第九話 夕暮れのベーシスト
ということで、お話しは後半へと向かいます。
翔子たちが所属している軽音部は、若干2年生であるが、翔子と小学校の頃からの仲である相葉 晴斗が部長を務めている。
背が高くてイケメンで、女子からの人気も高い。“高岡 翔子に一番近い男”と揶揄される彼であるが、当然翔子と付き合っているわけでもなく、彼女もいない。
爽やかで気のいい少年ではあったが、今一女子には余り興味を持っていなかった。
「だから、俺はゲイじゃないって!」
「一部の女子から結構噂になってんぞ。」
「・・・晴斗はBL。」
茉希と杏奈から揶揄われる晴斗。彼女ができないと言われるだけなら構わないが、それだけは忌々しき問題だ。
「いや、普通に女子好きだって!」
「じゃあ、女子も好きってことか?」
「・・・晴斗はAC/DC。」
「じゃなくて!」
晴斗は小学校以来の同級生である二人の女子を相手に、やきもきしながら答える。
「二人ともその辺にしなさい。晴斗が普通なことくらいわかってるでしょ!」
「だってさ、晴斗すぐムキになるからさ。」
「・・・面白い。」
「お前らな・・・。」
悪態を吐く二人を見かねて、翔子が口を出す。
人のいい晴斗で遊んでいた二人であるが、旧知の仲であるこのメンバーではよくある光景であった。
「あんまり揶揄いすぎるんじゃないわよ。私、ちょっと真鍋のところ行ってくるから。」
翔子は顧問である英語教師の真鍋に最近よく質問に行っていた。真人の作った曲にはやはり英詞を書きたい為、以外にも海外暮らしの経験がある真鍋を頼っていたのだ。
と、翔子が部室から出ていくと、茉希と杏奈は興味あり気に晴斗へ質問をする。
「そういえば、晴斗って翔子のこと好きじゃねーのか? 小学校からずっと仲いいじゃん?」
「・・・付き合っちゃえ。」
「それはない!!」
晴斗は真面目な顔をし、強い口調できっぱり否定した。その反応に二人はヒヤリとする。
――翔子と晴斗との出会いは、小学校3年生の時であった。
当時、翔子は上級生の男子よりも喧嘩が強く、手の付けられない暴れん坊と噂されており、ただの気のいい男子であった晴斗には、恐怖の対象でしかなかった。
小学校3年生の始業式の日、席順を見て、自分の隣の女子があの有名な高岡 翔子であることに衝撃を受ける。よりにもよって、学年中の男子が最も恐れる女子が自分の隣なのだから。
席に座って、緊張で固まる晴斗は、恐る恐る翔子の横顔を見上げる。
シュッとした端正な顔立ちに、少しグレーがかった瞳。小学生とは思えない美しく凛とした横顔に晴斗は目を奪われていた。
「私の顔に何か付いてる?」
「い、いや、ごめんなさい!」
翔子に気付かれて、あたふたする晴斗。翔子は不思議そうな顔をした。
「あなたの筆箱、ローリング・ストーンズよね。ロック好きなの?」
「ああ、お兄ちゃんが好きで・・かっこいいな・・・と。」
「私、高岡 翔子。私もロック大好きなの。宜しくね!」
「う・・うん。僕、相葉 晴斗、よ・・宜しく。」
実際に会ってみると、翔子は気さくで優しく、ロックが大好きな普通の少女であった。晴斗は兄に少し感謝した。
それ以来、少しずつ友人として仲を深めていく二人であったが、彼らのクラスである事件が起こる。
それはクラスのある男子に対してのいじめであった。いじめられていたのは、気の弱い体の小さな男子で、いじめていたのは空手を習っていた男子を中心としたグループだ。
「あいつら、佐々木君のこといじめてるの?」
「う、うん。でも関わらない方がいいよ。先生も見て見ぬふりしてるし、高田は空手を習ってるんだ・・・。」
