13話 クリスマスの招待状
手がかじかむ金曜日。
暖かい彼女の部屋に入ると、ホワイトボードの上がにぎやかになっている。
俺が日記に挟んだ5枚の写真。
無数のハダカデバネズミたちが、彼女を見守っていた。
『12月2日水曜日』- - - - - - - - - -
写真ありがとう!
ギチギチのハダカデバネズミに癒されてます♪
でもうじゃうじゃいたのはびっくりしました(笑)
ハシビロコウ調べました。
めちゃくちゃかわいかったです。
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人気なのわかる。
ハダカデバネズミの次に好きになりました。
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1位は譲れません!
もうすぐクリスマスだね!
正都くんはクリスマス何するの?(*'ω'*)
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12月に入り、病院のエントランスにも大きなクリスマスツリーが飾られていた。
世間はすっかりクリスマスムードである。
『12月4日金曜日』- - - - - - - - - -
ハダカデバネズミを愛している伊達さんへ。
リハビリの結果、年明けから体育の許可が降りました。
この寒い中マラソンの予定です(泣)
そして伝え忘れていましたが、今日まで定期テストでした。
でももうすぐ冬休み٩(๑・ω・๑)و
ちなみに、クリスマスは暇だから冬休みに会いたいって言ったら迷惑?
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彼女と交換日記を始めて5ヶ月程経った。
でも、最後に直接話したのは3ヶ月も前。
正直、会おうと思えばいつでも会える。
というのも、今の彼女の起床時間が16時半頃。
急いで日記を書き、会わないように気をつけているまである。
本当は眠る彼女の顔を見ると、直接話したいと思う日もある。
そんな時にクリスマスの予定なんて聞かれたので、欲が紙にこぼれてしまった。
『12月2日水曜日』- - - - - - - - - -
おめでとうだけどかわいそう(・ω・)
頑張って1時間走ってください。
そしてテストお疲れ様!
クリスマスが暇な高校生っているんだね(+_+)
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うそ!私も会いたい(笑)
ちなみに冬休みっていつから?
お医者さんに相談してみます( ˙▿˙ )/
『12月4日金曜日』- - - - - - - - - -
凍えながら走ります←俺可哀想じゃない?
冬休みは12月26日から1月4日までだよ!
年末年始で病院と忙しいと思うから無理しないで!
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1日会えたらラッキー(*ˆ﹀ˆ*)v
なんと高校生には宿題がないので、いつでも大丈夫です
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本当です(笑)
『12月7日月曜日』- - - - - - - - - -
☆冬休みスペシャルDAY☆
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英語を使ってみたかった(笑)
12月26日の土曜日
16時45分から18時までの許可が出ました!
イェーイ\\٩( 'ω' )و //イェーイ
正都くんはこの日付と時間はどう?
お父さんが、高校生は本当に宿題がないと言っていました。
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嘘だと思って聞きました(笑)
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土曜日ではなく月曜日に書かれていた交換日記。
日曜日に親が来ると言っていたから、聞いてくれたのかもしれない。
彼女も会うことを楽しみにしてくれていると思ったら、ちょっと嬉しかった。
『12月8日火曜日』- - - - - - - - - -
日付も時間もOKです(*^^*)
久しぶりなのでお土産を買って行きたいのですが、リクエストはありますか?
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面会の受付で飲食禁止って言われてるんだけど、伊達の部屋なら大丈夫な感じ?
許可が出るならわがままをどうぞ!
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困らせられるもんなら困らせてください( ̄^ ̄)ゞ
『12月9日水曜日』- - - - - - - - - -
じゃあ決定ね!
私の部屋なら食べたり飲んだりしていいって!
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ちゃんと聞いたよ"d(。•`ω-)
せっかくなのでわがままを言います!
たこ焼きが食べたいです(˙๏˙)
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お店ないかな?(笑)
『12月11日金曜日』- - - - - - - - - -
伊達様へ
タコパの開催が決定いたしました。
つきましては、たこ焼きをたくさん買っていくことをお約束いたします。
お飲み物のご希望はございますか?
