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魔芒の月  作者: 弐兎月 冬夜
30/63

アレイスターには手を出すな!! 四

 ハリーポッターの死の秘宝PART2を観ました。時々TVで放送されたものを断、的に見ていただけで、じっくり観る機会が今まで無かったのだけれど。けっこう思考が自分と似ているなと感じました。それは自分が世界的人気作家に比肩するというつもりでは毛頭ないが、人間の考える事は(いつも感じる事ですけど)似たり寄ったりですなあ。という事です。

 僕は言葉には魔力が潜むと思っている。多くの脳科学者や心理学者の明言を待つまでもなく、人々は自然にその威力を直感的に認知している。言霊や呪文、オマジナイ、ゲン担ぎなど、心霊的迷信的事象に人々は縛られて生きている。人が人として進化してきた理由は言語にあるとすら僕は思っている。


 サビオ爺さんは今年で77歳になる。

77でもまだまだ元気な物で、今も農夫として現役だ。毎朝、畑に出向き、作物の手入れをしている。村はずれにあるサビオ爺さんのジャガイモ畑ではジャガイモがスクスクと伸び、今年は豊作の予感がしているから老体に鞭打って畑仕事に行くのも苦にはならない。

 今日は珍しく深い霧に覆われていた。サビオ爺さんはここ2~3日少しばかり寝不足である。何故なら修道院の鐘が毎日のように夜中に鳴るからだ。今日は眠い目をこすりながら薄明のあぜ道を歩いていた。

「誰だ、こんなことをしやがったのは!」

サビヲ爺さんは自分の畑で恐るべきものを見た。害獣除けの策が無残に壊され、収穫間近のジャガイモが根こそぎ掘られて散らばっている。間違っても動物の仕業ではない。


 ♪お・で、お・で、お・では、仲良し、サンダとガイラ~♪

 ♪お・で、お・で、お・では、陽気な、サンダとガイラ~♪


 だみ声で歌う、何者かの歌声が聞こえている。どうやら犯人は鼻歌交じりに悪戯の真っ最中らしい。烈火のごとく怒ったサビオ爺さんは、歌声のする方向に向かって行った。手に持った鍬で一撃をお見舞いしてやるーっと意気込んで向かったのだが!

 霧に浮かぶ人影が近づくにつれ、その勢いは次第に萎えて行った。歌声の主は5~6mはあろうかという巨人だったからだ。


 ♪お・で、お・で、お・では、仲良し、サンダとガイラ~♪

 ♪お・で、お・で、お・では、陽気な、サンダとガイラ~♪


「あんちゃん、ここの土はいい土だんべ。」

「んだな、ガイラ。こりゃいい子が育つべ。」

巨人の一人がジャガイモを摘まんで抜いて、そこに指で穴をあけて白っぽい何かを入れて土をかぶせる。もう一人の巨人がそこにジョーロ(如雨露)で水を撒いていた。いや、それは水ではなく赤い液体”血”のようであった。

「さあて、これで最後だんべ。」

サンダはガイラに、大きなツボを逆さにして振って見せた。

「オラもこんで終わりだべ。」

ジョーロの口から最後の一滴が落ちて、地面に消えた。

(ひぃぃいええ・・・。)

 サビオ爺さんは悲鳴を必死にこらえた。

(今、見つかっちゃなんねえ。)

 足がガクガクと震えて歯の根がかみ合わずにカチカチと音を立てていた。走って逃げだしたかったが、すでに腰が抜けている。サビオ爺さんは四つん這いになりながら、それでも少しづつ畑を離れようとしたのだが・・

(だ、誰だ。おらの足を掴むのは!)

サビオ爺さんが恐る恐る自分の左足首を見ると、白い骨の手が土から生えて、しっかりと握っている。

「ひぃぃいええ!!!」

今度は恐怖に駆られて、大声で悲鳴を上げた。

「おや、お客さんだべ、あんちゃん。」

「んだな、運が悪かっただな。爺さん。」

 サビオ爺さんの悲鳴に呼応するように、畑のあちこちから土が盛り上がり、骸骨の兵士が生えるように飛び出してきた。



「なんだ、なんだ?」

 早朝から修道院の鐘が鳴り響く。人々は家から飛び出し、周りを見渡した。修道院の城門が開き、武装した衛士の一団が飛び出していった。連日の警報で彼らはすぐに飛び出せるように準備していたのだ。

