16話 サプライズ
週明けの火曜日。
ようやく許可の降りた自転車で病院へ向かう。
欲しいものを聞いたはいいけど、いらないと言いそうだなと思いながら訪れた彼女の部屋。
しかし彼女は予想外のプレゼントを欲しがり、それは俺にも嬉しいプレゼントだった。
『2月13日土曜日』- - - - - - - - - -
誕生日お祝いしてくれるの?
ありがとう(*^^*)
実は欲しいプレゼントがあります!
2月27日土曜日の17時30分から18時まで、30分だけ会えたりしないかな?
↑
わがままです(・ω・)
『2月16日火曜日』- - - - - - - - - -
27日会えるよ!時間も了解( ̄^ ̄)ゞ
女の子は誕生日の1日を、お姫様として過ごすらしいよ?
↑
眠り姫のわがままを叶えさせてください( * ॑˘ ॑* )
↑
そして会うことはわがままではありません( ˙˘˙ )ノ
それと会いに行くだけじゃ足りないので、
プレゼントの追加をお願いします(r ˙꒳˙ r)
『2月17日水曜日』- - - - - - - - - -
27日約束ね!
みんなに言っておきます( ̄^ ̄)ゞ
さらにわがまま眠り姫になっていいなら、今回のドレスコードは制服でお願いしたいです( *¯ ³¯*)
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彼女のわがままは、全然わがままじゃない。
制服を着ていくなんてお願いですらない。連絡と言ってもいいだろう。
まあ、なんでかな?とは思ったけど。
『2月19日金曜日』- - - - - - - - - -
制服了解です( ̄^ ̄)ゞ
ちなみに何で制服?
27日を楽しみに、俺はこれからテスト勉強頑張ります(汗)
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書いていて思ったのは、多分俺が何を言っても欲しい物は言わないだろうということ。
ある意味予想通りだ。
だから勝手に用意することにした。
個人的価値観だが、誕生日にプレゼントがないなんて……と思ったからだ。
少なくとも俺はそういう家庭で育った。
しかし、当然俺に乙女心なんてわかるはずがない。
というわけで週明け、被害者仲間の竹田さんを頼ることにした。
「竹田さん、おはよう」
「おはよう。どうしたの?」
「あのさ、同じクラスのよしみで聞くんだけど」
「何?」
「その……、女の子がもらって嬉しいプレゼントって何かな?」
「彼女できたの?」
「いや、彼女じゃないんだけど」
「まだいないんだ?」
「え、竹田さん彼氏できたの?」
「いや、いないけど。あ、じゃあ好きな人ができたとか?」
「いやー、そういうわけでもないんだけど……」
「まあいいや。ちなみになんで私?」
「女の子の友達が、1人もいないもので……」
「んー、女の子が欲しいものか」
「あんまり重くならないような、手軽に買える物がいいんだけど」
「その子メイクする?」
「しないと思う」
「高校生?」
「あー、うん」
「え、まさかこの学校の子?」
「いや、違う……」
「あのさ、時間ある?よければ友達に聞き込みしてあげるよ」
「ほんと?ぜひ売店のジュース奢らせてください」
「いちごオレでよろしく」
頼もしい竹田さんが俺の席に来たのは、翌日火曜日の朝。
「松本くん、お待たせ!このブランド知ってる?」
「知らないな」
「ヘアケアのブランドなんだけどさ、ここのコームが今流行ってるんだよね」
「コーム?」
「髪とかすくしのこと。私含め結構みんな持ってるよ」
「値段は?」
「2000円ぐらい。そんでめっちゃさらさらになる。あ、待ってて」
そう言って彼女はピンクゴールドのくしを見せてくれた。
「高見えするし、見た目も可愛くない?」
「めっちゃいい。マジで助かった。ありがとうございます」
「いちごオレ待ってるから」
「もちろんです」
しかしネットで注文してから、自分の行動に不安がどんどんと募っていく。
それでも、どうしても渡したかった。
『2月20日土曜日』- - - - - - - - - -
制服着てる正都くん、見たことなかったなって。
ブレザーってやつだよね?
かっこよくしてきてね!
↑
看護師さんがそう言ったら、男の子は気合いが入るって言ってた(*'ω'*)
頑張ってね\\٩( 'ω' )و //
それから土曜日会うから、金曜日はお休みでお願いします!
