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詩など(象徴詩)

怠惰の季節

作者: レモネード・イエロー

詩集です。

一年くらい前に読んだ、アルチュール・ランボーの散文詩集『地獄の季節』を思い出して、なんとなあく書いてみたくなったものです。

宗教観とかそういった知識が必要な表現はないので、読みやすいと思います。

ただただ、青臭いなあとか、芝居がかった文章だなあ、なんて思ってもらえれば(笑)


また、拙作の連載詩集に収録した詩を、タイトルや形を変えて入れてみたりしています。

「どこかで読んだことがある」というのは、たぶんそれです。


目次


  序


  夢

  世界

  私欲

  幸福


  ねむり

  望み


  励まし

  理想


  動く


  ばつ






 諸君へ。

 ずらずらと書き連ねたこの文章を、私のまことだと思ってくれるな。

 私はただ、影絵かげえをお見せしているにすぎない。

 役者の心は、演ずる役の気持ちとは別に存在する。

 オフィーリアは狂気でも、演ずる役者は正気かもしれない。

 ハムレットを演ずる役者は、復讐心など抱いていない。

 ただ、どう演ずるべきかと、

 そのことを苦慮し、闘い、

 その意味では狂っていると言えるかもしれない。

 泣きわめくヘキュバのように。






 少し長い間、夢を見ていた。

 丘のうえには羊の家族。

 空には鳩が、飛んでいた。

 湖の白鳥はくちょうはおとなしく、

 木の陰さえも、隠すべきものはない。


 少しして、夢が変化した。

 白い雲に覆われた、

 向こうに何かが見える世界。

 私はただただ、むずがゆく、

 希望を胸に抱きながら、

 時の迎えを待っていた。

 今思えば、

 知らぬが仏。

 永遠に、

 包まれていたかった。


 しかし、時が迎えにきて、

 白い雲を払っていった。

 時はこの手を捕まえて、

 否応なく、私を運んでいった。


 頭が痛い。

 確かにここは、ここだ。

 夢に見ていた、

 向こうに見えた、光の世界だ。

 途端とたんに寂しく、

 悲しくなる。

 知ってしまった現実、

 戻れない青春。


 抗議しようと、

 時を探す。

 姿は見えず、

 手首はそのまま。

 逃れられない。

 戻れもしない。

 はるかに遠く、

 白い残骸ざんがい





世界


 世界はわからない。

 人間はわからない。

 何もかもわからない。

 私はわからない。


 暑苦しいのか、

 冷めているのか。

 真面目なのか、

 不真面目なのか。

 目的はなんなのか、

 なんのためにあるのか。

 ただただ通りすぎる、

 風にすぎないのか。


 ビルの合間を進む、スーツ姿の人。

 百貨店へ入る、ジュエリーまみれの人。

 正しい歩き方なんて、

 誰もわからないのに、

 疑うこともせず、

 考えることもせず。


 ショーウィンドーの内側には、

 人形がある。

 ガラスのへだてた向こう側で、

 こちらを見ている。

 私はそこに親しみを覚えた。

 私は人形をうらやんだ。





私欲


 情けは人の為ならずとは、

 なんと悲しい言葉だろうか。

 因果応報いんがおうほうを期待して、

 人に情けをかけるとは。


 あなたが心配。

 あなたのため。

 役に立ちたい。

 笑顔が見たい。


 尽くしても、尽くしても、

 本当は自分がそうしたいだけ。

 見返りを求めないことは、

 その人の美学。

 その人の美学は、

 他でもない、その人のため。

 あなたのためという欲望、

 それが現実。


 悪いことではない、

 素晴らしいことだ。

 ただ、

 その人が、その本質を理解できないことが、

 少し、悲しいだけだ。





幸福


 人はなぜ、幸福を求める。

 人はなぜ、不幸を嫌う。

 幸福の陰には、不幸の影あり。

 ならばそれは、同じ重さではないか。


 幸福を背負って不幸を見る。

 不幸を背負って幸福を見る。

 そこに違いはあるのだろうか。

 私には、わからない。


 幸福が愛おしければ、

 不幸も愛おしい。

 不幸が憎ければ、

 幸福も憎い。

 傑作悲劇を演じて、

 幸福になりたい。

 そういう人間は、いないのだろうか。





ねむり


 真実は大切だが、

 たまには、綺麗きれいなものに包まれていたい。





望み


 アパートの塀のうえに、

 茶色い空きびんが置いてあった。

 私はそれをうらやんだ。

 なんでもない、それを。


 混沌とした感情を憎み、

 単純さをたたえる。

 レモンの汁のような、

 瑞々みずみずしさがほしい。


 レモンの汁は、

 ペンキのかさを増すだけだ。

 空き瓶のように、

 空にはしてくれない。

 それでも私は、

 しぼり続ける。

 希望を捨てずに、

 絞り続ける。






励まし


 君のうたううたに導かれて

 僕は今、歩いてる

 君のうたう詩に導かれて

 僕は何をしてるかもわからない

 君のうたう詩に導かれて

 僕は今、歩いてる

 君のうたう詩に導かれて

 僕は何をしてるかもわからない


 どの夏かも覚えていない

 空色そらいろが射し込む胸、抱え

 果てしない夜空を夢に見て

 おびえつつ、僕は

 歩いてる


 君は誰?

 と胸に問う

 僕は君

 と胸は言う

 君は僕、僕は君

 僕自身の胸が

 うたう


 君のうたう詩に導かれて

 僕は今、歩いてる

 君のうたう詩に導かれて

 僕は何をしてるかもわからない

 君のうたう詩に導かれて

 僕は今、歩いてる

 君のうたう詩に導かれて

 僕は何をしてるかもわからない




   こういう文句を歌いながら、

   私は自分にエールを送る。





理想


 絵のままの理想、

 夢があっていいじゃないか。

 砂上の楼閣、

 神秘的じゃないか。

 実在だけが、現実じゃない。

 理想があるのも現実だ。


 目に見えるものばかりでは、

 何も変わらない。

 目に見えないものを見ようとしても、

 悪くはないじゃないか。


 希望がなくとも、

 希望を見る。

 理想は必ず、

 存在する。





動く


 私たちは、動く。

 それを、はたらくとは言いたくない。

 そんな大層なことじゃない。

 偉そうにいうことでもない。


 私たちは、動く。

 おもりを抱えて。

 死の川を渡るまで、

 錘を抱えたまま。


 希望を捨てずに、

 あきらめをもいだきながら、

 どうしようもなく、

 ただただ、歩く。


 こういうものだと、

 現実を見て。

 こうなら良かったと、

 夢を見て。

 ただただ歩いて、

 ただただ歩く。

 そう考えれば、

 人生も捨てたものじゃない。


 私たちは、動く。

 それを、はたらくとは言いたくない。

 そんな大層なことじゃない。

 偉そうにいうことでもない。


 素敵なことでもない。

 特別なことでもない。

 それでも人生は、

 捨てたものじゃない。





ばつ


 時々、戯言たわごとを書き連ねたくなる。

 詩人を演じてみたくなる。

 それが何になるのかはわからない。

 自分のかてになるかもわからない。


 ずらずらと書き連ねたこの文章を、私のまことだと思ってくれるな。

 これは諸君をだますためのものではない。

 私はただ、影絵かげえをお見せしただけだ。

 それでも、

 以下にしるす言葉のみは、私の本心と思ってくれて差し支えない。

  ポジティブもネガティブも、

  大切な宝物たからものだと思っている。





ひねくれ者と、呼ばないで(^^);

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