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Brothers ~兄貴から見た弟の巻~

作者: 清水蒼

今から俺の弟の話をしようと思う。


弟は俺より三つ下の十三歳で中一だ。たまに生意気で勉強嫌いなのはナンだが、グレることもなく、まあまあ良い子に育っていると思う。兄弟仲も良いほうだ。


そういうわけで、普段はいたって平穏。何の問題もない弟なわけだが、時々、本気で将来が心配になってしまうようなことを言ったりする。今日はその内のひとつをお話ししよう。


それは初夏のある日のこと。


「兄ちゃん見て見て!こんなの拾った。」


弟が突然居間に駆け込んできて、嬉々とした様子でそんなことを言った。


またか、と俺は思った。弟はよく変なモノを拾ってくる。そんなもん拾ってきて大丈夫か!?と思ってしまうようなものばかり。


今までの例で言うと、古本屋のポイントカード(しかもポイントいっぱいまで貯まっているやつだ)とか、天然石のブレスレット(しかも二本)とかだろうか。天然石のブレスレットなんて、けっこう値のはるシロモノだろうに。落としたやつもバカだと思うが、拾う弟も弟だ。


それも、自分の利益になりそうなものばかり拾っている。どんだけ強運なんだか。


そういうわけで、どうせまたとんでもない物を拾ってきたのだろう、と思い、


「ふーん。で、今度は何を拾ったんだ?」


ときくと、


「ゲームソフト!」


という答えが返ってきた。まあ、予想を裏切らない、ちょっと普通じゃない「拾い物」である。


「何てゲームなんだ?」


俺がきくと、弟はう~ん、と唸って二本の指でゲームソフトをつまんで、自分の目線の高さまで持ち上げた。平べったくて小さな四角形の、皆さんお馴染みでぃーえすのゲームソフトである。


「何て読むのかなあ、これ。『ま、じょしん…?』」


「はあ?なんだそれ。ちょっと見せてみ。」


一体どんな変なタイトルのゲームなんだ、と思い、弟からゲームソフトを受け取った俺は、そこに印刷されたタイトルを見て、


一瞬思考が止まった。


どうやら異常なのはゲームではなく弟の頭のほうだったらしい。


ゲームソフトに貼られたラベルには「真.女神○○」と印刷されていた。

「…。」




改めて言うが、弟は中学1年生である。



いやいや、いやいやいや。

「女」も「神」も小学生の低学年で習う漢字だ。普通、読めるだろう!?

まあ、全国レベルで見れば「女神」を「めがみ」と読めない奴はさして珍しくないのかもしれないが、自分の弟がその中に入っていると思うと、やはり情けない。


俺は約1秒間固まった後、弟に盛大な突っ込みを入れ始めた。もう何を言ったのか思い出せないくらい、激しい突っ込みを入れていたと思う。


弟はというと、自分の現状に全く危機感を覚えていないようで、突っ込みまくる俺を見て照れたように笑っている。

これが受け狙いなのか、それとも本気で読めなかったのか、問いただしたかったが、結局怖くて出来なかった。








…とまあ、それだけの話なのだが。俺の弟はいつもこんな感じだ。


こいつは将来、一体どんな大人になるのだろうか。


そんなことを思いつつ、今日も兄貴の心配性は健在だ。

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