18話 桜
校庭の桜の蕾が膨らみ始めた。
陽が差し込む彼女の部屋には、日記と少し溶けたキャラメル。
デバミーには赤いリボンが結ばれていた。
『3月1日月曜日』- - - - - - - - - -
最高の誕生日プレゼントをありがとう!
コームは看護師さんに自慢しました☆
これで私もかわいい女子高生です(`・ω・)b
私は浮かれています。
↑
ってみんなが言っています(笑)
P.S チェキを1枚プレゼントします。
好きな方を1枚どうぞ!
↑
念願のP.S.です(笑)
- - - - - - - - - -
100点満点の笑顔でハートサインをする彼女と、ぎこちなさ満載の俺のツーショット。
そんなチェキが2枚並んでいる。
俺はかろうじてハートマークに見えるチェキをもらい、残りの1枚には落書きをして返すことにした。
文化祭でチェキを撮った健が、ドヤ顔で自慢してきたこと。
女子高生にはデコることが必須だと、佐藤さんが教えてくれたと言っていたことを思い出したからだ。
『HAPPY BIRTHDAY TO HINAKO』
謎に練習した筆記体が、人生で初めて役に立った。
黒一色でもオシャレに見えるチェキ。
大満足のそれを日記の横に添えた。
『3月2日火曜日』- - - - - - - - - -
16歳のお誕生日おめでとう"d(。•`ω-)
制服を着ていた伊達は、本物の女子高生に見えました!
チェキもありがとう。
勝手に流行りの落書きをしておきました( ̄^ ̄)ゞ
それを見てさらに浮かれておいてください(・ω・)
ちなみに俺はテストから解放されて浮かれています(笑)
- - - - - - - - - -
日記を書いた俺は、彼女に向かってドヤ顔してしまうほど満足していた。
そんな自分に気がついたら恥ずかしくなり、俺は慌てて荷物をまとめた。
「またな」
『3月3日水曜日』- - - - - - - - - -
これからも女子高生として頑張ります☆ ︶ ☆
チェキめっちゃ可愛くて看護師さんに自慢した( * ॑˘ ॑* )
↑
大切にします♡
私もいつかできるようになりたい٩( 'ω' )ﻭ
テストの結果出たら、何点だったか教えてね!
『3月5日金曜日』- - - - - - - - - -
チェキに映る自分を見ると、恥ずかしくなります(т · т)
テストの結果は来週です。
怖くて夜も眠れません(笑)
桜の花がぽつぽつと咲き始めました。
つまり花粉症の時期到来です(怒)
↑
目と鼻がぐずぐずです(泣)
『3月6日土曜日』- - - - - - - - - -
ハートのポーズを練習しておいてください( ˙˘˙ )ノ
期末テストは1番大切なテストだと聞いたけど、それ本当?
結果が楽しみです!
よくドラマで、病室から桜がなんちゃらとか葉っぱがどうのって言うじゃん?
現実はそんなもの見えませーん!(т · т)
あれはどこから来たんでしょうか?(・ω・)
↑
他の病院は見えるのかな?
- - - - - - - - - -
桜の花を見るために頑張るとか、落ち葉を見て心が落ち込むというのは定番の描写である。
実際桜の花が咲いたのを見て、無意識に彼女に伝えたぐらいだ。
俺は真相を確かめるべく、部屋の窓から外を覗いた。
結果彼女の言う通り、道路脇にあるような植え込みがあるだけで季節はそこになかった。
『3月9日火曜日』- - - - - - - - - -
テストの結果をご報告いたします( ̄^ ̄)ゞ
国語 78点
数学 88点
英語 62点
理科 91点
社会 82点
俺にしては素晴らしい結果です!
目標は5科目平均85点でしたが、結果は80.2点です。
でも前回の5科目平均が74点。
まあいいでしょう( *¯ ³¯*)
ちなみに俺も窓の外を見たけど、あれはつまんないね。
というわけで、次回お楽しみに٩( 'ω' )ﻭ
『3月10日水曜日』- - - - - - - - - -
テストの結果見ました!
英語が微妙だけど、すごくいい感じじゃない?
次は目標の85点を目指してください(´・ω・`)
ちなみに看護師さんは「頑張ったじゃん」と言っていました☆
「お楽しみに」
↑
何が起きるのかな?♡(* ॑꒳ ॑* )ワクワク
- - - - - - - - - -
相変わらずここの看護師さんは、俺で楽しんでいるようだ。
しかし俺ももうすっかり慣れてしまった。
『3月12日金曜日』- - - - - - - - - -
しばらく勉強は遠慮しておきます(笑)
今日は2つプレゼントを持ってきました。
1つは校庭に落ちてた桜の花です!
窓際に並べて置いたので、春を感じてください(r ˙꒳˙ r)
もう1つはホワイトデーを持ってきました。
期待に応えられているかはわかりません(汗)
でも、人気のクッキーだとお店の人が言っていました。
缶も気に入ってもらえたら嬉しいです。
- - - - - - - - - -
放課後、中庭の桜の花をいくつか拾ってきた。
ささやかなお裾分けである。
しかし今日のメインは、緊張のホワイトデーだ。
これはお裾分けじゃなくてお返しだけど。
俺は期待していると言われたことを忘れていない。
いや、正直に言うと健が相談してきて思い出した。
健は佐藤さんといい感じである。
よって誘われた俺と健は何の知識がないので、調べたデパ地下に行ってきた。
人生で初めてのデパ地下は、人が溢れるジャングルだった。
たくさんのお店の中から、健はおしゃれなマカロンを選んだ。
俺も何がいいかわからないからと便乗したかったが、賞味期限が短かったのであきらめた。
そこで、次に見つけた可愛い金平糖にしようとした。
しかし健に「本命?」と聞かれ、お返しするお菓子に意味があると初めて知った。
マカロンは、あなたは特別な存在。
金平糖は、あなたが好き。
彼女が意味を知っているかはわからないが、後ろにいる看護師さんのことも考慮してクッキーを選んだ。
意味は友達でいよう。
彼女によく似合う桜柄の缶に、紅茶味のクッキー。
それを綺麗な袋に入れてもらった。
今まで縁のなかったホワイトデー。
意識すると、寝ている彼女が視界に入るだけで耳が痛いほどに熱くなる。
この日はろくに彼女の顔を見ることができなかった。
翌週、緊張に緊張を重ねた俺を待っていたのは桜の栞だった。
『3月14日土曜日』- - - - - - - - - -
テストよく頑張りました\\٩( 'ω' )و //
ホワイトデーのクッキーもありがとう!
缶がかわいすぎて宝物入れにします♡
↑
期待(していたのは忘れていたけど)以上です(笑)
桜の花もありがとう!
お礼にもらった桜で作った栞をプレゼントします。
↑
おそろい( ̄^ ̄)ゞ
*看護師さんから伝言です。
本当はお花の差し入れはダメだそうです。
特別だよって言われました(笑)
- - - - - - - - - -
デバミーの下には桜柄の缶。日記の横には桜の栞。
俺はとにかく彼女が喜んでくれたことに安堵した。
桜の花を黙って置いて行ったことに関しては、本当に申し訳ない。
確かに面会受付の時に「生花はご遠慮ください」と書いてあった。
素直に謝罪の旨を日記に書き、もらった栞をリュックにしまった。
暖かい春休み。
彼女はコンビニに行けなくなったと愚痴っていた。
俺は進学校ならではの補講があり、彼女と直接話すことができないまま春休みは終わった。