「ふーん。で、晴斗はどうしたいの?」
「そ、そりゃ、かわいそうだと思うけど、どうにもできないよ・・・。」
翔子は溜息を吐いて立ち上がると、腰に手を当てて少し怖い顔をした。
「相手が強い、自分には力がない・・・、だから諦めちゃうんだ?」
「だけど相手は空手を使うんだよ? 人数も多いし、勝てるわけないじゃないか!」
「私の知ってる人は、どんな不利な状況でも、弱い人を決して見捨てたりしなかった。」
「僕だって助けたいけど、そんなヒーローみたいにはいかないよ!」
晴斗は自分が責められていると思い、翔子に向かい言い返す。
翔子はその反応を見て、晴斗に得意げな顔をする。
「なーに怖気づいちゃってんのよ。男子でしょ? あっちが空手なら、こっちは無敵の魔法よ!」
翔子が何を言っているのか、この時の晴斗にはよくわからなかった。だが彼女は数人いるいじめっ子グループを、その日のうちに片づけてしまう。
この出来事に、クラス中が翔子に対して改めて恐れを抱いたが、晴斗は違った。彼にとって、高岡 翔子という少女は、強くて気高く、そして誰よりも優しかったのだ。
9歳の少年が見たその少女は、単なる友人ではなく、それは例えるなら、古い絵画に描かれた自由の女神のような存在だった。
女性として好きだとかどうかという感情が全くなかったわけではない。ただそれ以上に、気のいい晴斗は、その小さな自由の女神の良き友人でありたいと願った。
――その少女は、今も少年にとって最も身近で親しい自由の女神であった。
いつものように部活を終えた晴斗は、薄暗くなってきた街中を抜け、自宅へと向かう。
「なんだよ、工事中かよ・・・。」
いつも通っている道で道路工事が始まってしまっていた為、晴斗は大きく道を迂回して帰る羽目になった。
文句を言いながら、普段は通らない人通りの少ない道を進み始めた晴斗。暫く進むと、立ち並ぶ雑居ビルの中に入って行く同じ高校の女生徒を目にする。
晴斗はその女子生徒が入って行った雑居ビルの前で立ち止まり、何のテナントに入って行ったのだろうと、何気なく看板を眺めた。
「歯医者に飲食店に音楽スタジオ・・・。へー、こんなところにスタジオあったんだ。」
初めて目にしたレンタルスタジオに惹かれて、晴斗はその雑居ビルへと足を踏み入れる。
狭い階段を昇って行く晴斗は、スタジオに辿り着くが、先ほど見かけた女子が何か楽器を背負って更に階段を上って行くのを目にした。
「この上って、確か屋上?」
不思議に思った晴斗は、その女子が登って行った階段を興味本位に登る。
階段を登り切ると、そこには古びた鉄の扉が半分くらい開かれており、外から眩しいくらいに夕陽が差し込んできていた。
晴斗は恐る恐る扉を開けてみると、そこは真正面から濃いオレンジの夕陽が照らしており、少し風が吹いていた。彼は目を凝らす。
すると、その夕焼けを全身に纏うように先ほどの少女が、屋上の真ん中に楽器を構えて立っていた。
「誰?」
晴斗が入って来たことに気付いた少女は、少し驚いた様子で、右手で髪を押さえながら振り返った。
夕焼けに照らされ、風にたなびく長くて美しい髪に、少しあどけないが憂いを帯びた顔立ちは、大和撫子と言ったところだろうか。学校では見たこともない美少女がフェンダーのジャズ・ベースを構えていた。
「あ、いや・・その・・夕日が綺麗だなって・・。」
晴斗はその少女に見惚れ、自らの鼓動が高鳴っていくのを感じて言葉を詰まらせる。もうわけが分からなくなり、とりあえず、
「あの、えーと・・ごめんなさい!」
と言って、急ぎ登って来た階段を駆け下りた。
