる時には≪新章突入!!≫とかの宣伝文句が並ぶ感じでしょうか?
でも、まだまだ続きます。
まだ伏線を回収しきれてませんしね。
ところで、ポッターの事です。
ポッターはサブキャラとして登場させて、そんなに活躍するキャラの予定ではありませんでした。ところが書き進めてゆくうちにこんなにも活躍する美味しいキャラになるとは思ってもみませんでした。ポッターは僕の罪滅ぼしです。早くに亡くなった黒猫を物語の中で生きさせたくて登場させたのです。せめて僕の物語の中で元気に生きて欲しい。今でも涙が出そうです。では、またお会いしましょう。おやすみなさい。