「今度は城壁じゃない! 東の結界に魔物の反応だ! 全員気ばれー! 手柄を立てろぉ!」

 衛士の一団の隊長らしき男が皆を鼓舞する。

それを見ている市民の誰もがのんびりとそれを見ている。今までもこういった事はあったが、すぐに治安部隊が追い払っていたからだ。物見遊山で治安部隊を追いかけていく者もいる。

 

「何事です、騒々しい。」

 修道院の朝は早い。院長のボーマンも例外ではない。朝の日課である礼拝を邪魔されて少しばかり機嫌が悪いが、それでも落ち着いている。コールレアンの町にロアの軍団が現れようとも、撃退できる自信があるからだ。

 しかし、普通の修道士たちはそうはいかない。絶対防御を誇るコールレアン修道院にいるとはいえ、心が騒ぐのである。

「今しがた村の東側に魔物の反応が現れました。しかも1体や2体の反応ではありません。」

狼狽(うろた)えるな。どれほどの魔物が来ようと、この中は安全だ。治安部隊を外へ出したら、防御結界を張ればよい。ヘクターにそのように伝えなさい。」

「わ、分かりました。」

「東か・・。塔の見張りは?」

「今、伝令を走らせております。」

あたふたと衛士の一人が走ってきた。

「ご報告します! 敵の数は不明ですが、影から見るに・・・」

 その衛士はゴクンと唾を飲みこんだ。

「おそらく巨人が2体こちらに向かってくる模様です。」

「巨人だと!?」

 2階建ての建物ほどの人型が、霧の中でこちらに向かってくるのだけは確認できたようだ。魔物の中でも巨人は異例である。めったに見られない種族だが、その恐ろしさは世界中に鳴り響いていた。

 人間でも巨人と呼ばれる人はいる。大抵は2mを少し超す程度だが、稀に2.5m以上の人もいる。しかし、それは巨人症と呼ばれる病気であって健常者ではない。そもそも人間の身長が大きくなればそれに伴って心臓の負担が重くなるからだ。物理的に3m以上の人間は動くこともままならなくなるだろうと言われている。

 だが、魔物の巨人は違う。鈍重そうに見えても、その破壊力とスピードは大型のドラゴンに匹敵するとまで言われていた。

「すぐに治安部隊を増員しなさい。1級修道士の中から主だった者も町へ派遣するように。」

「はい、かしこまりました。」

 ボーマンは右手の親指の爪を噛んだ。

「よりによってこんな時に・・。」

 そう、通常ならば竜騎兵団(ドラゴンウォリアーズ)が常駐しているのである。ところが今は4隊あるすべての部隊が各地に飛んでいる。一番近い4番隊のゼンが帰投するにしても数日はかかるだろう。最悪、防御に徹して彼らの帰投を待たねばならなくなるかもしれない。

「念のため、ゼンに帰投命令を出せ。」

「はい。承知いたしました。」


 

「騒がしいねえ。いったい何の騒ぎかね?」

マーサは2階の戸を開けて目を凝らしたが、濃い霧で何も見えない。修道院の鐘は早鐘に変わり、緊急事態を告げている。

「マーサ。何か見えるか?」

階下のカイドーがマーサに問いかけた。

「この霧じゃ何も見えやしないよ。けど、ただ事じゃないね。」

マーサは修道院の鐘がこれほど早く鳴っているのを経験したことがなかった。

「相当な魔力の量じゃ。これは儂らも出張るしかあるまい。」

 カイドーの判断は正しかった。

サンダとガイラが撒いた骨の種(ボーンシード)は約4000。その全てが骸骨の武装兵士として土の中から生まれ出たのである。少々増員したところで、一般の兵士ではとても手に負える代物ではない。しかも骸骨兵士はほぼ不死である。ゾンビと同じく死を恐れぬ兵士であり、更に頭蓋骨を粉々にでもされない限りその動きは止まらないのだ。

