さよならなんて言わないで
「ごめんね、わたしは君が好きじゃないんだ。」
俯いて、肩を震わせる彼女はか細い声で呟いた。
否定の言葉に返ってきたのは、わたしに対する否定の言葉。
「気持ち悪い・・・」
人形に対するその執着が、愛情が、その眼差しが、気持ち悪い。
そういって、彼女はわたしの全てを否定した。
わたしが人形を愛しているのが、それがとても気持ちが悪いって。
ぐるりと部屋を見回した。
机の上、棚の上、ベッドの上、綺麗に並べられた綺麗な球体関節人形。
それらすべてが、わたしの愛するもの。
そして、彼女が気持ち悪いと否定するもの。
一体の人形を持ち上げて、頭を撫でた。
さらりとした髪の感触が気持ちよかった。
「わたしはね、ただ綺麗なだけの人形が好きなの。」
君はこの部屋に至って違和感ないくらいの美少女だけど、人間だから。
いらないでしょう、重いだけの心なんて。
いらないでしょう、見返りを望む愛なんて。
わたしはいいの、いらないの。愛するだけで、何も返してこないこのコ達がいれば。
あなたが気持ちが悪いというのは、愛して、愛し返してくれないただの嫉妬でしょう?
「どうして、」
「ダメだよ。だってわたしはこのコ達がいれば、それでいいもの。」