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魔芒の月  作者: 弐兎月 冬夜
24/63

ホーリーの災難 5

ホーク様御一行の前に突然現れたエストロ。彼の口から出た言葉が「助けてください。」だった。いったいホーリーに会いに行った二人に何があったのか?

―――アマガッサの村―――


 少年は立ち尽くしていた。いつもの日課通り、放牧するために牛小屋にやってきたら、人が倒れていたのだ。

 少年は恐る恐るその倒れている人に近づく。

 老人のようだ。そっと鼻先に手を近づけるが、息をしている様子はない。

「パパー! パパー!」

少年は急いで駆け出すと、家に向かって父親を呼んだ。

「どうしたんだトーマ。牛は出したのか?」

父親は少しばかり不機嫌そうな面持ちで牛小屋へとやってきた。この時間帯はいろいろと忙しいのだ。

「パパ、あれ。」

父親は息子に促された方向を見た。そこには老人と思しき人が倒れていた。

「生きてるのか?」

父親の問いに、少年は首を横に振った。

父親はその老人に恐る恐る近づくと少年がやったように鼻先に手をかざす。体を触ってみるとすでに冷たくなっていた。

「死んでるな。」

「でもどうしてこんなところで。」

「さあな。旅人かもしれんが荷物も何もない。きっと追いはぎにでもやられたんだろう。」

父親は死体に向け、両手の中指と人差し指をクロスさせて腕でバツ印に決めると。

「エーン、ガチョーン!」

 と、唱えた。

「なんなの、それ。」

「死んだ人にするオマジナイだそうだ。ミナイの村じゃ行き倒れにゃこうやるんだと。こうすると化けて出たりしないんだそうだ。仕方ない、埋葬してやろう。ここで腐られちゃたまったもんじゃないからな。」

「うん!」

「荷車を持ってこい。俺は表で墓穴を掘る。ついでに母さんも呼んで来い、いいな。」

「うん!」

父親はシャベルを片手に森に近い場所に行った。

「ここらへんでいいか。まったく、余計な仕事を・・。」

少し掘り始めたところで、父親は息子の呼ぶ声に気づいた。

「どーしたんだ、今度は・・・。」

 呆然と立ち尽くしている息子と、何が起こったのか分からない母親の隣で、父親はさっきまでそこにあったはずの死体が、忽然と消えているのに気づいた。

「え・・死体は・・?夢でも見ていたのか、俺は?」




 双頭の竜(ヒュードラジッパー)の吐き出す炎でホーリーの小屋は一瞬で燃え盛った。ごうごうと燃える炎で屋根が崩れ落ちそうになったその時、突然屋根が吹き飛び、吹き飛ぶ炎の瓦礫の中から巨大な(ドラゴン)が躍り出た。

双頭の竜はその竜の巨大さに怯んで羽ばたき、後ろへと下がって距離を置く。

「クックックッ。俺様を焼こうとするたあ、いい度胸だな、小僧!」

 ムラドは双頭の竜をあざ笑うように飛び立った。ムラドの大きさは双頭の竜のおよそ倍。双頭の竜はじりじりと後退してゆく。

「おおっ!! あいつはガルマンブラッドじゃないか! こいつはいい、100人分の鎧と兵糧が作れるわい!!」

 ブリエスは目玉をグルグル回転させてはしゃいでいる。

 だが、炎の中から飛び出してきたのはムラドだけではなかった。ドレイクとエストロのリザードマン≪ルシンバ≫と≪ビッコローレ≫が抜き身の剣を片手に猛然とブリエスとジョーグに向かってきたのだ。しかし、奇襲にならなかったのはその距離にある。ブリエスとジョーグの二人には十分な余裕があった。

「うれしぃい! 生きてた。生きてた!」

 ジョーグはゲキドのような黒い鎧に身を包んでいた。ただ、違いのはその材質である。ゲキドの鎧は竜の皮をベースにした鎧で、漆黒と言うよりは赤みがかった自然の紋様が浮き出てしっとりした光沢がある。しかし、ジョーグの鎧は無機質で光り輝く硬質の黒である。一つ一つのパーツが滑らかな曲線を描くシンプルなデザインだが、変わっているのは左の手が異様に長い。2~40cmは右手より長く、棒のような形をしていて、先端がやや大きくライオンの首のレリーフが施されていた。さらに異様なのは背中である。大小の様々な形のチューブが複雑に絡み合い葛籠(つづら)箱のような形をしている。あたかも異星人が作り上げた機械のような感じである。その背中に2本の管が立ち上がっていて、さしずめそれはトラクターのエンジンについているようなⅤ字型の排気管のようだった。

