9.優待投資をするかどうか【株主優待の魅力】
元プロ棋士の桐谷広人さんが株主優待のスペシャリストであるという情報は、株式投資を始める前から私の耳にも届いていた。「株=デイトレード」というイメージだけが先行していた私にとって、桐谷さんもそうやってデイトレードをしながら優待ももらっているのだと勝手に思い込んでいたけれど、どうやらそうではないらしい。
彼の著書を拝読すると、昔の桐谷さんはデイトレーダーだったようだ。しかしそのやり方で失敗して、たどり着いた彼なりの答えが「株主優待に力を入れている企業に投資をすること」とのこと。
桐谷さんいわく、株主優待に力を入れている企業の株価は安定しやすいという。優待を設定できる十分な資産を持っており、優待を廃止しない限り優待目的の投資家が離れていきづらいため、株価が大きく上下しにくいのだとか。
一方で、そういった企業は自社の成長に対する投資はそこそこで、株価が大きく上昇する見込みは薄い。狙うのはキャピタルゲインではなく、安定した株価と(出していれば)配当金、そして株主優待だ。キャピタルゲインは二の次で、景気よく値上がりするタイミングがあればゲットできる。そんな投資スタンスを「優待投資」と呼ぶのだそう。
この「優待投資」という手法に賛否があることは言うまでもない。お金儲けが第一目的の人にとっては、優待株のようなキャピタルゲインに期待できない株には魅力を感じず、はたまた安定した資産運用を目的として株式投資をしている人にとってみると、投資をしながら嬉しいオマケがゲットできるとなるとお得感が高い。賛否というより、期待するものの違いである。
それから、株主優待と一口にいっても、たとえば五百万円分の株を買ってようやく千円分のクオカードがもらえるような設定の企業だと、投資資金が足りず優待を受けられない、なんてことはザラに起きる。一方で、四十万円分の株を買えば千五百円分の自社商品がもらえるような設定の企業もあり、株主優待を目的とする株の取引というのは、それが本来の目的であればいいのだが、たとえば株式投資の本来の目的が「老後資金の形成」という人にとっては少し立ち止まって考えた方がいい手法だろう。
優待投資について本を読んだりYouTubeの動画を見てみたりして私が学んだことは、優待を実施している企業がとても魅力的で成長見込みがあり、以前から株を買いたいと思っていたところであるなら積極的に買うべきだということ。株価上昇の恩恵を受けつつ、オマケで優待ももらえるのならお買い得だ。
一方で、魅力を感じるのが優待だけであるならば、買うのは待ったほうがいいということも理解した。いくら優待内容がよくても、資産を減らしてしまっては元も子もないからだ。
以上のことを総合して結論づけると、まずは企業の成長という観点から投資先の企業を決定することが最優先。そうして選んだ企業が優待を設定していればラッキーで、優待の権利を獲得できる最低株数を買えばいい、とこういう話になる。素敵な優待がもらえるから株を買う、というのもおそらく間違いではないけれど、私は遠慮しておこうと思う。資産形成という主目的を見失いかねないから。
そもそも、株主優待は企業側が設定も廃止も自由に決められるところがちょっと怖い。優待目的で買った企業が優待を廃止しようものなら、株価が下落することは目に見えている。先の桐谷さんは「だからこそ優待に力を入れている企業を選ぶべき」(優待を廃止する可能性が低いため)とおっしゃるけれど、私にはあまりピンとこない話だった。
とはいえ、いち娯楽としてはとても楽しい制度だと思う。だって、株を買うだけでクオカードやら食事券やらテーマパークの入場券やらがもらえるんだもん。タダより安いものはないじゃない。まぁ、欲しけりゃ自分の金で買えって話ではあるのだけれども。株買うほうが絶対高いからね。
なんて話をしながらも、実は株主優待に魅力を感じて買おうと思っている株がないわけではない。もちろん企業の決算状況や財務健全性などはチェックするけれど、どうせなら優待が欲しいよなぁと思うくらいはしてもいいはず。
皆様は優待期待で株を買った経験がおありだろうか。実際のところ、手応えはどんな感じだろうか。
私にはまだまだ入金力がないので本格的に個別株投資を始めるのはもう少し先になりそうだけれど、ふたを開けたら優待投資をめいっぱい楽しんでいる自分がいる、なんて未来を想像するのもおもしろい。健全な資産形成をしながらオマケがたくさんもらえる日々を過ごせたら、きっと楽しいだろうから。
そう、なにごとも楽しみながらでないと続かないのだ。
優待がもらえることを楽しいと思えるか、資産が増えることを楽しいと思えるか。その答えは人それぞれでかまわない。
株式優待制度の恩恵を受けることが投資を長く続けることのきっかけになるのなら、それはそれでアリだろう。投資は長く続けてナンボ。楽しんだモン勝ちの世界なのだから。