自分の取っている行動が、意味不明なのはわかるが、もうどうにもならなかった。
焦る気持ちの中で、晴斗は何だか懐かしい、まるで、初めて翔子を目にした時のような感覚を思い出していた。
★
あくる日、その夕陽を纏った美しい少女のことを忘れられない晴斗は、軽音部の女子にその少女のことを尋ねてみる。
「見たんだよ! ビルの屋上で、見たこともない美少女ベーシストを! うちの制服着てた!」
「美少女ベーシストて言ったら、うちくらいじゃねーか?」
「お前みたいなはねっかえりと一緒にすんな!」
「ああん?」
あからさまに不機嫌な顔をする茉希。その話を聞いて、翔子は不思議そうな顔をする。
「直接会ったんだから、本人に聞けば良かったんじゃないの?」
「いや、そ・それは・・・。」
口ごもりながら、晴斗は何も話しかけられずに、その場から逃げてしまった事の顛末を説明する。
「え? その子がキレイ過ぎて?」
「何も話しかけねーで?」
「・・・走って逃げた?」
三人はお腹を抱えて笑い出す。晴斗は赤面して何も言えない。
「あははは・・・。晴斗、笑わせないでよ!」
「そんなんだから彼女できねーんだよ!」
「・・・ぷっ! 青春。」
晴斗はこの三人に聞いたことを後悔する。とりあえず軽音部の女子は、あの少女に関しては何も知らないようだ。
流石に悪いと思った翔子が、晴斗を元気づけるようにある提案をする。
「そんなに気になるんだったら、またそこに行って彼女に直接会えばいいだけじゃない?」
「だけど、いきなり逃げたりしたから、変な奴だと思われてないかな?」
「まあ、それは否定できないわね。」
「だよな・・・。」
最もな提案であったが、あの時逃げてしまった手前、再び彼女に会う勇気が出せない。
翔子はやれやれといった様子で、晴斗の額を人差し指でトンッと小突いた。
「また会いたいんでしょ? だったら今会わないと、一生後悔するわよ! 後は会ってから考えればいいじゃない!」
「そ、そうだよな、ありがとう翔子!」
みるみる表情が明るくなる晴斗。彼にとって、自由の女神である翔子の励ましは、100万の声援よりも心強かった。
翔子に背中を押される形で、晴斗は再びあのビルの屋上に行くことを決心する。
部活が終わり、晴斗は覚悟を決めて部室を出る。もう彼の顔に迷いの表情はなかった。
そんな晴斗の少し後を、コソコソと追いかけようとする女子二人。茉希と杏奈である。
「茉希、杏奈、付いて行っちゃ駄目だからね。」
「え? こんな面白そうなこと、見に行かねーのかよ?」
「・・・晴斗の晴れ舞台見たい。」
翔子は付いて行こうとする二人の襟を後ろから掴みながら、帰って行く晴斗の姿を目で追う。
「皆大人になるか・・・。頑張れ、晴斗!」
悩む晴斗の背中を押した翔子であったが、変わっていく晴斗を見て、ほんの少し寂しさを感じていた。
小学校時代、男も歯が立たない乱暴者として恐れられていた翔子を、晴斗は普通の女の子として接してくれた数少ない友人の一人である。
晴斗と同様、翔子にとっても彼は、男女の仲にこそならなかったが、それを超えた特別な存在であったのだ。
そんな翔子の後押しを受け、晴斗は昨日の雑居ビルへと駆けていく。
辺りはどんどん薄暗くなっていき、晴斗の行く道を夕焼けが照らし始める。時間も昨日と同じくらいだ。
そこは普段は通らない、人通りの少ない雑居ビルの屋上。階段を駆け登った先の扉に晴斗は手をかける。
「行くぞ、俺!」
小さく深呼吸をする晴斗。彼の手によってその扉は開かれた。
雑居ビルの小さな屋上を隙間なく照らす夕陽の光。正に昨日見た光景と一緒だ。彼女がいないことを除いては。