 そのジョーグの肌も黒い。すべてが黒一色に包まれている。まるで黒い色こそが至高であるとでも言わんばかりである。ジョーグは腰についている武器を引き抜くと向かってくる3人に向かって駆け出した。

 ジョーグが右手に持っている武器は、団扇ほどの大きさの奇妙な形をした刃物である。一見すると鳥の頭のような形であり、卍型を彷彿させるような形をしている。その刃先は多方に向かって伸びており、刃に近づくものすべてを傷つけようとするかのようであった。


「これで俺が直接殺してやれるなぁ~。」

 ジョーグは嬉しそうに叫んだ。

ルシンバとピッコローレはジョーグの勢いに一瞬怯んだようだが、左右に分かれ、向かってくるジョーグを挟撃しようと言う腹の様である。

 ところが、ドレイクは急に方向を変えると。ジョーグとの激突を避け、プリエスの方に迂回し始めた。

「チィ! まあいい。お楽しみは後だ。」

 三つ巴の戦闘が始まった。


 ドレイクがジョーグとの戦闘を避け、プリエスの方に向かったのは、決してジョーグに怯えた訳ではない。ルシンバと、ピッコローレは初めて見るエストロの部下な訳だが、その身のこなしから結構な使い手と判断したし、二人がジョーグの闘気に反応して向かったので、プリエスの方に向かったまでである。サポートという訳ではないが、斃せるものは先に斃しておかないと、後々の憂いになるからだ。

「おやおや、私がそんなに弱っちく見えたんですかねえ・・。」

 プリエスは動じない。薄ら笑いを浮かべている。

プリエスはボロボロのフード付きのローブを(まと)ったドワーフである。緑がかった青白い肌、禿げあがった額と顔には幾重にもしわが刻まれ、犬のような髭と、人間のような無精髭が顔を覆い、薄い唇の間から欠けた歯が覗く。ここまでであれば年老いた普通のドワーフと大差は無い。目を引くのは彼の装備品である。右目の眼帯は異様に大きく、ドーム状のアイパッチには3種類の短眼鏡が付いており、それが用途に合わせてグルグルと回転する。まるで顕微鏡のようである。そして大きな金色の鎖にぶら下げられた古皮で出来たショルダーバック。それにもいくつかの管がついていて、彼の曲がった背中の中に繋がっていた。彼の背中はローブの中で見えないが、大きなこぶを背中に付けているように見える。

 プリエスはそのショルダーバッグに腕を突っ込むと、繭のような球を鷲掴みにして取り出した。

「まさか! あれは!」

 炎の中から遅れて出て来たエストロは自分の目を疑った。

「ミクラス!!」

プリエスは解除呪文と一緒に、持っていた繭玉を空高く放り投げた。

繭玉は空中でボン!と破裂し、白煙と共に数匹の武装したリザードマンが現れた。ドレイクは手近に出現したリザードマンに向かって跳んだ。空中では防御も攻撃も即座に対応が出来ない。ドレイクのバスタードは1匹のリザードマンの足首を刎ねると、もんどりうったリザードマンの喉笛を掻き切った。

 さらに、着地直後のもう一匹のリザードマンの首を背後から貫く。解呪された時に8匹いたリザードマンは着地までに2匹が既に斃されていた。生き残ったリザードマンは体勢を立て直して、ドレイクを囲もうとしたが、動きはドレイクの方が早かった。マッシの時もそうだったが、1対多勢の場合は各個撃破が基本となる。しかも深追いはしない。敵の戦意を失わせることが肝要となるのだ。どこでも手当たり次第に傷を付ける。傷を受けたものはそれだけで戦意が()えるのだ。

 しかもドレイクは鎧に当てない。正確に関節や防護されていない箇所を剣で切り裂く。

 瞬く間にリザードマンは3匹になってしまった。

「ヒュー! やるじゃねえか。おもしれえ。」

 ジョーグはピッコローレとルシンバの攻撃を躱しながら、ドレイクの戦いを横目で見ていた。

「参りましたね。それならこれはどうです。」

プリエスはまたもショルダーバッグに腕を突っ込むと、繭玉を掴んで放り投げた。

今度は10体ほどのゾンビが出現した。さらにプリエスは追加でもう20体ほどのゾンビを出現させる。ゾンビに剣は圧倒的に不利だ。切ってもついても死なないどころか、痛みすら感じない。

