列挙
「ルディゼドみたいに、霧で見えないように守ってくれないと思う。音も聞こえないようにしてくれてた。疲れてるのに、犬の姿の方が都合良さそうなフリなんて優しいのはルディゼドだけだと思う。それで撫でたら嬉しそうに照れて。私は何もできないのにそんな様子で、嬉しかった」
「・・・」
「力が足りない時も、すごく遠慮して。私から必要以上に取らないよう気をつけてくれてた。行く場所もちゃんと本を見せて教えてくれた。ご飯もちゃんと毎日くれた。すごく優しかった」
「・・・だが、目を知るまで、すごく高圧的だった」
「うん。凄く偉そうだった。今でも拗ねてしまう。目を知らなかったら、好きになってくれていないかもって」
ノクリアの言葉に男が慌てた。抱きしめていたのを距離をあけて表情を確認してくる。
「それは。でも。でもノクリア、私は魅了で好きになったのではない、絶対にない」
「うん」
「それに勘違いだ、魅了もそれはノクリアの魅力の1つだろう! それだってノクリアだ、強者に皆が惚れやすいのと同じだろう!? それに、私はノクリアだから好きになった。不器用そうなのに素直で!」
「うん」
「私が魔族なのに、労ろうとして、私は目で態度を変えてしまったのに、嫌いもしないで」
「うん・・・ルディゼド。私は、あなたにちゃんと好きになって貰えたのかな?」
男が真剣に訴えた。
「私もノクリアしか好きにならない。あの状況で別のものがノクリアの代わりであれば惚れていない。例えノクリアのような能力持ちでも、同じ種族でも! ノクリアでないなら、私はここまで絶対に惚れていない! ノクリアだけだ!」
ノクリアの顔が綻んだ。
「嬉しい。とても嬉しい。私も同じだ。こんなにルディゼドを好きなのに。他の人にこんなにまで絶対にならない。たくさん、好きになったところをわたしは言える。他の人では絶対に無理だ。あそこにルディゼドがいてくれて良かった。夫婦にまでなれて、本当に幸せ」
「あ・・・」
ノクリアが改めて抱きしめると、男は動揺したように一声漏らし、見上げてみれば、顔を真っ赤にさせていた。
ノクリアは目を閉じた。
キスをしてもらう。
「私も、ノクリアに会えて本当に幸せだ。あそこの世界に飛ばされて、封印されて、喰わずに、会えて、過ごせて、心底良かった。私は運が良かった」
ノクリアに男が告げる。
また目を閉じる。もう一度キスを貰った。
***
例えば。
あんな風に世界に戻ってしまったのに、もう会えないと思っていたのに、無理をして戻ってきてくれた。会いにきてくれた。私を迎えに来てくれた。
ずっと傍にいてくれる。
とても強いのに私をずっと大切にしてくれる。守ってくれる。考えてくれている。
全て好き。大好き。愛しています。
***
・・・可愛いとしか、表現できない。
私が与えたものを黙々とちまちまと食べて、しかも口に合ってなさそうなのを眉をしかめて黙って食うんだが、私のお陰で食ってけるんだと、私を見てしみじみしてたところと。
自分には何もできないと分かってるから控えてるんだけどせめて、みたいな感じで心配してそっと撫でてくれてたりとかだ。
あれは・・・かなり効いてた。
何も言わずにそっと寄り添ってくれてるとこが、かなり動揺した。
小さな体でもたれてくるところとか。
魔族と分かってるのに私しか頼るのがいないと分かってるから私を味方だと簡単に思って安心したような顔するのとか。
もう、解放時の香りがくらくらするとことか。
本体にも毎日話しかけてくれてた。嬉しかった。聞こえてるのに返せないのが辛かった。なのにずっと話しかけてくれただろう。
食べられるならあなたが良かったなんて言われて、消えられたら、たまったものでは無かった。
絶対に離すかと、逃すかと、思った。
異世界などは壊してでも良いと思った。
きっと悲しむだろうと思ったから、あちらも壊さない方法を選んだんだ。
私も、すでに同族よりノクリアを選んでいる。
こんなのが王だ。酷い時代だな。
でもノクリア、魔族の王でも一緒にいてくれるだろう?
生きていくのに、私は力が欲しかった。
変えてまで生きて行く力が欲しかった。
強者不在の時代で、助かった。
・・・ノクリアを取られるかもとハラハラしなくてもすむだろ。
きっと私の方が、ノクリアより惚れてる。
・・・そうか。
では同じぐらい。
そういうのに、さらにこっちは惚れるんだが。




