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お父さん、明日出掛けよう。
風呂上り、遅い夕食をとっていた父に切り出す。母は現在入浴中だ。
「いいけど、何で?」
父は言うと生姜焼きを一切れ、自らの口に突っ込む。空いた左手で椅子を指さす。まあ座れ、という意味だ。
素直に従う。乱暴に椅子を引くと、乱暴に座り込む。さらに、膝は揃えずに開いた状態で投げ出している。
「プレゼントの買い出し。毎年行ってるじゃん」
父は「んー」と呟く。思い出したらしい。口を開く。何か言い出すのかと思ったが、白米を口に運んだだけだった。
春美は次にどんな行動をすればいいのかわからず、父が咀嚼し終えるのを待った。
「…なんで誕生日って毎年くるんだろうな。」
呟いた後、再び白米を口に運ぶ。春美は返す言葉に困った。この人は何を言っているのだろうか。少し呆れた。
「お父さん、もしかして現実逃避してる?」
暫くの沈黙。父が口内の白米を呑み込む。
「俺はそんなずるい事しないし。ただ疑問を口にしただけだし。別に面倒くさいとか思ってないし。」
父にしては早口だ。確実に焦っている。
もう一度、白米を口に運ぼうとする。しかし、途中でそれを止める。お茶碗に残っていた白米を全て味噌汁に落とした。父の事だ、別々に食べることが面倒くさくなったのだろう。
「車で行くよね?別に電車でもいいけど」
真剣に掻き混ぜている父に問う。父はこちらを向かないまま、頷いた。
「車出すよ。…切符買うの面倒くさい」
そんな理由なのか、と驚いた。