表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/18

13話 クリスマスの招待状



 手がかじかむ金曜日。


 暖かい彼女の部屋に入ると、ホワイトボードの上がにぎやかになっている。

 俺が日記に挟んだ5枚の写真。

 無数のハダカデバネズミたちが、彼女を見守っていた。



『12月2日水曜日』- - - - - - - - - -


 写真ありがとう!


 ギチギチのハダカデバネズミに癒されてます♪

 でもうじゃうじゃいたのはびっくりしました(笑)

 

 ハシビロコウ調べました。

 めちゃくちゃかわいかったです。

 ↑

 人気なのわかる。


 ハダカデバネズミの次に好きになりました。

 ↑

 1位は譲れません!


 もうすぐクリスマスだね!

 正都くんはクリスマス何するの?(*'ω'*)


 - - - - - - - - - -



 12月に入り、病院のエントランスにも大きなクリスマスツリーが飾られていた。

 世間はすっかりクリスマスムードである。


 

『12月4日金曜日』- - - - - - - - - - 


 ハダカデバネズミを愛している伊達さんへ。

 

 リハビリの結果、年明けから体育の許可が降りました。

 この寒い中マラソンの予定です(泣)

 

 そして伝え忘れていましたが、今日まで定期テストでした。

 

 でももうすぐ冬休み٩(๑・ω・๑)و


 ちなみに、クリスマスは暇だから冬休みに会いたいって言ったら迷惑?


 - - - - - - - - - -



 彼女と交換日記を始めて5ヶ月程経った。

 でも、最後に直接話したのは3ヶ月も前。


 正直、会おうと思えばいつでも会える。

 というのも、今の彼女の起床時間が16時半頃。

 急いで日記を書き、会わないように気をつけているまである。

  

 本当は眠る彼女の顔を見ると、直接話したいと思う日もある。

 そんな時にクリスマスの予定なんて聞かれたので、欲が紙にこぼれてしまった。

 


『12月2日水曜日』- - - - - - - - - - 


 おめでとうだけどかわいそう(・ω・)

 頑張って1時間走ってください。


 そしてテストお疲れ様!

 

 クリスマスが暇な高校生っているんだね(+_+)

 ↑

 うそ!私も会いたい(笑)


 ちなみに冬休みっていつから?

 お医者さんに相談してみます( ˙▿˙ )/



『12月4日金曜日』- - - - - - - - - - 


 凍えながら走ります←俺可哀想じゃない?

 

 冬休みは12月26日から1月4日までだよ!


 年末年始で病院と忙しいと思うから無理しないで!

 ↑

 1日会えたらラッキー(*ˆ﹀ˆ*)v


 なんと高校生には宿題がないので、いつでも大丈夫です

 ↑

 本当です(笑)



『12月7日月曜日』- - - - - - - - - - 


 ☆冬休みスペシャルDAY☆

 ↑

 英語を使ってみたかった(笑)


 12月26日の土曜日

 16時45分から18時までの許可が出ました!


 イェーイ\\٩( 'ω' )و //イェーイ


 正都くんはこの日付と時間はどう?

 

 お父さんが、高校生は本当に宿題がないと言っていました。

 ↑

 嘘だと思って聞きました(笑)


 - - - - - - - - - -



 土曜日ではなく月曜日に書かれていた交換日記。

 日曜日に親が来ると言っていたから、聞いてくれたのかもしれない。 

 彼女も会うことを楽しみにしてくれていると思ったら、ちょっと嬉しかった。



『12月8日火曜日』- - - - - - - - - - 


 日付も時間もOKです(*^^*)


 久しぶりなのでお土産を買って行きたいのですが、リクエストはありますか?

 ↑

 面会の受付で飲食禁止って言われてるんだけど、伊達の部屋なら大丈夫な感じ?

 

 許可が出るならわがままをどうぞ!

 ↑

 困らせられるもんなら困らせてください( ̄^ ̄)ゞ



『12月9日水曜日』- - - - - - - - - -


 じゃあ決定ね!


 私の部屋なら食べたり飲んだりしていいって!

 ↑

 ちゃんと聞いたよ"d(。•`ω-)


 せっかくなのでわがままを言います!


 たこ焼きが食べたいです(˙๏˙)

 ↑

 お店ないかな?(笑)



『12月11日金曜日』- - - - - - - - - -


 伊達様へ


 タコパの開催が決定いたしました。

 つきましては、たこ焼きをたくさん買っていくことをお約束いたします。


 お飲み物のご希望はございますか?