松本
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招待状的な?(笑)
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「おじゃましまー……す」
俺は言葉が出ないぐらい驚いた。
なぜなら、眠る彼女の手元に赤い封筒が置いてあったからだ。
机の上の日記の横には
『私の持っている封筒を先に読んでね』
というメモが置いてあった。
『招待状』- - - - - - - - -
正都くんの日記を読んで、私が正式な招待状を書くことにしました。
日時 12月26日の16時45分から18時まで
開催場所 9701号室
内容 クリスマスのたこ焼きパーティ
必要なもの たこ焼きとジンジャエール
ドレスコード 赤い靴下
伊達陽菜子
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毎度してやられる。
これは笑わずにいられない。
人生で初めて受け取った招待状。
ドレスコードが必要な場所に、行ったことなんてない。
なぜ赤なのかわからないし、そもそもドレスコードがある意味もわからない。
彼女はいつも想像の斜め上を行く。
衝撃で忘れかけた机の上の日記を、今日は彼女の隣で読むことにした。
『12月12日土曜日』- - - - - - - - - -
招待状受け取ってくれた?
ジンジャエールがコンビニにないので、買ってきてください
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わがまま娘になりました(笑)
お父さんにパーティーをすると言ったら、ドレスコードが必要だと教えてもらいました。
お母さんに相談したら、普通の男の子はカラフルな靴下を持っていないと言っていました。
だから私の好きな赤色の靴下を履いてきてください( ̄^ ̄)ゞ
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ちゃっかりクリスマスカラー☆
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ここの看護師さんは変だと思っていたけど、彼女の両親も面白いことが判明した。
そして、それを真に受ける彼女の純粋さが眩しすぎる。
『12月15日火曜日』- - - - - - - - - -
招待状受け取りました!
血に見えてヒヤッとしたので、次はせめて可愛い封筒でやってください。
そして赤い靴下は持っていません(笑)
↑
普通の高校生どころか、ほとんどの人は持っていないと思います(´・ω・`)
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会えることに浮かれていた俺は、この日すっかり時間を忘れていた。
気がついたのは、彼女が目を覚ます3分前に看護師さんが入って来たからだ。
エレベーターに乗り、招待状をリュックにしまい安堵のため息をつく。
彼女と会うのは難しいが、会わないことも難しい。
だからパーティーまでの2週間、楽しみで仕方なかった。
クリスマス。
終業式が終わった後にショッピングモールへ行き、赤い靴下を買った。
学校から解放され家に帰ると、母親がクリスマス恒例ビーフシチューを煮込んでいた。
「正都、このあと暇でしょ?」
「何で?」
「ケーキ受け取りに行ってきてくれない?」
「それ朝言ってよ。帰りに取ってきたのに」
しぶしぶ歩いて駅に向かえば、街はクリスマスムード一色である。
ケーキ屋さんの前には、クリスマスケーキ受け取りの列ができていた。
俺はチョコレートケーキを受け取り、まっすぐ家に帰った。
「正都、これは父さんからのクリスマスプレゼント」
「こっちはお母さんから」
この歳になっても、両親は誕生日とクリスマスに必ずプレゼントをくれる。
父親からは図書カードと、腕時計。
母親からは新しいリュックをもらった。
「そろそろ時計必要だろ?試験の時とか」
「うん、ありがとう」
「リュックもそろそろ新しい方がいいと思って」
「ありがとう」
リュックは所々擦り切れて、そろそろ限界だった。
「ありがとう。あのさ、これは俺から」
俺はバイトをしていないのでお小遣い制。
買えるプレゼントはたいしたものじゃない。
「真っ赤な靴下か!お父さんおしゃれに着こなせるかな」
「お母さんがコーディネートしてあげるから大丈夫よ」
俺は今日、赤い靴下を3つ買った。
「面白いかなって」
「ああ、面白い。正都の発想とは思えないな」
ハダカデバネズミの時もそうだったけど、変わっているものも見てるうちに魅力を感じてしまう。
彼女のせいで変化した価値観を、両親にお裾分けした。
ケーキを食べた俺は自分の部屋に戻り、机の上のハダカデバネズミを手に取った。
俺はそいつに、父さんからもらったラッピングの赤いリボンを結んでやった。




