アレイスターには手を出すな!! 弐
今回は時系列が普通に進みます。エストロたちの事も気になりますけど、今回は出番がありません。僕の作品の中では大抵ダジャレのようなパロディのような要素が多いのですが、今回の最後はきっとニヤリとするでしょう。まあ。分からない人には分からないかな(笑)では本編をお楽しみください。楽しんでもらえるといいなあ。
「見て。」
グラの指さす方向に巨大な建物が見えた。
コールレアンの東にある山の中腹にグラとサラがいる。山道は険しかったが、それに見合うだけの眺望が広がっていた。
「すーーごっい!! ねえねえグラさん! あれって修道院でしょう!」
「そうよ。3つの塔が建っているでしょう。その真ん中に円形のドーム。そして一番南の塔の反対側に城門があるの。」
リモネージュから帰ってきた直後は、キャラが崩壊したかのように大酒を飲み、鼾までかいて寝ていたグラは、いつも様子に戻っていた。あの時は疲労と極度の緊張が解けた直後だったからだろう。
「あれはね、ギース教の紋章を表しているの。塔と城門を結ぶ線で鳥のように見えるでしょう。」
「へええ。」
確かにグラの言う通り、塔と北側の門から白いドームに伸びる4つの蒼い屋根はドームの中央で交わっている。その形は鳥が空を飛んでいるように見える。ドームの中央には更に円形の屋根がかかっており、2階なのか3階なのかは分からないけれど塔から続く屋根と同じ青色をしていた。
「コールレアン修道院は南と北に門があって、通常の出入りは南門から入るの。北門は天国へ続く門と言う意味合いがあって、儀式のとき以外に使われることは無いわ。つまり自由と平等と博愛の精神を修めた者だけが、天国に行けるという事を表しているの。周りを囲む城壁は四角で大地を表し、円形のドームは礼拝場なんだけど天を意味している。修道士たちは塔に住み、その多くはギース教と魔法を習得するために修行しているの。」
「グラさん物知りですね。」
「当たり前じゃない。だって私は元コールレアン修道士だもの。」
ここで少しばかりギース教の事を説明しておこう。
ギース教は今から200年ほど前に始まった新興宗教である。創始者はギース=クエストという魔法使いだったと言われている。
このギース=クエストという魔法使いは、並外れた魔力を持ち、各地の王族に金でやとわれて戦う傭兵であった。そのためギース教のシンボルマークは”野鴨”をモチーフとして作られたマーク(円と鳥を上から見た構図)なのだ。説明がくどくなるが、ギース=クエストのギースの名前でもあり、傭兵=ワイルドギースの意味も込められた二つの意味を持つ。
ギース教はギース=クエストが自由・平等・博愛の三本柱の精神を説き、次第に民衆に溶け込んで行った宗教である。教祖ギース=クエストを神と崇め、死ねば優先して天国へと迎えられるという教えに、下層階級の人々を中心に瞬く間に広がって行った。今では信徒数が数百万を超えると言われ、下層階級のみならず、インテリ系の上流階級にまで広がり、ついには国教としてしまった国もいくつかある。フリーシア王国はその先駆けでもあり、貴族院だけではあるが一応共和制の体裁を保ってもいる。
ギース教の本拠地はフリーシアの東南にある小国マヌルカン共和国という国にあり、そこに教皇オイラーが居住している。マヌルカンは共和制の国だが、実質はギース教教皇が君主のようなものであり、代議員の95%はギース教幹部である。
「なるほどねえ。グラさんがとっておきの場所って言ってた訳、分かるわあ。」
「何言ってンの。違うわよ。それはね、もっと先。」
「えー、まだ登るんですかあ。」
サラはヘタレであった。
「通ってよし!!」
貧相な髭の衛士が大声で言うと、南門の城門の通用口が開いた。中にも衛士が数人たむろしており、ホークたちをジロジロと見ていた。
「随分と警戒厳重だね。」
「なーに、大半の奴らは役に立たねえよ。ギース教じゃ兵士の事を衛士って呼ぶが、8割くらいは貧民街の食い詰めものさ。食うに困ってギース教の守備兵になってる。」
マッシが吐き捨てるような小声で教えてくれた。
ホークはトニーの店で創作活動を終えたのち、店から出たところをカイドーたちと偶然出会った。カイドーたちが賞金の清算に行くと言うので、ホークも一緒についてきたという訳である。
城壁の通用門を抜けると、目の前に6~7階建ての茶色い煉瓦で出来た塔が建っていた。その下に入り口があり、そこからは3階建ての廊下の一番下を行く。カイドーが言うには塔と廊下の建物は修道士と衛士の宿舎になっているらしい。狭い廊下ではあるが、両端にドアがあり、時々階段が左右に出現する。
その廊下を抜けると、目の前にギース教の巨大な紋章が壁面に飾られた礼拝場に着いた。巨大な礼拝場は吹き抜けになっており、オペラ劇場のように二階席まである。いや、2階席ではなく回廊になっていて、そこにも部屋があるらしい。修道院の幹部の部屋か何かなのだろうか?