 松本


 ↑

 招待状的な?(笑)


 - - - - - - - - - -



「おじゃましまー……す」


 俺は言葉が出ないぐらい驚いた。

 なぜなら、眠る彼女の手元に赤い封筒が置いてあったからだ。


 机の上の日記の横には

『私の持っている封筒を先に読んでね』

 というメモが置いてあった。



『招待状』- - - - - - - - -


 正都くんの日記を読んで、私が正式な招待状を書くことにしました。


 日時 12月26日の16時45分から18時まで

 開催場所 9701号室

 内容 クリスマスのたこ焼きパーティ

 必要なもの たこ焼きとジンジャエール

 ドレスコード 赤い靴下

 

 伊達陽菜子

 

 - - - - - - - - - -


 

 毎度してやられる。

 これは笑わずにいられない。

 

 人生で初めて受け取った招待状。

 ドレスコードが必要な場所に、行ったことなんてない。

 なぜ赤なのかわからないし、そもそもドレスコードがある意味もわからない。


 彼女はいつも想像の斜め上を行く。


 衝撃で忘れかけた机の上の日記を、今日は彼女の隣で読むことにした。



『12月12日土曜日』- - - - - - - - - -

 

 招待状受け取ってくれた?


 ジンジャエールがコンビニにないので、買ってきてください

 ↑

 わがまま娘になりました(笑)


 お父さんにパーティーをすると言ったら、ドレスコードが必要だと教えてもらいました。


 お母さんに相談したら、普通の男の子はカラフルな靴下を持っていないと言っていました。


 だから私の好きな赤色の靴下を履いてきてください( ̄^ ̄)ゞ

 ↑

 ちゃっかりクリスマスカラー☆


 - - - - - - - - - -



 ここの看護師さんは変だと思っていたけど、彼女の両親も面白いことが判明した。

 そして、それを真に受ける彼女の純粋さが眩しすぎる。



『12月15日火曜日』- - - - - - - - - -


 招待状受け取りました!


 血に見えてヒヤッとしたので、次はせめて可愛い封筒でやってください。

 

 そして赤い靴下は持っていません(笑)

 ↑

 普通の高校生どころか、ほとんどの人は持っていないと思います(´・ω・`)


 - - - - - - - - - -



 会えることに浮かれていた俺は、この日すっかり時間を忘れていた。

 気がついたのは、彼女が目を覚ます3分前に看護師さんが入って来たからだ。


 エレベーターに乗り、招待状をリュックにしまい安堵のため息をつく。

 彼女と会うのは難しいが、会わないことも難しい。


 だからパーティーまでの2週間、楽しみで仕方なかった。




 クリスマス。



 終業式が終わった後にショッピングモールへ行き、赤い靴下を買った。


 学校から解放され家に帰ると、母親がクリスマス恒例ビーフシチューを煮込んでいた。



「正都、このあと暇でしょ?」

「何で?」

「ケーキ受け取りに行ってきてくれない?」

「それ朝言ってよ。帰りに取ってきたのに」



 しぶしぶ歩いて駅に向かえば、街はクリスマスムード一色である。

 ケーキ屋さんの前には、クリスマスケーキ受け取りの列ができていた。

 俺はチョコレートケーキを受け取り、まっすぐ家に帰った。



「正都、これは父さんからのクリスマスプレゼント」

「こっちはお母さんから」



 この歳になっても、両親は誕生日とクリスマスに必ずプレゼントをくれる。


 父親からは図書カードと、腕時計。

 母親からは新しいリュックをもらった。



「そろそろ時計必要だろ?試験の時とか」

「うん、ありがとう」

「リュックもそろそろ新しい方がいいと思って」

「ありがとう」

 


 リュックは所々擦り切れて、そろそろ限界だった。



「ありがとう。あのさ、これは俺から」

 


 俺はバイトをしていないのでお小遣い制。

 買えるプレゼントはたいしたものじゃない。



「真っ赤な靴下か!お父さんおしゃれに着こなせるかな」

「お母さんがコーディネートしてあげるから大丈夫よ」


 

 俺は今日、赤い靴下を3つ買った。



「面白いかなって」

「ああ、面白い。正都の発想とは思えないな」


 

 ハダカデバネズミの時もそうだったけど、変わっているものも見てるうちに魅力を感じてしまう。

 彼女のせいで変化した価値観を、両親にお裾分けした。

 

 ケーキを食べた俺は自分の部屋に戻り、机の上のハダカデバネズミを手に取った。

 俺はそいつに、父さんからもらったラッピングの赤いリボンを結んでやった。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