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俺はここの看護師さんに、もっと優しくされたい。
さらっと挨拶する仲なのに、裏では面白がっているのが彼女を通して筒抜けだ。
それはそれは恥ずかしい。
『2月23日火曜日』- - - - - - - - - -
制服はブレザーだよ
1つ伝えさせてほしいのが、制服にかっこいいも何もありません(汗)
だからその言葉は忘れることにします(笑)
↑
とりあえずテストをできる限り頑張ろうかな(+_+)
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プレゼントも用意したし、後はテストを残すのみ。
得意の数学を解いてはできた気になり、英語をやればスペルミス続出で落ち込む。
ぐだぐだな夜を超え、ギリギリ乗り越えた3日間。
正直手応えはないし、自信もない。
それでもテスト終わりの開放感には、何とも言えない喜ばしさがある。
そして待ちに待った土曜日。
夕方制服に着替え、プレゼントをカバンに入れて靴を履く。
「何、出かけるの?」
「ああ、うん」
「制服で?土曜日なのに?」
「まあ」
「やっぱり彼女できた?」
「できてないです」
「制服デートってやつじゃないの?」
「違うってば。夜ご飯、19時過ぎに帰ってきてから食べるから」
「あっそ。まあ楽しんできてね〜」
なぜ大人は高校生の青春を恋愛だと思っているのだろうか。
確かに俺の周りはリア充だが、クラス全体を見ればそうでもないと思う。
俺が知らないだけでカップルも片思いしてるやつも、実はいっぱいいるのかもしれないけど。
思春期のならではの悩みを抱えながら、俺は面会受付を済ませいつも通り彼女の部屋に向かった。
しかしエレベーターホールにいた知らない男性が、俺を目で追ってくるというイレギュラーが起きた。
本当はそこのベンチで時間調整する予定だったが、気まずいのでナースステーションの前で待機。
結果、看護師さんにやたら絡まれた。
――コンコンッ
「はーい、こんにちは」
「こ、こんにちは……」
ドアを開けたのは、俺でも彼女でもない。
「えっと……、伊達のお母さん?」
「やっほー、正都くん!お母さんはちょっといてもらうだけだから」
「……あ、うん」
「ごめんなさいね。陽菜子、正都くんに言ってなかったの?」
「へへっ、サプライズ?」
「もう、この子ったら。あ、どうぞどうぞ中に入って」
「あ、ありがとうございます」
驚いたのはそれだけじゃない。
「それは……何?」
「なんちゃって制服!知らないの?」
「制服でってそういう意味か……」
「うん!いいでしょ?」
「い、いいけどさ」
「そういえば正都くん、お父さんに会った?」
「あ、エレベーターホールの……」
「お父さん何も言ってなかった?」
「うん。あ、挨拶した方が良かった?」
「全然大丈夫!それより写真撮ろ!」
「写真?」
「私の欲しかった誕生日プレゼント。お母さん、これお願い!」
「チェキ?」
「うん!買ってもらったの」
「ごめんなさいね。陽菜子、何も言ってないの?」
「正都くんなら伝わるかなーって」
「いや、さすがに伝わらないって。俺が聞いてたのは制服で来て、だけなんだけど」
「チェキって自撮りできないじゃん?だからお母さんに撮ってもらおうと思って」
「……うん、いや、もう大丈夫」
俺たちは壁の前に立ち、彼女の母親に写真を撮ってもらった。
「はい、ポーズ」
俺は当たり前のようにピースサインをした。
「正都くん、次はこう!」
「えっと……?」
「知らないの?流行りのハートマークだよ?」
「あー、うん」
でもその1枚では終わらず、ハートマークを指定された。
しかも3パターン。
ちなみに俺は1つしか知らなかった。
これも看護師さん情報なのだろうか。
「ギャルピもしよ」
「ギャ、ギャルピ?」
「正都くん何も知らないじゃん」
「知らないよ。何これ、プリクラ?」
「よくわかったね!」
楽しそうな彼女と、ちょっと申し訳なさそうな彼女の母親。
そしてタジタジの俺に、若干のカオスを感じる。
「お母さんありがと!じゃあね!」
「え、いいの?」
「正都くんありがとね。私は18時になったら戻ってくるから、気にしないでゆっくりしていってちょうだい」
「そ、そうですか……。わかりました。なんかすみません」
彼女は笑顔で手を振り、彼女の母親はお辞儀して部屋を出て行った。
俺はため息をつくしかなかった。