そして、中央の中空に巨大な鳥かごのようなの物がぶら下がっている。そこには3階の回廊から吊り橋のような細い吊り廊下でつながっていてその鳥かごのような物に行くにはそこを通るしか方法が無さそうだった。
ハッシが上を見上げて、ホークに目配せする。どうやらその鳥かごがコールレアン修道院の図書館。つまり愚弄王リーの魔導書が保管されている場所なのだろう。
礼拝場の論壇はギース教のマークの下にあり、けっこう幅広く、椅子もかなりの数が並んでいる。満席になれば聴衆は1000人を超えるだろう。そして、論壇の右側に懺悔室が並び、左側に黒のローブを着ている老婆たちがいる一角がある。賞金稼ぎたちの清算所がそこである。
「おやおや、まだくたばってなかったのかい、カイドー?」
「そいつはお互い様じゃろ、ヴェル。」
仲がいいのか、カイドーと老婆は冗談とも本気ともつかないような会話をしていた。
「ど~れ、今回はどれくらい稼いだんだい?」
ヴェルと呼ばれた老婆がカイドーに向かって手を伸ばす。その腕には七色の紐で編まれた組みひもが巻かれていて、木製の木の葉の留め金がいくつかついているのが見えた。
カイドーは首に下げていたペンダントをヴェルに渡した。ヴェルはそれを両手でしっかりと蓋をするように包み、眼を閉じた。
「今回は随分と危ない目にあったようだねえ。死にかけてる。・・・4880ブラン。」
「まあ凄い。今回は随分頑張ったようだね。」
隣にいる別の老婆が羽ペンで金額を紙に書き写し、それをカイドーに渡す。ヴェルは顔に薄く汗を掻いていて少しばかり呼吸が乱れている。そして手を開くと、カイドーにペンダントを返した。
賞金稼ぎたちは、ギース教からの公認を受けた者でなければならない。人間のお尋ね者を捕らえることもあるが、多くの場合は各地に飛び、人々を苦しめる魔物を退治するのが主な仕事である。
ギース教が賞金稼ぎと承認すると、ギース教から身分証代わりにギース教の紋章が入ったアクセサリーを渡される。カイドーの場合はペンダントだが、指輪だったり、髪飾りだったりもする。その紋章の入ったアクセサリーは、魔法処理を施されていて、斃した魔物の数をカウントする役目も担っていて、サイコメトラーのような能力を持つ老齢の修道士たちが、そのアクセサリーから斃した魔物やランクを読み取り、その働きに応じた賞金額を賞金稼ぎたちに支払うのである。賞金稼ぎは必ずしもギース教の専売という訳ではないのだが、全国を回るにはギース教の公認を受けた方が何かと都合が良い。ギース教の紋章入りのアイテムは身分証のような物でもあるからだ。
グラはギース教から破門になった身なので、賞金稼ぎにもなれず、賞金を支払われることもないのだが、パーティー内の約束事として各個人の賞金の1/4がグラの取り分となる。今日は他のパーティーは来ていないようだが、カイドーたちのパーティーは賞金稼ぎの中でもトップクラスを誇る腕利きたちの集まりである。
「その子はどうしたんだい? 新しい仲間かね?」
ヴェルはシュセの陰に隠れたようにしていたホークに目を付けた。
「なーに、この子は旅で拾った子でね。賞金稼ぎじゃあありませんや。」
シュセが庇うように云った。ホークがこれからやろうとしていることを考えれば、ギース教の人々に正体が知れない方がいい。シュセはそう思ったのだ。
「坊や、ちょっとこっちにおいで。」
ヴェルは何か引っかかったものか、ホークを呼んだ。
ホークは少しだけ首を傾げたが、素直に従い、ヴェルの前に立った。ヴェルはジロジロとホークを舐めるように見回すと、その目をじっと見つめている。やがてベルの顔にいくつもの汗が流れ始め、呼吸が荒くなっていくのがはた目にもよくわかった。
「もういいよ。この子を連れてさっさと出て行っておくれ。」
ヴェルはそう吐き捨てると、ぐったりと椅子に座った。
「じゃあ、そうしよう。用も済んだことだしな。」
