※ さぁ?結局みんな異常ってことさ。
彼女の友人視点。
息絶えた生き物の、亡骸を抱きしめて笑う。
その腕の中にあるのは、彼女のペット。
まだかすかに残るぬくもりに、彼女は泣き出すでもなく喪失感を感じるでもなく、ただ嬉しそうに笑う。
死体が好きだといった。人間であれば、特に首のない死体が好きだと。
なんて、なんてなんてなんて美しいんだろう!あぁ、あぁ嗚呼!これ以上に美しいものがあるだろうか?
そんな事を表に出せば、即病院行きだろうか。
精神的な疾患だと、閉じ込められるかもしれない。
それを知っていたから、誰に言うでもなくそのままにしていた。
初めはなんだったんだろう?原因は、両親の死であったか?
まぁ、そんなの思い出そうとしても無駄だ。きっと生まれつきであったんだろう。
あれは中学生の頃だったかな。
公園の端に、忘れ去られたように眠る鳥がいた。死んで、いた。
抱き上げて、笑った。
「なに、してるの?」
見つかった。同い年の女の子に。
さぞ異様な光景だったろう。死体を抱きしめて微笑んでいたんだから。
綺麗な死体でもなかった。どう見ても死んでいる、半分腐れたような死体。
それを抱きながら、頬を染めて微笑んでいたんだから。
「それ、汚いよ。置いた方がいい。」
「汚くない。」
「・・・それ、どうするの」
「さぁ?連れて帰ろうかな。」
我ながら、今思い出すとなんて素直に答えていたんだろうか。
ただ彼女は、気味悪がるでもなく、嫌悪するでもなく、ただそうなんだと言った。
死体が好きなんだねとも、ただ感想を述べるように言った。
それが彼女との、紀市真鳴との、出逢い。
「自分はね、彼女らみたいな異常な人が大好きさ。」
誰に言うでもなく、ただ呟いた。
死体を愛したって、人形を愛したって、人を愛したって、それはただの愛だろう?
どれもただの愛だ。愛・・・良い言葉じゃないか。
愛しているというだけで、全てが綺麗に収められてしまうんだから。
その異常性も、執着も、醜いものも綺麗なものも、すべてが愛って言葉でキレイに収まる。
「ねぇ?喜市ちゃん、自分も貴女を愛しているよ。」
彼が無理心中でも図ろうものなら、自分が一番に駆けつけてあげる。
あぁもちろん、貴女達の死体が出来上がったあとにね。
かわいそうな紀市ちゃん、自分なんかに愛されてさ。