 だが、ドレイクは顔色一つ変えなかった。スライムと違ってゾンビは死なないだけで、切り落とされたパーツが復活するわけではない。しかも動きは遅く緩慢だ。

 ドレイクは目まぐるしく動き回りながら、ゾンビの足や腕、首を鮮やかな剣捌きで断ち切ってゆく。動けなくなって倒れたゾンビの側には近寄ろうともしない。そして、驚くべきことにドレイクは休みもせず動き回っているというのに、傷どころか呼吸すら乱れてはいなかった。


「信じられん。」

エストロが呟いた。彼は自分と同じ召喚術を使う者がいるとは思わなかった。召喚術自体は廃れてしまったし、そもそも、この術は愚者の小箱(フールボックス)があって初めて成り立つ術である。魔物と契約を結び、魔界から呪印を使って呼び寄せる方法ならあるが、それ自体も廃れてしまっている。魔物は()()()であり、契約を結んで味方にするものではないと言う考え方が一般的になったからだ。それに、この呪法は効果は絶大だが、術者の負担も大きい。なぜなら・・


 大きな羽ばたきの音が聞こえると思った瞬間、プリエスは一目散に駆け出した。その瞬間、今までプリエスが居た場所にムラドが着地した。

「危ない危ない。もう少しで踏みつぶされるところでした。」

プリエスがチラリと燃えているホーリーの家の方に目をやると、既に双頭の竜(ヒュードラジッパー)の横たわっている姿が見えた。

「1頭では役不足でしたかね。」

プリエスはまたもバッグから繭玉を三つ取り出すと解呪した。

今度は双頭の竜(ヒュードラジッパー)が2頭、そして恐竜のような大顎棘竜(ドリオンデンジャー)現れた。3頭とも大きさはムラドには及ばないものの、その3頭の攻撃にはさすがのムラドも手を焼いている。ヒュードラジッパーの双頭の(あぎと)がムラドの左足に食いついてムラドの動きを押さえ、背後に回ったもう一頭のヒュードラジッパーが前脚で翼を掴み、その首をムラドの首に巻き付け、動けなくなったムラドにドリオンデンジャーの尻尾の先端についた棘付きの()()がムラドに容赦なく襲い掛かった。

「ムラド!!」

エストロは愚者の小箱(フールボックス)の手を伸ばしたが、開けようとした手はピタリと止まった。

「おやおや。お困りですか? 私のをお貸ししましょうか?」

いつの間に近づいたのか、ゲタゲタと笑うプリエスが、両手いっぱいに持った繭玉をエストロに差し出していた。


「うぉおおおおおおお!!」

ドレイクの咆哮が山々に木霊すると、ムラドの左足に噛みついていたヒュードラジッパーの片方の首がバッサリと切断された。

 最初はバスタードソードを握っていたはずなのだが、いつの間にクレイモアを握っていた。クレイモアは両手で掴む剣だ。それゆえに大型である。バスタードソードがゾンビやリザードマンの血と脂で切れなくなったのかもしれない。地面に降り立ったドレイクは休む間もなく、もう一方の首を狙ってヒュードラジッパーの体に駆け上がっていく。

 片首となったヒュードラジッパーはもう一方の首を落とされては敵わないと、ムラドの足から離れてドレイクを振り落とそうとする。その首の揺れを利用して、ドレイクは更に上方へと跳んだ。その先にはムラドの翼と体に巻き付くヒュードラジッパーが居る。ヒュードラジッパーの背に駆け上がると、背中からヒュードラジッパーの心臓をめがけてクレイモアに全体重を乗せる。ヒュードラジッパーの皮はドラゴンの中でも柔らかい。心臓まで届くかどうかは難しいところだ、が! ヒュードラジッパーもそのまま放置して殺されてはたまらない。藻掻いてドレイクを振り落とそうとする。筋肉の隙間から血があふれ出した。藻掻いた動きで傷口が広がり、クレイモアは深々と突き刺さっていく!

 とうとう、背中でムラドを押さえていたヒュードラジッパーは背中から落ちた。ドレイクは転がりつつヒュードラジッパーの下敷きなるのをかろうじて防ぐと、片首を落とされたヒュードラジッパーに飛び乗る。こちらも痛みと恐怖でムラドに構っている隙が無くなった。

 その間隙をついてムラドの両腕がジッパーの首を掴んで引きちぎった。

「礼を言う、小僧!」

ムラドはドリオンデンジャーに向き直った。ドリオンデンジャーは瞬く間に2匹のジッパーが斃されてしまったため、少なからずムラドと距離をとった。体勢を低くして低く唸り声を上げて威嚇している。

 ムラドは「グオオオォ!!!」と咆哮した後、大きく息を吸い込んで、生き残った(?)ゾンビとリザードマンのいる方向に巨大な炎をまき散らす。

「借りは返したぞ、小僧!」

もう一度、ムラドは咆哮すると、ドリオンデンジャーに突進して行った!