「グラとサラは町の人の非難を優先させろ。わしの魔力探知では、囲まれている様子はない。西側に逃げれば何とかなるだろう。シュセとホークは儂と一緒に行くぞ。」

「待ちな。」

マーサが飾ってあるハルバートを外した。

「あたしも行くよ。あの戦闘バカはいないンだろ。あたしが前衛を務めてやるよ。」

「はい。おばさん。」ホークが小さな革袋をマーサに渡した。

回復薬(ポーション)だね。助かるよ。今は持ち合わせがないからね。」

 マーサがにっこり笑ってその革袋を振ると乾いた音がした。一般的に回復薬(ポーション)と言われるものは飲み薬が主流だが、戦闘のさなかに使うには(いささ)かのんびりしすぎている。ホークやカイドーたちが使う回復薬(ポーション)は全て丸薬だった。

「さあ、行くよ!」

マーサは簡易的な胸当てを装備すると、ホークたちの先頭に立って宿屋を飛び出した。


 町の東側では既に戦闘が始まっていた。

治安部隊はおよそ100人。それに増員された衛士と1級修道士を合わせても200。4000と2体の巨人相手では勝負にならない。ほぼ一方的なロアの軍団の蹂躙である。瞬く間に治安部隊の隊列は乱され、あちこちで殺戮が繰り広げられた。

「なんだ、こいつらは!」

 衛士の刃が骨を断ち切ろうとしても、骨は関節から外れてなかなか切ることが出来ない。しかも外れた骨がすぐに元通りになる。衛士が骸骨兵士の首を落とそうが、腕を切り落とそうが奴らは向かってくる。落とされた頭を首の骨の上に乗せて復活する物もいれば、片手に首を掴んだまま襲って来る者もいた。

 それよりも悲惨だったのはサンダとガイラに直面した者たちである。サンダとガイラに攻撃を加えても、皮膚に傷を与える程度で強烈な筋肉の束を断ち切ることが出来なかった。2体の巨人は筋肉の強靭さに加えて、圧倒的な破壊力で兵士を吹き飛ばし、捻じり殺す。援護の矢も火球の弾もサンダとガイラには虫が刺したくらいにしか感じられないようだ。

 しかも素早い。

鈍重そうに見える彼らだったが、暴風のように暴れまわる。

「あんちゃん、このパンツなかなかいいなあ。」

「んだか? オラはあそこが窮屈でムズムズすらあ。」

帆布(デニム)で作られた二人のパンツは攻撃で穴が開き、使い古したダメージパンツのようになってきていた。

「撤退! 撤退だああ!」

戦闘が始まって、ものの数分で治安部隊は敗走した。逃げ遅れた兵士と、急襲に驚き逃げる間もなかった人々が、次々と殺されていく。

 コールレアンにはカイドーたち以外にも賞金稼ぎ(バウンティーハンター)が滞在していたが、物量の差に防戦するのが精いっぱいの様子だった。

火球弾呪文(フィラ)!」

電撃呪文(テオトラント)!」

圧倒的な力の差には全詠唱(コンプリート)している余裕などない。強力な魔法でも名称詠唱(ビギン)では骸骨兵士たちを破壊することは難しかった。


「どうするカイドー! これじゃ勝ち目がない!」

「・・・。」

 百戦錬磨のカイドーもこの光景を見て、打つ手に思いあぐねている。

「とにかくグラとサラは町の人を非難させて。あとはオイラがやる。」

ホークはすぐに複製呪文(コピロボ)で10体ほどのコピーを作ると、一気に分散した。すぐに爆裂音が町のあちこちで聞こえ始めた。

「こいつは3分しか持たない。これからオイラは別の手を打つ!」

ホークの本体は一目散にある場所を目指して走り出した。

「シュセ! ホークをサポートしろ!」

「承知!」

「わしらも行くぞ!」

カイドーとマーサは目の前で戦う兵士の一団に向かって走り出した。


 陶器が並ぶ棚の下の戸棚の中で、トニーがガタガタと震えていた。人々の悲鳴と物が崩れる破壊音が冗談のように遠く感じる。

ガン! ガン! ガン!

