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青空学園青春録

文芸部の少女 提出編

作者: ひみつ

 丸めた原稿用紙を強く握りしめる。

 それから腕を思い切り振り上げ、部屋の隅に置いてあるゴミ箱に向けてこれでもかという勢いで放り投げた。

「…………」

 ものの見事に標的を外したゴミを捨て直すため、のろのろと椅子から立ち上がる。

 溜息をつきながら床に叩きつけられた紙くずを拾い上げ、捨てる前にもう一度開いてみた。

 そこに並んでいる文字列を一通り眺め、あまりの情けなさにもう一度息を吐き出す。

「私、才能無いのかなあ……」

 事の起こりは一月ほど前。所属する文芸部の会誌を文化祭で展示するために、何かひとつ作品を提出しなければならなくなってしまったところから始まる。

 まだ入部して日が浅い私も例外ではなく、こうして頭を抱えている次第である。

 小説→詩→エッセイと色々試してみて最終的にまた小説に戻ってきたものの、調子よく進んだのはプロットまでで執筆に取りかかってからまた壁にぶつかってしまった。

「さて、こんな時はどうしましょうかね」

 締め切りまで残り三日もない。なのにまだ進行状況は規定枚数の半分以下だ。このままでは間違いなく原稿を落としてしまう。

「やっぱり美少女ガンアクションなんて慣れない設定にしたのが間違いだったか……」

 先週の自分を呪ってみたくなるが、この設定を思いついたときはそれこそ文学の神が降臨したような気分になっていたのだ。それに今さらぼやいたところで、また最初からプロットを作り直す余裕など無い。

「よし、気分転換に映画でも見よう。アクションのやつ」

 煮詰まった頭で作業を続けることを諦め、近所のビデオ屋へ出かけるために上着を羽織った。


 結局作品が何とか形になったのは提出期限ギリギリで、部長からもっとゆとりを持ちなさいと軽い説教を喰らってしまった。

 ただ、書き上げた小説に関しては文法上のルールや表現方法などを多少指摘されたものの、内容についての評価はそれなりにしてもらったため、私としては概ね満足のいく結果だっだと言えるだろう。

 だが、帰り際に部長の残した一言がやけに胸の中で暴れていた。

『一作良いものができたら、次は覚悟した方がいいわよ。色々とね』


 …………やっぱり、そうなるのは私だけじゃないんだなあ。

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