少し慌てたようにシュセがホークを引きはがし、元来た道を歩き出した。ヴェルの視線はその後姿を食い入るように見ていた。
「どうだ、ホーク。やるなら俺も手伝うぜ。」
シュセは歩きながら小声でホークに囁く。視線は天井に吊るされた図書館に向けられている。
「いいや、それはやらないよ。思ったんだけどさあ、ただでもらえないかなあ。」
「バカかお前は。」
シュセの拳骨がホークの頭をなでる。
自分の正体を明かす以外に、譲り受けるなど出来そうもないし、明かしたところで十秘宝の一つをギース教がはいそうですかと渡すはずはあるまい。
「そんなこと、出来る訳はないだろうが。」
「それはこれからじっくり考えようよ。」
ホークはいたって脳天気そうに見えた。
「無礼者!」
突然声が聞こえた。気が付くと周りの人々が、一人の男にお辞儀をしている。シュセも慌てて、頭を下げ、ホークの頭を鷲掴みにして頭を下げさせる。ホークが上目遣いに見ると、痩せぎすの鋭い眼光をした神父が取り巻きを引き連れて礼拝堂に入ってきたところだった。
この男がコールレアン修道院の院長であるボーマン司教である。
ふとグラが立ち止まった。
「グラさーん。早く行きましょうよォ。止まると登れなくなっちゃいますからねー。」
サラはハアハア息を切らしてグラの先を行く。もはや道と呼ぶには険しすぎる道を上ってきた彼女たちなのだ。しかし、グラは一向に平気である。賞金稼ぎとして全国を旅してまわっている彼女たちには、このくらいの山登りは大したことは無いのだ。
(だれかに見られている・・・。)
グラは登っている最中に、誰かの視線を感じてふと立ち止まったのだ。コールレアン修道院に近いこの地で魔物が襲って来る確率は低いし、特に敵意は感じなかったのだが・・・。
(気のせい・・かな?)
グラは再び歩き出すと、すぐにサラに追いつく。
「グラさん、どうしてそんなにタフなんですか? それとも魔法かなんか使ってるんですか?」
「あら、バレた?」
「ええー、ずるいですー!」
「冗談よ。これくらいの山道なら別に魔法を使わなくっても平気じゃない?」
「平気じゃないですー。」
繰り返すが、サラはヘタレだった。
「なんかこう、ビューンって飛んで行きましょうよ。ホークも飛んでたし。」
グラはちょっと驚いた表情をした。
「空を飛べる魔法使いって、そんなに多くは無いのよ。コールレアンでもほんの数人。カイドーは飛べるけど私にはまだ出来ないわ。」
「ええっ! グラさんにもできないんですかぁ!」
「とにかく、魔力の損失が著しいから、好んでやる者はいないわ。だから使えても使うのは特別な時だけってパターンが多いわね。」
今度はサラが立ち止まった。
「これって、何の音ですか?」
微かに地響きのような音が聞こえて来た。
「フフッ。行ってみればわかるわよ。」
「分かりました。」
あれだけブーたれていたサラが、突然猛ダッシュで山を登り始めた。
ゴツゴツした岩が多くなって、登る二人を阻むような大岩をかいくぐって岩の上に立つと、そこには巨大な滝があった。
「すごーい!!!!」
サラは我を忘れて大岩を下る。滝の半分くらいの高さに、巨大で平らな一枚岩があって、展望台のような役目を果たしている。
サラが感慨深そうに巨大な滝を眺める。ジモン島を離れて、いくつかの滝は見たことがあったが、これほどの大瀑布は初めてだった。幅は20mもあろうか、その落差は少なく見積もっても100mはありそうだった。そして滝つぼには常に虹がかかっていた。地元の人々が”虹の滝”と呼ぶ所以である。
はしゃぐサラを横目で見ながら、グラは近づこうとしたが、また立ち止まって、今度はしゃがんで岩肌を撫でた。
(何だろう・・・)
一枚岩の一角に薄く岩を彫った後があった。しかもその彫り方には規則性があり、無造作に彫られたものではない。あまりにも巨大な為、普通なら気にも留めないだろうが、グラはその形を一発で見抜いた。
(どうしてこんな所に瞬間移動魔法陣が? それも公共魔法陣を?)