 誰かがドアの扉を破る音がする。

 激しい音がして、ドアが吹き飛んだのが暗闇でもトニーには分かった。

 扉の細い隙間から白い骸骨が歩いているのが見える。

(こっちに来るな。こっちに来るな。)

 トニーは呪文のように心の中で繰り返す。骸骨はあたりの家具を手当たり次第に壊し始めた。そしてトニーが潜む棚の陶器を粉々に打ち砕くと、棚に手をかけ思いきり引き倒した。

「うわぁああ!」

 はずみで扉が開き、トニーは床に放り出された。

2体の骸骨兵士はトニーを見つけてカタカタと歯を鳴らした。

「た、助けて! 神様ぁ!!」

 一体の骸骨兵士が剣を振りかぶったその時、窓から撃ち込まれた鋼の玉が頭蓋骨を打ち砕いた。

少し離れた所にいた骸骨兵士が盾を構えると、2撃目の鋼球は盾にはじき返された。しかし、その隙に素早く入り込んだホークがその盾に手を触れる。

氷結呪文(レイズ)。」

その骸骨兵士が一瞬で凍り付くと、窓から飛び込んできたシュセが棍棒で頭蓋骨を叩き割った。

「大丈夫か? トニー。」

 ホークは優しい笑みを浮かべてトニーに手を差し出した。

「あああ、ああああああああ!」

トニーは奔流のように流れだす涙を止めることが出来なかった。小便でズボンが濡れている。

「いったい、ここに何があるんだ? ホーク!」

 シュセはいきり立っている。彼はクロスボウから弾球に変えているとはいえ、シュセの武器では接近戦は出来ない。せいぜい戦士の援護である。新手が室内に入ってきたらシュセでは対応できない。そのもどかしさがシュセの神経を逆なでしている。

「トニー、トニー! しっかりしろ!」

ホークがトニーの方を揺さぶると、トニーはようやく泣き止んだ。

「あ、あ、ホーク。ありがとう。」

「トニー、オイラが作ったマーサおばさんはどこにある?」

「あれなら窯の中だよ。もうそろそろ焼こうかと思ってたんだ。」

「案内してくれ。あれが必要なんだ。」

 トニーはフラフラと立ち上がると、それでもしっかしした足取りで外へ出た。幸い窯は無事である。トニーは窯の中に入ると両腕一杯に抱えた<ホーク作:マーサおばさん>と<ユンもどき>をホークに渡した。

「それを地面に置いて。」

ホークは杖で魔法陣を地面に描くと、そこに焼き物を並べていった。

「何をする気だ。ホーク。」

 シュセは気が気ではない。事態は一刻を争うのだ。

しかし、ホークはそれに答えず呪文を唱え始めた。薄い霧が風も無いのに渦を巻く。

地霊傀儡呪文(アラハバーキ)!」

全詠唱(コンプリート)の長い呪文が終わると、魔法陣は黄金色に光り輝き、置かれていた陶器の人形たちが成長し始めた。

「離れて! 踏みつぶされるよ!」

21体のホークの迷作たちは見る間に巨大化した。そして彼らは整列し、ホークの命を待っている。

「町の人たちを守って、敵を殲滅しろ!」

ホークの命令に、彼らはゆっくりと動き出し、戦場へと向かって行った。

「なんだ、こんな呪文初めて見た。」

 あっけにとられるシュセにホークは言った。

「オイラは奴らの頭を叩く。シュセはトニーを安全な場所へ連れてってくれ。」

そう言うと、ホークは走り出した。

「・・おもしれえ。・・・坊主、トニーとか言ったな。俺におぶされ。」

トニーに向けられた背中に、恐る恐るトニーはその身を預けた。

「行くぞ、振り落とされんなよ!」

シュセは猿のような身軽さで、西側へと向かった。


 突然現れた巨大なゴーレムの一団に戦況は一変した。

一方的な蹂躙になすすべの無かった人々の前に現れたゴーレムたちは、襲い掛かってくる骸骨兵士たちをものともせずに戦ったからだ。不死身の骸骨兵士たちはゴーレムの圧倒的な破壊力の前にその骨を粉砕されていった。


「開けろ!! 開けてくれー!!!」

 生き残った治安部隊の一団が、修道院の前にやって来た時、彼らには絶望が待っていた。コールレアン修道院はその城門を閉ざし、絶対防御結界を張ったからだ。普通の人間では触ることも出来ない。

 城門の中はどれだけ助けを乞うても、シンと静まり返っている。中の衛士たちは冷や汗をかきながら怯えた目をして外を見ていた。

「逃げろー! 後ろから来るぞーっ!!」

 誰かが城門に迫ってくる巨人を見て叫んだ。

逃げ遅れた仲間に出来る最大の助けがこれだった。絶対防御結界の中では、内側からも攻撃することは出来ない。透明な淡い光に包まれたこの壁は、全ての物質の透過を許さなかった。


