初恋
第2話です。
初恋をする研究員
所長の研究は少しばかり変わっていた。中でもおかしな研究が猫も歩けば棒に当たるのではないかと、一日中公園で猫が棒に当たるかどうかを観察していた。今回もおかしな研究に付き合わされるのだろうと、少し憂鬱な気分でいた。
「君にはこの研究をしてもらうからな。しっかりとやるんだぞ。」
「しかし所長、観察したからといって何か分かることなのですか?」
「まあ、観察してみたまえ。君にしか頼めんのだよ。」
そう言って所長は研究所を去って行った。残された私は何をすればよいか分からなかったが、とりあえずこの彼女のことを観察するほかなかった。
最初のうちはただただ本当に観察するだけだった。観察をし続けても彼女が動くことは一度もなかった。しかしある時、彼女が行動を示した。それは泣くことであった。ずっと泣きっぱなしのときもあれば、一時間くらいで泣き止むときもあった。私はどうして彼女が泣くのかを疑問にもち、調べることにした。
そのように調べているときに今度は彼女が急に揺れ始めた。最初のうちは小刻みに揺れていたが、次第に大きく揺れ始め、そしてまた静かにじっと動かなくなるのであった。
私はこのことも不思議でたまらかったため、所長に彼女はどうしてそうなるのかを尋ねてみた。
「所長、彼女は不思議で仕方がありません。ほとんどいつもじっとしているのに急に泣き始めたり、揺れ始めたりするんです。どうしてなんでしょう。」
「私はそのメカニズムはだいたいは知っているが、まだよく分からんのじゃ。それを君が徹底的に調べてはくれないかのう。」
「なんとかその謎をつきとめてみせます。」
私は彼女のことを調べることに全力を尽くした。朝から晩まで彼女のことを思い続けた。そうしているうちに私は彼女のその神秘的な姿に心惹かれた。今までこんな感情が芽生えることはなく、自分でもどのような状態であるのか分からなかった。
「お前、それは恋しているって言うんだよ。」と彼女持ちの友人が電話で教えてくれた。
「これが恋なのか。」
「当たり前だろ。ずっと彼女のことを思い続けているんだからそうに決まっている。もしかして初恋ってやつか。」
「おそらく・・・・そうなのかもしれない。」
「彼女ってどんな感じなんだ。」
「とにかく謎に包まれているよ。その謎に包まれている神秘的な姿に心打たれたのかもしれないなあ。」と自己分析などをしてみた。
このようにして私は恋というものにどっぷりとはまっていくことになった。しかし、彼女にその気持ちを言う勇気などはなかった。私は恋をすることはないだろうと思っていたから、彼女にどうアピールすればようのかさえ分からない。ただただ観察している研究員として彼女は私のことをとらえられるのだろう。
そんな矢先に、私に思いもよらぬ出来事が起こるのであった。
次でラストです。
最後まで読んでみてください。