公共の魔法陣というのは多くないが、いくつか存在する。ほとんどはギース教の専用通路だが、通常の瞬間移動魔法陣と違うのは、このように岩や床に彫刻されるのが普通である。この窪んだ溝に触媒を流し込んで完成させるため、魔法の心得が無い者でも使用することが可能なのだ。
(これだけ巨大な物だと、相当大きな物でも運ぶつもりかしら?)
グラは気になったが、こんなものを作るのはギース教以外にあり得ない。気にはなったが、これ以上関わる気はなかった。
しゃがんで岩を見ているグラにサラが走ってきた。
「凄いですねー! グラさんがとっときの場所って言うの分かります!」
「え? 違うわよ。目的の場所はこの上。」
「ええええええ! まぁーだ登るんですかぁー。ここでいいじゃないですかぁーー!」
くどいようだがサラはヘタレだった。
****************
「はあああ~~。極楽極楽~~う。」
「でしょう。」
滝の上には、極上の温泉が湧き出る場所があって、岩場の溜りに自然の露天風呂があったのである。
ヘタレなのにがんばったサラちゃんへのご褒美だね。
「ねえ、サラ。あなたの魔法印見せてくれない。」
「え? 魔法印ですかぁ。それなら左腕の肘の内側にありますけど・・。」
サラはグラに左腕を突き出して見せた。
(魔法印が消えかかっている。)
魔法印とは魔法使いになると体のどこかに刻まれる紋章の事である。以前、ホークたちを襲ったハンスには【Ψ】のマークがあり、ジルコーニには【△】の紋章があったのを覚えておいでだろう。サラの紋章は【△】であった。それが擦れて消えかかっていた。
「なんで、魔法が使えなくなっちゃったんでしょうね・・・。」
「理由は分からないけど、魔法印が消えかかっている。もう一度契約しなおさないと駄目かもしれないわね。」
「え? 誰とですか?」
「・・・ふー。」
グラがため息をついた。そして、サラの問いには答えず、「これが私の魔法印よ。」と左の乳房を持ち上げた。そこには【Ψ】のマークが刺青のように入っているのが見えた。
「すご。きれいなおっぱいですねー。」
「なに勘違いしてるの! おっぱいじゃなくて魔法印の事でしょ!」
グラは顔を真っ赤にしていた。
「魔法印は神魔72柱との契約印でしょ。師匠がいれば師匠の系譜でそのまま受け継ぐから、知らなかったのかもしれないけどね。」
「あのぅ・・神魔72柱ってなんですか?」
「あなたカイドーの講義受けてたでしょ。」
「えー・・・・・アハ?」
「・・・・じゃあ、聞くけど、神と悪魔の違いは何?」
「え・・と。願い事を叶えて幸せにしてくれるのが神様で、悪者が悪魔です。」
「・・まあ、一般的にはそうかもね。でも本当は神も悪魔も特に違いは無いわ。」
「ええーっ! そんなことあるんですか!!」
グラはサラの顔をじっと見つめた。
「低級の悪魔も神も人間に悪さする。だって例えば神でも祟りという悪さをするでしょう。ところが強大な力をもった神や悪魔は人間にはほとんど干渉しないわ。その強大な力を契約で借りるのが魔法なの。云わば自然の大いなる力を借りると言う感じかしら。だから魔法と言うのは人間が個人の努力だけで作り上げたものではないの。そして、その強大な力を持つ者が神悪72柱と呼ばれる神々と大悪魔なの。」
「へええ。なんかうまく呑み込めない感じですけど、そうなんですね。」
分かったのか、分からないのか? 自分でも分からないサラであった。