「私を無能なドワーフと侮りましたね。」

「そんなに大量に繭化すれば、魔力の使用量も半端ではない筈。それに愚者の小箱をどうやって・・・?」

 エストロは護身用のナイフに手をかけながら、ジワリとプリエスと距離をとる。

「私は魔物ですからね。あなたとは違います。」

「魔物と言えど、あれだけの量の繭玉を愚者の小箱に入れていれば命に係わる。」

「あなたとは出来が違いますからね。そもそも、霊糸繭化呪文(ギズニャ)というのは、このようにして使うモノなのですよ。敵の前に大軍を簡単に運ぶ。それがこの呪文の肝要な所です。ところで、あなたの愚者の小箱には、あと何体の魔物がいらっしゃるので?」

プリエスはまたもゲタゲタと笑った。


 ガクンとドレイクが膝をついた。

 息も荒く、ゼーゼーと苦しそうである。

「ちぃと調子に乗りすぎたかな。」

ドレイクは笑ったが、頬が引きつっていた。

 胸に張られていたトランプのような3枚の呪符がチリとなって消え失せてゆく。

(言っとくけど、これはもしもの時に使うモノだからね。間違っても3枚同時に貼ったりしたら、呪符の効果が切れた時に、()()()反動があるからね!)

 ホークの言葉が脳裏によぎる。

「使っちまったモンは仕方あるめえ。」

 ドレイクは照れたように頭を掻いた。


 ズシリとプリエスの背中のこぶに何かが乗った。

「なるほど。ここで魔力を集めてこの(くだ)で愚者の小箱に送ってるという訳ですね。ぢゃ。」

 驚愕したプリエスの眼が大きく見開き、顕微鏡のような眼帯がクルクルと回りだす。

「き! 貴様、何をしている。」

「初めまして私はケットシーのポッター、よろしく。そしてさようなら。ぢゃ!」

ポッターの右手にキラリと光る鎌のような爪が現れると、プリエスのショルダーバックに伸びている管をサッと切り裂いた。

「ひぃやあああ!」

プリエスは素っ頓狂な大声を上げると、手に持った繭玉を放り投げた。

「か、か、解除せねば・・」

プリエスが何か言おうとした瞬間、ポッターの両手(まえあし)が、驚くべき速さでプリエスの口を見えない細い糸のような物で縫い付けた。

「むぐぐぐぐぅ。」

 プリエスの肌が次第にカサカサと乾き始めた。皺が一層深くなって老化が勢いよく進み始めたように見える。自然からの魔力の供給が断たれて、愚者の小箱の中の魔物たちはプリエスの本体から魔力を吸収し始めたからだ。

「乾いて、死ね。・・・ぢゃ!」

ポッターは転げまわるプリエスに冷徹に言い放った。

プリエスはもがき苦しんでいたが、意を決して、自らの唇をむしり取った!

むき出しの歯と歯頚に大量の血が流れている。息も荒いが、行動は素早かった。こぼれた繭玉を解呪すると、全ての繭玉を愚者の小箱から出し、それも解呪した。

 エストロとポッターの周りには50を超す魔物が一度に出現したのだ。

「許さん、許さんぞ貴様ら! よくもこのわしを虚仮(コケ)にしおったな!」

プリエスの血だらけの口から、赤い泡沫と一緒に呪いの言葉が発せられた。

「失敗、失敗。一思いに殺しておけばよかった。ぢゃ。」

やれやれとでも言うようにポッターが言う。50を超す魔物に動じる様子はまるでない。エストロは自分の愚者の小箱から繭玉を取り出すと、そのすべてを解呪した。

「どどどど、どうして私が呼ばれるンですかぁー! 私は戦闘むきじゃないんですよー!」

ピノアがたらたらと文句を言った。

「それはわしも同じだがね。」

長柄の石斧を持った赤い帽子のドワーフが言うと、「ガゥ!」とヴィオロとヴィオーラも激しく同意した。

「どうせ、俺が死ねば、お前たちも小箱の中で死ぬ。出してやっただけありがたく思え。」

エストロは2本ある胴当ての飾りの竜の足を左右の手で1本ずつ掴むと、ゆっくりと引き抜いた。

その竜の足の先は銀色に輝く薄い鋼が伸び、異様に長い剣となって姿を現した。手首を振ると鞭のように(しな)る。

 オーク、ゴブリン、ボブゴブリン。リザードマンからガーゴイル。はては巨人のギガンテスまでいた。

「まともに戦うのは本当に久しぶりだ。」

エストロの目が細く、怪しく輝く。

「ホントにもう、どうなっても知りませんからねえ!!」

ピノアがいきなり屈んで地面に両手をついた。

「ウォール・ベガ!!!」

 その呪文で地中から水の柱が奔流となって噴き出し、魔物が数体空中に吹き飛ばされると、全員が一斉に動き出した!

