出会いは突然に
ほんの軽はずみだった。
唯がその「まる」に触れたのは。
ただ、目の前に現れたから。ピンク色の透き通ったボディの「まる」は、道路の脇でひっそりと唯の方を見ていた。
実は「まる」には目玉が付いていないようなので、見つめられている、というのは唯の妄想でしかなかったのかもしれない。「まる」はぶよぶよとしていて、表面がキラキラと光っていて、ちょっと素敵で、とても可愛らしかった。
これは、誘われているのかもしれない、と唯は思った。道を歩いていくランドセルを背負った小学生の女の子が、唯の方を見て、珍しいものを見たかのような目をしつつも、何となく関わっては親や先生に怒られるとでも思ったのか、通り過ぎていく。
道路の隅で固まっているピンク色の「まる」と見つめ合っている、女子高生……という構図はとてもシュールで、傍から見ればとても痛い子なんじゃないか、と唯は少しだけ心配した。
「何やってるの? 唯」
背中から掛けられる声。これは、少しボーイッシュな低い声の幼馴染のあずさだ。しかし、あずさの方に目をやると、「まる」は逃げてしまうかもしれない、と思うと、唯は目を離せなかった。
「おはよう、あずさ」
「どこ見てるの? 唯」
いつも変なことしてる唯だけれど、今日の朝はとても変だね、と評するあずさ。
「何もないじゃん」
「いや、「まる」があるだろ。とってもかわいい「まる」が」
「いや、ねーから。何言ってんの?」
あずさがそう言うと、「まる」は微かに身を震わせた。正確に言うと、表面が波打ったように、唯には見えたのだ。その瞬間、○は姿を消した。忽然と。あっ、と唯は思わず声に出してしまう。
「今のなんかエロいね」
あずさは悪戯っぽい笑みを浮かべながら言う。―――で、その遊びなんなの? 邪気眼遊び?