「魔法はその神魔72柱いずれかの神か悪魔と契約を結ぶ。いずれの神魔も特性があって、その特性に応じた魔法が使えるようになる。貴方の魔法印は△だから地母神Ⅾ=メーテルの系譜ね。私のΨはギース教の魔法使いの証でもあるわ。神の名はΨ=コーパス。ほとんどの特性を持つと言われているけど、防御魔法に特化している神様よ。」
「はあああ~~。」
「どうしたの? 急にため息なんかついちゃって。」
「グラさんが羨ましいデス。」
「はあ? なんで?」
「美人だし、防御魔法のスペシャリストだし、その上スタイルもいいし、性格も素敵だし。せめてあたしもグラさんみたいに美人にうまれついてたらなあ・・。」
年頃の若い娘にはよくあることだ。自分の顔やスタイルが人より劣ると感じているのだろう。グラは昔の自分もそうだったと微笑ましく見ていた。
「あたしは髪もぼさぼさだし、顔の輪郭はごついし、歯並びは悪いし、キツネのように細い目だし・・・」
グラはサラの言葉に違和感を感じた。サラは美女と言われた姉のエリスと姉妹だけあって、美少女の部類に入る。ちょっとした劣等感が自分を卑下しているようには聞こえなかった。
「なに言ってるの。あなた十分に美人じゃない。」
「みんなそう言ってくれるんですけど。自分の顔は鏡を見れば分かります。あたし、鏡が嫌いなんです。自分の顔を見るとがっかりするんですよ。なんか神様が左手で描いたみたいな顔じゃないですかあ。だから魔法で美人になれないかなあとか思ったのも魔法を習う動機だったんです。」
サラはお湯につかりすぎたのか、体が赤く火照ってきているようだった。
「ヤバい。ちょっとフラフラしてきました。先に上がりますね。」
サラがグラに背を向けて、お湯から上がろうとした時、後ろでガポンという水音がした。サラが振り返るとグラの顔が血相を変えてお湯に半分潜っていた。
「大丈夫ですか、グラさん?」
「どどど、どうもしないわ。私も湯あたりしちゃったかも。」
「そうですか。」
「・・・ねえ! あなたのその・・左肩の痣は・・」
「ああ、これですか? 生まれつきですけど、普段は目立たなくって、体が火照ったりすると浮かび上がるみたいなんです。」
「そ・・そう。もう一つ聞いていい?」
「はい。いいですけど・・。」
「あなた、ひょっとして左利き?」
「ええー。」
「違うの?」
「やっぱグラさんくらいになると分かっちゃうんですねえ。小さいころに直されたんですけど、実は左利きなんです。だから今は両手でどっちでも使えます。」
「そ・・そう。」
サラはそのまま湯船から出ると、近くの岩に腰を掛け、風に当たって火照りを冷ましている。
しかし、グラはまだ湯船につかったまま・・・ポツリと呟いた。
「・・・・ダブルスクエア・・。Ad=ギラーラ・・・。」
執筆をしてると、椅子の後ろに窓があるのですが、その窓枠に我が家のニャンコのクロ君がいます。そして時々鋭い鈎爪で僕の頭を引っかきます。外に出てストレス発散してくると、すごく大人しいんですけどね。完全室内飼いのつもりなんだけど、夏場になって散歩に連れて行ったり、脱走したりするうちに外に行きたがるようになってしまいました。外飼いをするつもりはありません。でも、ストレスたまるんだよなあ。かわいそうで。でも冬場は外に出せないし。夏も終わりに近づいて、また寒い冬がやってきます。冬場はかなりニャンコのストレスが溜まりそうで、今から戦々恐々としております。