「はー、そう毎日同じ場所に来るわけないか・・・。」
晴斗は溜息を吐いた。昨日彼女が立っていた屋上の真ん中くらいまで行き、辺りを見回すが、やはり彼女の姿はどこにもない。
「だけど・・ここの夕焼けって綺麗だな。眺めがいいからかな・・・?」
昨日はあの少女に目を奪われていて気付かなかったが、そこから見た夕焼けは、近くの街並みから遠くの山々まで真っ赤に染め上げ、言葉を失うくらい美しかった。
「綺麗でしょ? ここから見る景色。」
「え?」
うっかり景色に見惚れていた晴斗の後ろから声が掛かる。晴斗はビクッとしてゆっくりと振り返った。
「空気が澄んでる時は、富士山だって見えるんだよ。」
「あ・・き・君は・・・?」
晴斗が振り返った先には、風にたなびく長くて美しい髪に、少しあどけないが憂いを帯びた顔立ち、紛れもなく昨日ここで会った少女が、ベースを背負って立っていた。
不意を突かれた晴斗は、頭が真っ白になってしまう。さっきまでの固い決意はどこ吹く風である。
晴斗のしどろもどろな態度とは裏腹に、その少女は自然な様子で晴斗に微笑み掛ける。
「昨日の人ですよね? 私を見るなりいきなり逃げちゃった。」
「ご・ごめん! えーと・・・。」
「確かにこんなところでベース構えて立ってたら、変だよね。」
「そ・そんなことない! 凄くキレイだった!」
テンパる晴斗は、恥も外聞もなく、思っていることをストレートに発してしまう。最早、頭の中は沸騰寸前であった。
その少女は、晴斗の発言に面食らう。
「え? 私が?」
「あ・・・その、綺麗なのは夕陽で、だけどベースを持っている君もつまり、一言で言うと・・・。」
「一言で言うと?」
「と、友達になりましょう!!」
とりあえず、晴斗は名前も知らない少女に勢い余って、「好きです!」なんて言わなくて良かったと心から思う。
唖然とする少女であったが、
「プッ!・・何それ?」
と言って、涙を浮かべながら笑い出した。
「いやー! お、俺もロック好きだし、話も合うかと思って!」
「・・君って面白いんだね。私で良かったら、喜んで!」
笑いを堪えながら返答してくれた少女に、晴斗は歓喜する。
「ほ、本当に!?」
晴斗の心の中に春の爽やかな風が吹いた。そう、今彼の心には、青春という二文字が風に乗って運ばれてきたのだ。
右の拳を握りしめてガッツポーズする晴斗。彼の頭の中では、大好きなU2の『ビューティフル・デイ』が流れていた。
「そういえば、軽音部では知ってる奴いなかったけど、バンドとかやってるの?」
「うん、一応ね。だけど秘密なの。うちは親が厳しくて、ロックやるなんて許してくれないから・・・。」
「だからここで?」
「ここのスタジオにベース置かせて貰ってるんだ。屋上に来るのは、ここの景色を見ていると、何か心が満たされた気がして・・・。」
ただ単に浮かれていた晴斗は、彼女の切実そうな事情を聞いて、少し反省をする。
何とか彼女を元気づける言葉を探す晴斗であったが。
「で、でも凄いよ! 親に隠してまでバンドをやるなんて! 同じロック好きとして尊敬するよ!」
「ううん、確かにロックも好きだけど、私はただ傍にいてあげたい人がいるだけなんだ。」
「傍にいたい人?」
晴斗は言葉を詰まらせる。彼女の憂いを帯びた表情に嫌な予感がチラつく。
少女は晴斗の横を通り過ぎ、屋上の端の手摺の前まで歩いて行った。
「私の知る限り、最もロックという音楽に愛された人。誰よりも強くて優しくて・・・だけど優しすぎて、心に闇を抱えてしまった悲しい人。」