 ヴィオロとヴィオーラは高速で宙に舞い、青白い火炎弾を口から吐いて攻撃。小兵ながら赤い帽子のドワーフも軽やかな動きで立ち回る。

 しかし、驚嘆すべきはエストロとポッターである。エストロの剣は、鞭のように(しな)り思いがけない方向から魔物を切り裂いて行った。しかもその速さがまた尋常ではなかった。まっすぐに突き出したと思った瞬間に真横の方向へ軌道を変え、リザードマンの首筋を切り裂き、反動でオークの顔を刀の腹で叩き伏せる。まるで生きている鋼の蛇の様であった。エストロは召喚士というより戦士としても十分に通じるほどの凄腕であった。

 そしてポッターは自分の何倍もある魔物の中に果敢に飛び込み、絶え間ない嵐のような攻撃をしなやかに躱すと、魔物の急所を鎌のような光る爪で切り裂く。攻撃を受けた魔物は、ほとんどが致命傷を受けている。まるでどの魔物の体もすべて精通しているかのように、その攻撃は正確、且つ無慈悲であった。

「な・・・なんだ、こいつらは・・?」

プリエスの背に冷たい物が走った。口の痛みも尋常ではない。痛みがジンジンと脳髄にまで染みわたるようだし、出血も止まらない。勝負は瞬時に付くかと思ったが・・・

(甘かったか・・やつらがここで仕留められれば良し。しかし・・・)

 プリエスは瞬時に決断した。最後に残しておいた繭玉を取り出すと、そ れを解呪した。解呪されたモンスターは2足歩行の大きな鳥のようなモンスターだった。コカトリスのようでもあるがどうやら違うようである。爬虫類と鳥の中間のような感じで、羽毛を持った爬虫類とでも言うべきカラフルな鳥でだった。プリエスはその鳥の背に飛び乗った。(既に(くら)(くつわ)が付いている。)プリエスが(むち)を入れると、その鳥は飛ばずにダチョウのように走り出した。そして、ジョーグの所へと向かって行く。

 あっという間にジョーグの傍らに着くと

「何を遊んでいる! 撤退だァ、撤退するぞ、ジョーグ!!」



<次回予告>

ユンのアップ

「本当だな?」

ホークのアップ

「本当だって。」

ユンのアップ

「本当に、本当だな!」

ホークのアップ

「本当に、本当だって!」

ユンのドアップ

「本当に本当に本当に本当に本当だなァ!!!」

ホークの全身。腕組みしている。

「だいじょ~~~ぶ! オイラを信じなサーイ!」

ユンのしかめっ面。

独白(それが一番信じられねえんだよ。)


 魔芒の月:挿入歌 <天翔ける虹の君へ> / 食器バンド

青空を飛翔するヴィオロとヴィオーラ。そしてユン。その背中にはエストロとマッシ。そしてグラが。

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 また1000文字くらい書いたところで、いきなり消えた。PCのせいだと思うが、けっこうやる気が削がれる。

 この作品に多大な影響を与えている漫画は昔ジャンプに連載されていたバスタードであるという事は前にも書いた。他の作品にスプリガンという漫画もあるのだが、最近それがネットフリックスで新悪が配信されるという事でYouTubeを見てみたら、昔アニメ化されていたのを初めて知った。そのスタッフに大友克洋と江口寿が居ると言うのに驚いた。実に面白い!!(ちなみにガリレオ劇場版も公開予定。柴崎コウが復活しているのが結構楽しみである。)


 話は変わるが、ジョーグの武器はアフリカはスーダンのマフディー派の使っていた投げナイフがモデルである。池上遼一先生の漫画クライングフリーマンで初めて目にした。

 エストロの剣もインドのカラリパヤットの武器であるウルミーがモデルだ。使い方が難しく、なんでも一子相伝の武器らしい。


 実はユンの本当の能力は・・・・。

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