 ♪お・で、お・で、お・では、仲良し、サンダとガイラ~♪

 ♪お・で、お・で、お・では、陽気な、サンダとガイラ~♪


「ヤバい。・・・に、逃げるぞ・・。」

誰かの声を待つまでもなく、治安部隊はバラバラに逃げ出した。

「ガイラ。こいつがなんとか壁とか言うやつだな。」

 巨人たちは足元で斬殺される衛士たちに気に留める様子もない。

ガイラは絶対防御結界を触ってみた。

「あっちっち。」

電気のような物が流れたが、それも気にしない。

「なんだかちくちくする壁だなや。」

「ほんじゃ、これはどうだべ。」

ガイラが思いきり拳を叩きこんだが、ほんの僅かに光が歪んだだけでビクともしない。

「少しへこんだべや。」

「んじゃ、壊れるなや。」

サンダは後ろに下がると助走をつけて突進した。しかし、激しく光が瞬いてサンダが弾き飛ばされた。サンダは衝撃で反対側の建物に突っ込み、家が崩れた。

「かってー壁だなやー。」

瓦礫の柱を握ってサンダは立てあがった。ガイラも崩れた石柱を拾って抱いた。


 ♪お・で、お・で、お・では、仲良し、サンダとガイラ~♪

 ♪お・で、お・で、お・では、陽気な、サンダとガイラ~♪


 鼻歌に合わせて結界をタコ殴りにしても、結界は揺るがない。

「どうすべ、あんちゃん。」

「骸骨ども、組み立てろ!!」

サンダの命令で数体の骸骨兵が組み合わさって、数台の投石器が出来上がった。ガイラは近くの建物を壊しまくって瓦礫を作る。

「そーりゃあ!!」

投石器から巨大な瓦礫が次々と壁に向かって跳んで行った。


 東側の塔の上では様子を見に来たボーマン院長たちがいた。

「ど・ど・ど・どうしましょう?」

「狼狽えるな。この程度の攻撃では絶対防御結界は壊れん。」

「ですが、上は薄く壊れるかもしれません。結界を均等に伸ばして上を強化しては如何ですか?」

 ボーマンは怯える部下を一瞥した。

「必要ない。奴らは地上部隊だけだ。ドラゴンでも襲って来るなら別だが、このままでよい。」

 どうやら城壁の絶対結界とは、概ねドーナツ型の形状であるらしい。通常であれば竜騎兵団(ドラゴンウォリアーズ)がいるのでこのような形状にしてあるのだろう。ドーム型にする事も可能ではあるが、ボーマンは地上型の部隊のみと判断したようだ。それでも念を入れて現在はドーム状にしているらしい。ただし、上面は薄く側面は厚い。

「万一、結界壁を乗り越える者がいても、それを排除するのは容易かろう。後は任せる。何があっても防御結界を外すな。君も死にたくはなかろう。」

「は・・はい。」

「私は礼拝堂にいる。変わったことがあれば知らせるように。」

「承知しました。」

 階段に向かいかけて、ボーマンはふと空を見上げた。霧は少しずつ晴れてはきたのだけれど、黒い雲が日差しを閉ざしている。



「んじゃ、今度はオラを跳ばすだ。」

サンダは投石器に乗った。投石器で打ち上げた瓦礫では歯が立たないと悟ったからである。これで結界に体当たりをかますつもりのサンダだった。

「ん?」

 射線の先に人間の子供がいた。

「あんちゃん、あいつ空、飛んでるべ。」

 そう、そこには空中に浮かぶホークが居た。

 戦闘が始まってしまいました。戦闘の描写はあまり得意な方ではありませんので、その描写がうまく伝わるかどうかはいつも心配の種です。映像として浮かぶ頭の中の描写のどこをどのように文章として表現するかは作者のセンスによるところが大きいと思うのですが、それがうまくいっているかどうかの自信がイマイチ無く、果たしてこれでよいのか・・と反省する次第であります。映画のようにシーンを切り取ってエディットするのとはわけが違うと思います。読者の想像力に任せるというのとは少しばかり無責任な気もするのです。絵を描くのとはまた違った苦労と苦しみがあると思う。

 そんなこんなで書き進めています。貴方の想像力が掻き立てられ、お楽しみいただけたなら幸いです。

では、またお会いしましょう。

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