「それって、同じバンドの?」
「そう、彼のおかげで今の私があるの。・・・彼がいなかったら、私おかしくなってたかもしれない。」
「それって、好きってこと? 付き合ってるの?」
晴斗の方を振り返って、彼女は寂しげに笑った。
「そうだね。だけど、彼とはそういう関係にはなれないの。きっともうすぐいなくなっちゃうから・・・。だから最後の時まで一緒にいてあげたいんだ。」
晴斗は彼女のその言葉を聞いて、愕然とする。色々遠回しに含んだことを言ってはいるが、つまりはその彼にぞっこんということなのだ。
肩を落とす晴斗であったが、なんだかすっきりした気もする。
「俺にもそんな人の心当たりがあるよ。ロック馬鹿で、誰よりも強くて勇敢で、破天荒だけど優しくて。付き合ったりとかじゃなくても、ずっと近くにいてやりたいと思う・・。」
「きっと君にとって大事な人なんだよ、その人は。・・なんか、私たちいい友達になれるかもね!」
彼女が初めて見せた、その屈託のない笑顔に晴斗も表情が和らぐ。
「あ、そういえば、名前言ってなかったっけ! 俺、2年の相葉 晴斗。君は?」
「ここで喋ったことは秘密にしてくれる? 噂って怖いから。」
「ああ、ばれちゃまずいんだよね? 誰にも言わないよ!」
夕陽をバックに立つ彼女は、神話に出てくる女神みたいに幻想的であった。そしてその少女は名前を口にする。
「私は新渡戸、新渡戸 実希・・・同じ2年生だよ。」
「新渡戸さん、またここに来れば会えるかな?」
「ええ、また会いましょ!」
日が完全に落ちようとしていた時、晴斗は彼女に別れを告げる。
きっと彼らは、同じ学校のどこかで出会っていたのだろう。だが、今の実希の容貌からは、普段の見るからに優等生な彼女など想像もつかない。
流れで友達にはなったが、それもこの場所限定の奇妙な友人関係であった。携帯くらいは聞いといても良かったかもしれない。
ちょっぴり落ち込みながらも、晴斗はこの出会いに不思議と後悔は感じなかった。
晴斗が去ると、屋上の入口の物陰から、風変わりな少女が不敵な笑みを浮かべて出てくる。
「あ~あ、イケメンと仲良くなれたのに♪ あんなんで良かったの?」
「盗み聞きしてたの? 相変わらず悪趣味だね。」
制服こそ実希と同じだが、ウェーブのかかった長い髪にヘアバンドと、鞄には大きなピースマーク。サマーオブラブの申し子こと、美術部の矢須 汐里だ。
実希は少し不快そうな顔をする。
「折角可愛いのに♪ 眼鏡とおさげなんてやめれば、学校でももっとモテるわよ?」
「君には関係ないでしょ。私がこの格好するのは、ロックをする時だけ。そう決めているの。」
「あなたも彼も、そう凝り固まらないで、好きなことやって、好きな人を好きなだけ愛せばいいのに♪ そうすれば、もっと毎日楽しいよ♪」
「皆、君みたいに人生お花畑ってわけには、いかないんだよ。」
いつものように、飄々とした態度の汐里。実希はどうも彼女が苦手だ。
「もっと彼の近くに行きたくないの? 抱きしめて欲しくないの? それとも、そうなる勇気がないだけかしら?」
「今の私にはこうすることしかできないよ。君もいい加減もう、面白半分で彼に近づくのは、やめたら?」
「あなたにそんな権利あるのかしら? あたしはただ美しいものを見ていたいだけなんだもん♪ 彼が書く曲も、歪な彼自身も全てが最高に美しいわ♪」
実希は表情を曇らせながら、建物の入口へと歩き始め、無言のまま汐里とすれ違う。
振り返って、実希の後ろ姿を眺めた汐里は、そのままそっと呟く。
「そしてあなたもね♪ ・・・エモ。」
次回も宜しくお願いします。